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観劇感想文 1/26 『いざ、生徒総会』

というわけで連投です。
こちらもcorich用に書いた記事だけど、前記事の通り、こちらで掲載することにしました。誠にもって申し訳ない…

以下、感想文でございます。


国府台ダブルスの一翼。
昼に「卒業式、実行」を観劇した後、同日の夜回での観劇。

この公演は完全座席指定なので、昼夜ともに同じ位置を選択。
最前列とは言え、端の方だったので、結論から言うと、色々と首が痛くなる
シーンもあったけれど、迫力は抜群。

「卒業式、実行」を拝見した後だったので、アガリスクさん、ひいては
冨坂さんの脚本に対しては絶対的な信頼があったので、観劇前から結構リラックス。
座席も同じだし、そういう意味では、ちょっと大げさに言えばホーム感が
あって良かった。
初めて行く劇場、劇団さんの演劇って結構緊張してしまうけれど、開演前からこうリラックスして待ってられるって、良いなと思いながら開演を待つ。

本作は制服の自由化を軸に構成される5本の短編。
とは言え、最後には一本に繋がっていくので、全5話のシリーズと言った方が正確か。

国府台ダブルスというだけあって、本作も国府台高校が舞台。
私も千葉県民なので国府台高校というのがあることは知っていたが、校風については全く知らなかったので「卒業式、実行」も含めたうえで、ずいぶん、先進的な高校があるんだなと驚いた。
私が高校受験を控えた身ならば、間違いなく、国府台高校への進学を視野に入れるけど、まさかの公立校だったので、学区が全然違いました。受験できません。
と思ったけど、よくよく見たら国府台は県立だった。
県立だったら学区関係ないのか。じゃあ受験できたんだな。
まぁ、どっちみち年齢的に受験できないけど。

「卒業式、実行」が生徒と学校側の対立を描いた作品であるのに対して、本作は、生徒同士、というか、生徒組織間での対立というべきか、何にせよ、そんな感じ(違うけど、うまく説明できない)。

実はさっきから、感想を書いては消して、書いては消しての繰り返しで、実はここから先がちっとも進まない。

それはなぜかというと、あまりにも見どころが多すぎたから。
短編集だからというのもあるのだけれど、非常に感想が書きづらい。
「卒業式、実行」とはまた違った味で、紛れもない名作には違いない。

というわけで、全部は書ききれません。
言語化しやすいところだけをつまんで書かせて頂きます。すいません。

登場人物の9割以上を高校生が占める本作。
4話が象徴的だけれど、対立陣営に対しての見解や、嫉妬はなかなかに生々しい。
けれど、それをあんまり陰湿な形に持っていかないところに、書き手の優しさを感じる。

とは言え、扱う内容はなかなかにデリケート。
「卒業式、実行」も政治的にちょっと心配しちゃうようなシーンもあって、別の意味でドキドキしたけれど、トランスジェンダーの話が混じってくるとは思っていなかったので、ちょっと驚いた。
演じられた池谷さんも、もとがイケメンだから女装しても普通に似合うんだよなー。
個人的には、本作の中でもキーになる人物だと思っていて、素敵な役者さんだなと思った。

話の軸になる制服の自由化は、池内会長が言う通り「誰も困らない」問題だと、正直、私も思った。
けれど、池谷のことも含めて、色んな立場での「困る」は数多くある。

そういう意味で非常に印象的だったのが、岡村の「困る」理由。
HPの写真云々という理由は、会場でのヤジの通り「個人的」なものであって、それで反対しちゃうんだって思いながら私も聴いていた。
けれど、その後の彼女の、
「武器それしかないから!それでこだわってるのの何が悪いの?」
という言葉にはハッとなってしまった。

それでも納得できない空気の中、池谷が被せてくるわけだけど、彼のこの時の主張がまた良かった。
この時の岡村、池谷の主張は、思い出すだけでも泣けてくる。
魂の叫びというかね、率直な言葉で紡がれるそれはものすごく響いた。

恐らく、壇上に立つ池内会長の中にも、それは届いていた気がする。
彼女の「誰も困らない」という考えを浅薄とは思わない。
けれど、そんなに単純なものでもないんだという気づきはあったのではないか。

彼女の中にも動揺はあったと思う。
けれど、604票という思いを背負って壇上にある以上、そこから退くわけにも当然、いかなかったろう。
この時の壇上の彼女の思いを察すると、何とも息苦しいものがある。

