見出し画像

愛おしさと写すこと

写真を始めたきっかけは、人でも景色でも何でも良いから写真を撮りたかったから。というのは建前で、何も持っていない自分自身をどうにか表現したいと思ったからというのが本音でした。

当時は、カメラを持っている、または写真を撮っている自分自身に酔いしれていました。そこには、写すものへの気持ちはほんの少しも無かったかもしれません。
ただ、自分が撮った写真をみんなに見てほしいという一心だったように思います。当時も薄々思っていたことですが、そんな中途半端な気持ちで撮った自分の写真に自分自身が感動することはありませんでした。だから、写真を褒められるとどこか後ろめたい気持ちがありました。

それから何年か経ち、「写すこと」の意味が自分の中で変わってきたように感じます。それは、身の周りのほとんどが手に入らないものであると気づいたからかもしれません。

帰り道で見つけた陽だまりも、旅先で見た景色も、あの人とすごした時間も、あの人の笑顔も、またどこかで見たり触れたりできると思っていたものが、実は一番遠くにあって手に入らない。

そんな一瞬一瞬は愛おしいはずなのに、大切なはずなのに、すぐに消えていつかは忘れてしまいます。

手に入らないことも叶わないことも分かっているけれど、そこに向かって手をのばすことは諦めたくない。それこそが、僕にとっての「写すこと」なのかもしれません。

自己表現のために始めた写真も、いつしか、愛おしいものを写したいという想いに変わっていました。

僕がすべてを愛おしいと思えるようになるには、まだまだ時間がかかりそうですが、だからこそ前を向いて生きていきたい。

そして、そんな僕の写真を好きだと伝えてくれるあなたのことを大切にしたいと、切に思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?