もう「内輪」の論理は通用しなくなっていく-大きなお世話かもしれないけど、ポケモンGOのPvPコミュニティについてファンとして心配していること

1.GOバトルリーグ実装までの1年あまり、PvP勢はどんなふうにコミュニティを形成してきたか

はい、またポケモンGOのPvPの話です。
前回書いたように、PvP実装からGOバトルリーグ実装までの1年余りの間、PvPを日常的に楽しんでる人って、全ポケモンGO人口からしたらめっちゃ少なかったんですね。
で、その人たちは、どうしてたかって言うと、遠隔対戦については、主にツイッターでお互いつながって、自分が対戦できる時間に対戦募集ツイートして、対戦ありがとうございましたーってリプライ飛ばしあったり、DMで感想戦したりしてたし、今もしてるわけです。
あと重要なのが、有志で公民館とか借りて主催するPvPの大会が、東京や大阪などの大都市圏で開かれてきたことです。数十人規模のものから、大規模なものでは100人超えるようなものまで。とりあえず昨年を通じて定期的に開かれ、一番規模の大きな大会である東京PvP大会のツイートまとめにリンク貼っときます。こんな感じ。

こういう場でまた対戦フレンドのつながりができて、人脈が広がっていって、普段は遠隔で対戦して練習して、1,2カ月に1回どこかの大会に参加すると。
そういう、対戦フレンドがたくさんいて、大会にも何度も参加して、っていう「PvP勢」ってくくりができるような、数百人規模(多分1000人は超えない)のコミュニティが1年かけて、出来てきてたんですよね。ツイッターで「ポケモンGO PvP」で検索すると主だった人たちが出てくるので、その人たちと相互フォローになってる人たちをたどっていくと300~400人くらい見つけられます。上のトゥギャッターからたどってもいいと思います。
海外にはシルフロードっていうポケモンGOのポータルサイトがあって、そこが運営してるシルフリーグっていう、PvPの大会を簡単に組織・実施できて、参加者共通のランキングがつくシステムがあるんですけど、日本のプレイヤーも一生懸命英語読んでそのシステムを使ってシルフの大会が日本でも開かれるようになり、さらにそのシステムを使った遠隔対戦のリーグができたりっていうような、全部有志による無償の努力の積み重ねがありました(今も続いています)。
とにかく「対戦できるようになるまでがめんどくさい」システムだったポケモンGOのPvPを、それでも対戦そのものの面白さに惹かれて、熱心に取り組み、なるべく多くの人が対戦を楽しめるようにと努力してきた人たちの積み重ねがあったわけです。
再生回数が取れないと嘆きながら定期的に対戦動画をYouTubeに上げて、PvPの普及・啓蒙にいそしんできた人たちもいますし、初心者が参加しやすい大会運営を工夫してきた人たちもいますし、2回大規模な大会を実施したGameWithのような攻略サイトもあります。GameWith杯の様子はこちらなど。

それでもなかなかPvP人口増えない、強さを極めてる人はどんどん極まってきてるけど、そもそものすそ野が広がらないっていう状況に対するもどかしさがあって、やっぱりランダムマッチングできるようになってほしいねって思われてた中で、ついに実装されたのがGOバトルリーグでした。

2.もう「内輪」の論理は通用しなくなっていく

で、今年の2月ついに実装されたGOバトルリーグ。
やっぱりランダムマッチングできるってすごいですね。「とりあえずやるか」→「やってみたら面白かった」って人は爆発的に増えたと思います。もちろん一方で、「こうやってどんどんPvPやらせようとする流れ嫌だ」「やってみたけど勝てなくて余計嫌になった」って人もかなりいると思います。なので、プレシーズンがもうすぐ終わり、本シーズンが始まってしばらくの間くらいが、順調にPvP人口が増えていくかしぼんでしまうかの分かれ目なのかなと思ってます(素人考えですが)。
通信障害の問題や、レートの算出方法がよくない問題など、システム上の重大な問題もあるので、そこはナイアンティックに頑張ってもらうとして。
今回書きたいのは、日本のPvP勢を見てて、(私自身は全然PvP勢って言えるほど頑張ってないし強くないし、大会にも遠隔リーグにも参加してないので、一人のPvPファンであり、ゆるっとPvPを楽しんでるものとして)心配してること、一言で言うと「PvP勢が何となく共有してきたルールやモラルについての意識がこれからは通用しなくなっていくだろう」ということについてです。