とにかく、この生徒総会のシーンは、何から何まで素晴らしかった。
第5話、すなわち最終話のタイトルは「いざ、生徒総会」。
1話から4話までを踏まえて5話で昇華するその組み立てが芸術的なまでに美しい。
5話の解任請求のシーンを、1話の前にチラ見せするあのやり方も巧い。
映画とかではないからね。ちゃんとそのシーンだけのために、舞台美術も
セットしなおさないといけないから大変だったと思うけれど、それも含めてすごいなと思って拝見していた。

5話はとにかく演出面が光る。
投票後、各人物が、劇場内のあちこちに散らばり、各方面から声を出させることで、観客全体を国府台高校生にしてしまったのは痺れに痺れた。
私は先述の通り、最前列なので、そういう状態になっていることは、ちょっと後から気が付いたのだけれど、あの没入感は半端ない。
あっち観たりこっち観たりで、首は疲れたけど。
ちなみに私の席の近くでは岡村さんがおられたので、気が付いた時は、猛烈にびっくりしたんだけど。

池内会長が退けないのと同じように、大和田監査もまた退けない立場。
温厚で押しの弱い部分もあると思われる彼女が、あそこまで強硬に取り下げをしなかった背景は3話でしっかりと描かれている。
3話での葛藤を踏まえて、監査委員長として、自分はどうあるべきか?
自分はどういう監査委員長でありたいのか?
そこに対しての彼女なりの答を持って席には着いたものの、池内会長が指摘するように、過半数を既に占めている結果を、自分一人の意見で覆す事の重さは覚悟はしていたにせよ、彼女にとって相当なプレッシャーではあったはず。
毅然としつつも、その重みに耐えるかのような苦悩を抱えた姿がとても印象的だったし、大和田さんが見事に演じられたように思う。

ここで高坂、大滝という監査とは一悶着あった立場の人間が、大和田監査の援護に回る展開がまた熱い。
彼女たちの援護は、生徒大和田ではなく、監査としての大和田にとって、報われるものを感じられたのではなかったろうか。

一転して劣勢になる池内会長。
どこか超然としていた彼女が、生の感情を剥き出しにするシーンも良かった。
彼女の気持ちも正直分からないではない。
同情したくなる部分もある。

決着の見えない審議に古谷副会長は池内会長への解任請求をちらつかせる。
文字にしてしまうと、泥仕合なのだけれど、舞台上で繰り広げられるそれは、もっと痛くて、美しくて、生きているものだった。

池内会長にせよ、大和田監査にせよ、何も好き好んで互いを攻めているわけではない。
その苦しみを感じたからこそ、古谷副会長は解任請求という抜きたくもない刀を抜いたのだと思う。
彼自身が言ったように副会長としてではなく、生徒古谷としての行動。
この一連のシーンを演じられた古谷さんはもう本当に素晴らしかった。
だめだ、書いてるだけで泣ける。

結局、自由化は否決され、大和田監査は解任されることなく、池内会長は解任される。

そこだけ見れば池内の惨敗である。
けれど、古谷会長代行は、結果として、池内を救ったように思える。

池内の中に無念の思いがなかったとは思わない。
けれど、生徒会長というある種の偶像である事から解放され、一生徒として暮らすことになった池内の中で、自分でも知らなかった身軽な自分の姿に気がついた様に思える。

会長時代、絶対に使えなかった裁断機が、一生徒になってからは、すんなり使えるようになったシーン。
誰もいない生徒会室で
「いろよ」
と呟く池内の姿に泣いてしまった。

この日の国府台ダブルスは両公演共にダブルコール。
最前列でその場面に立ち会えたことが本当に幸せ。
あ、最前列と言えば、大和田監査の決済印が押された大滝の手作りポスターを本編中に頂きました。
大事にさせて頂きます。

ダブルスを拝見して、アガリスクさんの作品は観劇初心者には自信を持ってオススメできる事が良く分かった。

それは万人受けする無難な作品と言うことではなくて、エンターテイメントとして非常に質の高いものを提供して頂けると言うこと。

素晴らしい脚本、演出と、そこに魂を吹き込む役者陣。
全てが高いレベルにあるからこその、この高揚感なのだと思う。

書きたいことの1/5も伝えられてないけれど、ホントに素晴らしかったし、楽しかったです。

DVD予約して帰ってきたけどDVDになるのはこの日の回らしい!
めちゃくちゃ嬉しい!!

劇団関係者の皆様、役者の皆様。
素晴らしい舞台を本当にありがとうございました。
国府台高校、万歳!

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