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ありがとう、オリンパス

昼休みにネットのニュースでその記事を見て絶句した。

ちょいちょいそんな噂は上がり、その度にその噂は否定されてきた。
私はボディはパナソニック、レンズはオリンパスというずぶずぶのマイクロフォーサーズ(以下MFT)ユーザー。
フルサイズ全盛の今、MFT陣営に関する噂というのは「ついに撤退するんじゃないか」という恐怖心を持って、常に接しているのだけれど、今年になって新たに賛同する企業が現れたり、オリンパスが新機種を発売したりで、あぁ、オリンパスもMFTもまだまだ大丈夫だと思っていた今日この頃だったので、このニュースは衝撃だった。

私が写真にハマり始めたのが2007年。
キヤノンのコンデジから始まり、2008年には早々に一眼デビュー。
その時に最初に手にした一眼レフがフォーサーズ規格のE-510だった。
当時はカメラの規格や性能のことなどはよく分からなかったけれど、分からないなりに色々と調べて、当時圧倒的なシェアを誇っていたキヤノン、ニコンを選ばずに、敢えてオリンパスを選んだのは、値段に手頃感があったのもそうだけれど、フォーサーズという独自の規格を選択するオリンパスという会社の、独自性というか反骨心というか、うまく表現できないけれど、そういう気概を感じたからでもあった。

初めて手にした一眼レフ。
ずっしりと重いその手ごたえ(当時の一眼レフとしてはかなり軽量だったはずだけど)。
ファインダーをのぞき、ピントを合わせて、シャッターを切る。
コンデジでは得られなかったその体験が、私を写真の世界にどっぷりと浸からせた。

田舎暮らしの私にとっては当時の被写体は空と空と空。
とにかく空ばかり撮っていた。
「オリンパスブルー」という言葉を知ったのが、E-510を買ってからか、買う前なのかまでは覚えていないけれど、青の発色が美しいオリンパスのカメラで空を撮っているんだということは、私にとってちょっと誇らしくもあった。

写真を撮るようになって、それなりの時間が経つので、思い出深い撮影というのはもちろんいくつかあるのだけれど、その時のことを鮮明に、日付まではっきりと覚えているのが2008年の8月6日。

この日はとにかく空も雲も何もかもが美しい日で、文字通り、朝から晩まで自転車であちこちを走り回り、写真を撮りまくった。

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真夏の暑い日で、多分、相当に体力を消耗したはずなんだけど、そんな記憶は一切なく、とにかく、楽しかったことしか覚えていない。

写真を見ただけで、
「お、キミ、この写真、オリンパスで撮ったね?」
と言えるほど、オリンパスの青を理解しているわけではないけれど、とにかくこの日の空の青は美しく、それをしっかりと残せたことが本当に嬉しかった。

ただ、自分が恵まれていたと思えるのは、得てしてそれを失った時。
ありがちな話だけれど、写真を撮っているうちに、良い写真は性能の良い機材でないと撮れないと勘違いを始めてしまう。

長い長い機材遍歴がここから始まる。
特段の不満があったわけでもないのに、オリンパスのカメラを手放した私はニコン、ペンタックスのAPS-Cを経て、ほんの数年前にようやく、本当にようやくパナソニック、オリンパスのMFTへと回帰する。

オリンパスからニコンに変えた時、とにかく愕然としたのは空の色の違い。
同じ日に撮り比べているわけではないから、感覚的なものにはなってしまうけれど、オリンパスの青と比べてしまうと、どうしてもくすんだ印象になってしまう。
その代わり、赤系の発色はすごくきれいではあったんだけれど、あいにく、当時の私の被写体は相変わらず空がメインだったので、かなり物足りなく感じていた記憶はある。

メーカーによって絵作りの傾向が異なるということを、色んな意味で知ったのはこの時である。後から振り返れば、ニコンの絵作りというのは見たままをそのまま切り取るナチュラルさがあって、今使っていれば、また違った感想があると思うけれど、きれいな青を求めていた当時の私にはマッチしていなかった。

長い漂流を経て、私が一番必要としているのは小型軽量であり、そして青がキレイに出るカメラであることに気が付いた。
プリントするわけでも等倍鑑賞するわけでもない私にベストマッチなカメラは何だろうかと見渡した時に目に入ったのはMFTのオリンパスとパナソニックだった。

十分に小型軽量と言われるペンタックスのAPS-Cでさえ、私にはしんどかったので、MFTは衝撃だった。
飛行機を撮りに換算600㎜の望遠レンズを持ち出しても、カバン一つで事足りるし、標準単焦点1本で遊びに行くなら、コンデジ感覚は言い過ぎだとしても、さほど荷物にもならない。

APS-C機を使っていた時は、写真を撮りたいなと思っていても、カメラを持ち出すのが面倒でやめてしまったことが多々あるのだけれど、MFTに変えてからは写真を撮りに行く回数がぐっと多くなった。

話すと長くなるから理由は割愛するけれど、一時期ハマりにハマったポートレートもMFTにしていなければ、あそこまでハマらなかったような気がする。

そしてデザイン。
カメラのデザインってメーカー毎にそれなりに特徴があって、形を見れば何となくメーカーが分かったりするけども、オリンパスのデザインは本当に大好き。
今回、タイトルに持ってきた写真はE-520とZUIKO DIGITAL ED 12-60mmの組み合わせだけど、レンズ先端の青いリングが素敵でね。それだけで結構テンションが上がったし、今見ても、やっぱり良いなって思う。
このレンズ、本当に良かったんだよな・・・大好き。

オリンパス、そしてMFTという存在は私に写真の面白さ、楽しさを教えてくれた言わば恩人ともいえる存在。
そのオリンパスが退場してしまうというのは、何とも込み上げてくるものがあり、そういうものを形にしたくて、この記事を書き始めたものの結局、それを全く伝えきれていなくて、色々悲しい。

この先、オリンパスという会社がどうなってしまうのかは正直よく分からない。ブランド名だけは残って、全然別物のカメラになってしまうのかもしれないし、MFTにしたってこれをきっかけになくなってしまうのかもしれない。

そう考えると暗い気持ちになってしまうけれど、オリンパスという会社が世に送り出してくれた名機、名玉が無くなってしまうわけじゃない。
オリンパスの遺伝子を、これからも機材を通して、写真に残していきたい。

ありがとう、オリンパス。

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