今年の1月、GOバトルリーグ実装前なんですけど、東京都も主催に名を連ねる東京eスポーツフェスタというのがありまして、その中の一つの競技としてポケモンGOも取り上げられたんですね。ナイアンティックと(株)ポケモンが公式に協力する形で。
時間内での捕獲競争が予選で、本選はPvPだったんですけど、決勝戦は司会・霜降り明星、実況アナウンサーと解説付きでYouTubeで生配信されて、普段一流プレイヤーの対戦を見る機会のない人にも見てもらえるいい機会でした。
決勝戦に進出したのはお二人ともPvP勢の中でも有名なプレイヤーで(優勝した方の振り返りはこちら→ https://note.com/masataso/n/n4e31e2a4bf9a )、PvP勢も現地での応援や生配信見ながらのツイートなどで盛り上がってたんですけど、いざ対戦がはじまると、片方のプレイヤーがほかの人に入れ替わっちゃってて、みんな一瞬何が起こったのか分からずプレイが中断し、かなり長い間再開されない状態になってしまいました。
実際は、この決勝戦を見ていた数人のPvP勢が「応援のつもりで」(というのは本人の弁ですが、実際はまあ軽い気持ちのおふざけだったと思います)決勝戦に出てる人にそのタイミングで遠隔対戦を申し込んでいて、ちょうどそっちが受け付けられちゃって、割り込むような形になっちゃったということで、後日当事者の(その人も界隈では有名なプレイヤーでした)謝罪ツイートが出る、というような「事件」になってしまったわけです。

それに対するPvP勢の反応は、せっかくPvPがこれだけ大規模な公式のイベントで取り上げられるってときに内輪受けみたいなふざけたことしてんじゃねえよっていう強い憤りを示す人たちと、まあ別に謝ったんだからいいんじゃねって感じの人たちと、ノーコメントな人たちに分かれていたと思います。
これってすごく象徴的な出来事で、要は1年以上かけてできてきたある種の「内輪」「身内」のノリが、まだ通用すると思ってた人たちと、もう通用しない(少なくとも通用しない範囲にまでPvPが広がり始めてる)と思ってる人たちとに、PvP勢が分かれて来てることがはっきりしたと思います。

その後、今度は位置偽装アプリを使ってる人たちに一斉にナイアンティックから警告が出て、プレイが一定期間一定程度制限されるってことがあって、PvP勢の中でも結構な数それに該当してると疑われる人たちが出て来て、当人がツイッターで謝罪したり、この件をどうとらえるべきかで、界隈で議論が起こったりということがありました。
位置偽装アプリは、使ったことないんでよく分からないんですけど、GPSによる位置情報を使ったゲームであるポケモンGOに直接干渉して、その位置情報を意図的に狂わせて、たとえばオーストラリアに飛ばして、日本では出ない地域限定ポケモンを捕まえたり、田舎の人があまり来ないジムに飛ばしてポケモンおいてコイン稼いだり、実際歩いてないのに歩いたことにしてたまご孵化したり、ってことができるみたいです。
これは明確に規約違反(規約の「3.1 不正行為」の「デバイスの位置を改変又は改ざんする技術(GPSスプーフィング等)の使用」)ですし、ゲームの世界観にも反してるので、まあ非難されて当然だと思います。
ただ、ナイアンティックは3ストライク制というのをとってて、ストライク1では一定期間一定程度の制限がかかるだけで、それが解けたらまた普通にプレイできるわけですから、位置偽装アプリ使ってストライク1もらうというのは、サッカーで言えばイエローカードみたいな段階で、レッドカード=一発退場ではないわけです。だからちゃんとフレンドさんに謝って、もうしません、ってことで制限が解けたら復帰、というのは、アリなのかなと、私も思いました。
というような感じで推移を見てたんですが、位置偽装を強く非難するPvP勢がいる一方で、位置偽装を非難してる人は複垢(複数のアカウントを使ってプレイすることでこれも規約違反です。同じく規約の「3.1 不正行為」の「同一の本サービスを複数のアカウントによってプレイすること」)とかはやってないのかな?みたいな意見がツイッターや掲示板で見られるようになって、先に触れたシルフリーグの規約でも、位置偽装は参加不可だけど複垢については言及がないというような話も出て来て、さらには複垢はやってるPvP勢多いから言いだしたらキリないでしょ(だから不問にせざるを得ない)、みたいなツイートも出て来て、えっ、何それ?って思ったんですよね。
どうもPvP勢界隈には、複垢使ってる人は結構いて、位置偽装やってる人もいなくはなくて、なぜか位置偽装は許せないが複垢については容認または見て見ぬふり、みたいな風潮があるらしいということが見えてきたわけです。
罪には軽重があって、罰の重さもそれによって変わってくる、ってことは普通にあるわけで、「PvPをやる上で」という観点からは、位置偽装の方が罪が重くて、複垢は特段問題ない、ってこともありうるのかなと思うんですが、その根拠をちゃんと説明してくれてるツイートは見つけられませんでした。
複垢問題というのは、PvP勢界隈に限らずポケモンGOではずっとある問題で、特にフレンド機能実装後は、実際にフレンドがいなくても一人で自分が持ってる複数のアカウント間でギフトのやり取りしたりポケモンの交換して個体厳選したりってことができるようになったので、「ズル」としての度合いは大きくなってるわけですが、位置偽装アプリのようにゲームアプリそのものに直接干渉するようなものではないので、運営側から検出・特定することは困難なようで、結局、やったもん勝ちみたいな状態になってるわけです。街中でレイドやってても平気でスマホ2台3台持って画面叩いてる人いますし、台湾の有名な何十台もスマホ並べてるお爺さんとかも放置されちゃってるわけです。
田舎ではレイドバトルが成立しづらいので、複垢使わないと、都会の人と同じように伝説ポケモンが捕まえられないといった切実な理由を訴える人も多いですし、複垢使ってなおかつ課金してれば、運営からすればむしろいいお客さんじゃん、みたいに居直る人もいます。

*ポケモンGOにおける複垢問題を包括的に整理した上で、ナイアンティックへの提言や、GOバトルリーグ実装後に起こりうる問題まで見通した動画が、昨年のやまだちゃんねるに上がっていますので、詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。


ともあれ、今のところ規約違反は規約違反で、交換による個体厳選が効率的にできるという点では、PvPをやる上でも「ズル」になってるのは確かだと思います。
運営から直接警告が来る位置偽装の方が、来ない複垢より重いでしょ、っていう理屈は一応成り立つ気はしますけど、それって警察に見つかるか見つからないかで罪の軽重が決まるみたいな話だとも思います。見つかりさえしなければひき逃げしても無罪、みたいな話は、法的には通っても道徳的には通らないと思うんです。規約は、ゲーム会社とゲームプレイヤーがプレイを始めるにあたって最初に交わす約束ですから、相手が気付いてなければいくらでも約束破っていいっていうのはちょっとどうなんだ?って思う人は多いと思います。

もちろん、複垢も含めて規約で禁止されてることのうちのいくつかは、校則で「廊下は走っちゃいけません」って言われてるみたいなもので、先生に見つかっても「ごめんなさーい てへぺろ」で済むレベルのものでしょっていう暗黙の理解が共有されてる範囲っていうのもあると思います。思いますが、共有されてない範囲もあるってことなんです。
なので、PvP勢が自分たちのコミュニティで共有するルールとして、位置偽装はダメだけど複垢は問題なし、とするなら、それがなぜかをきちんと対外的に説明しないと、新たにPvPに興味を持って界隈に入ろうとしてきた人にびっくりされてしまう可能性が高い。GOバトルリーグの実装でPvP人口が一気に増大してPvPとPvPが強い人への興味を持つ人が増える中で、「なんとなく」、複垢は「みんなやってるしナイアンに止められてないから」っていう内輪の論理は通用しなくなっていくと思うからです。
位置偽装、複垢以外に、これは規約違反には多分ならないですけど、振り子を使って物理的にスマホを揺らし続けることで移動距離を稼いで、たまご孵化などを効率的に進めるっていう手段があって、そのための振り子とかが今普通に売られてます。たまご孵化は、個体厳選だけでなく、ポケモンの強化に必要なほしのすなを稼ぐ効率的な手段でもあるので、明確な規約違反ではないものの、外を歩いてポケモンを捕まえようっていうゲームの趣旨からしても、PvPをやる上でも、「ズル」ですよね。これも、PvP勢には使ってる人が結構いるっぽいですが、特に非難されることはないようです。

GOバトルリーグは、今はプレシーズンで、レートはついてるけど気にするなとナイアンティックは言ってるわけですが、本シーズンが始まったら、恐らくシーズンごとの成績の発表というのはあるんじゃないかと思います。
ポケモンGOのアクティブユーザー数を考えると、全世界のGOバトルリーグ参加者総数は数百万単位にはなるんじゃないかと思いますが、その上位100人以内に入ってる人が、例えば位置偽装だったり複垢だったり振り子だったりを使ってたとバレた場合、位置偽装はダメだけど複垢はまあいいんじゃね?とか、振り子は特に規約違反でもないしいいんじゃね?っていう理屈は多分通らないと思います。というか通してくれない人がたくさん出てくると思います。


3.明文化されてる規約についても、されてないモラルやマナー、ゲームの世界観との整合性についても、各PvPプレイヤーや、有志の大会主催者は、自分たちのスタンスをはっきりさせた方がいいんじゃないかな

ちょうど最近、先に触れた東京eスポーツフェスタで準優勝した方がGameWithさんのスポンサードを受けることが発表されてPvP界隈は沸いたわけですが、この先、賞金のかかったPvP大会や、ナイアンティックや(株)ポケモン公認又は主催の大会が開かれる場合、ツイッターのプロフに「○○大会優勝」などと掲げながらツイートたどれば複垢がバレバレ、みたいなプレイヤーはまず参加できないと思いますし、もし参加したらたちまちネットで叩かれるということが起きると思います。
有志がボランティアで実施する数十人から数百人単位の大会なら、逆に、ウチは位置偽装だろうと複垢だろうと振り子だろうと、ナイアンにアカウント停止されてないならそれはプレイしていいってことなんだし、むしろ全部勝つための「努力」だろ?とにかくPvP強いやつが正義なんだよ、っていう、何でもありの地下PvP大会みたいなのもアリだと思います。個人的には面白いと思います。バーリトゥードPvP大会。
けど、ポケモンGOのPvPをもっとライトユーザーにも普及させたい、ちびっ子が目を輝かせてあこがれるスタープレイヤーが出てきてほしい、100人の頂点もそれなりの良さはあるけど100万人の頂点はわかりやすくかっこいい、このゲームをeスポーツとして社会的に認知が得られるようにしたい、プロとして生計が立てられるプレイヤーが出てくるところまで行ってほしい、と思うなら、明確な規約違反や、規約違反ではないけど多くのプレイヤーが「ズル」だと思うような行為に対しては、普通のスポーツが競技そのもののルールを守るだけじゃなく、スポーツマンシップにのっとった言動を求め、ドーピングを厳しく取り締まっているように、極力クリーンな状態を目指していくしかないと思います。

私は、PvP面白い!と思って、対戦動画出してる人や、PvP大会の運営に関わってる人や、そうした大会で好成績を挙げている人のツイッターをフォローして、そうした人が相互フォローしてるPvP勢を芋づる式にフォローして、最新の情報を吸収しようとしてきて、何人かの方とはフレンドにもなっていただいて、遠隔で対戦したりいろいろ教えてもらったりしてますし、大会の様子のツイートを楽しく見たり、PvP勢が積み重ねてきた努力の素晴らしい部分もたくさん知っています。
だからこそ、そのコミュニティにある、「なんとなく」なあなあになっちゃってるというか、お互い仲良くすることを優先して「あえて触れないでおいてる」部分のせいで、PvP勢全体が十把一絡げでグレーなイメージを、大多数のポケモンGOプレイヤーに持たれることになるとしたらめちゃくちゃ残念なんです。
今のうちに、自分たちはどういうルール意識でPvPに取り組んでいこうとしているのか、界隈のオピニオンリーダー的なポジションの人には特に、考えてほしいなと思っているところです。
この手の提言なんて、いくら内容がそれっぽくても、言ってるやつ自身がプレイヤーとして大したことなければ、お前何様だよって感じでまともに聞いてもらえない可能性があることは、いくつかの趣味のコミュニティを見てきた人間なので分かります。
なんですが、ポケモンGOのPvPがもっと広がってほしいと願ってる一人のファンとして、言っておきたかったので、つらつらと書かせてもらった次第です。言いたいことは大体吐き出したので(ほんとはもう一つあるんですが、これはただ特定の人を非難する感じになりかねないため、あれこれ書き方工夫してみましたがうまくいかなかったのでやめておきます)、多分今後は普通にゆるくPvPを楽しむ人に戻ります。この、「ゆるく楽しむ」人の層が増えることも、PvP普及に不可欠なことだと思ってるので、このnoteには、もし余裕があれば、初心者さん向けの対戦動画まとめとかも書ければなと思ってます。

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