東京大学数理科学研究科の修士課程に合格しました

投稿が半年ほど遅れてしまいましたが、東大数理の令和6年度修士課程入学試験に無事合格しました!

合格者数などの情報

募集要項や過去問はこちらの令和6年度のページで公開されています。

募集要項には「備考:試験の成績によっては、入学許可者数が募集人員に達しない場合もある」とあります。今年度は120名以上が出願し、57名が筆記試験を突破し、最終的に38名が合格しました。したがって合格率は約3割です。

なお募集要項には募集人員は「53 名(内外国人6名)」と書いてありますが、この人数がフルに埋まっている年度は私の調べる限りありませんでした。他研究科では募集人員よりも多く合格するところもあることを考えると、数理科学研究科の入試は比較的厳しいようです。

得点開示の結果

得点開示の結果は以下の通りでした。

  • 専門科目A 185

  • 専門科目B 155

  • 英語 194

  • 総合得点(口述含む) 59

ただし満点が何点なのか不明なので、この数字だけではあまり参考にならないと思います。一応同級生たちと比較してみた感じだと、わりと合格ギリギリの得点だったように思います。

筆記試験について

筆記試験は2日にわたって行われます。

1日目朝: 外国語 (英語)

1日目朝は英語の試験があります (80分)。募集要項によれば「数学に関する英文の読解及び作文の能力をみる問題」が出題されます。近年は和訳2問、英訳1問のセットが出題されており、今年度も同様の形式でした。

どの問題も英文としての難易度はあまり高くないと思いますが、数学の文章に独特な言い回しへの慣れはそれなりに要求されると思います。また、問題の中では数学用語の知識を問われる部分もあります。たとえば今年度の和訳には "lattice" という数学用語が出題されました。自分は反射的に「束」と訳しそうになりましたが、後に続く文章を読むと「格子」が適切そうでした。束と格子とでは意味が全く違いますが、知識がなければ文脈から答えを導くことはできないと思います。

英語の試験対策として特別にやったことは何もありませんが、これまでの普段の勉強で英語の文献に触れてきたことはかなり役立ったと思います。ちなみに、ネットに落ちている受験体験記などでは「英語の得点では差がつかない」と書いてあるものを見かけます。これは確かにその通りだと思います。実際、同級生たちと得点を比較してみた感じでもあまり差はありませんでした。

1日目昼: 専門科目A

1日目昼は専門科目A (A問題) の試験があります (180分)。募集要項によれば「線形代数、微分積分、複素解析、常微分方程式、集合・位相などの問題」が出題されます。問題形式としては必答問題2問、選択問題5問中2問で計4問を解答する形式になっています。

自分は必答問題の①線型代数と②微積に加えて、選択問題には③位相と④複素積分を選びました。どの問題も想像以上に苦戦してしまったので、出来は芳しくありませんでした。自己評価はあまり当てにならないと思いますが、試験後に詳しく振り返りをしてみた感じでいうと、①線型代数は8割くらいはできたと思いますが、④複素積分は7割に満たないと思いますし、②微積と③位相は3割もできていないように感じます。それでも合格できたのは本当に幸運でした。

A問題の試験対策としては、自習の他に同級生たちとの対策会に参加していました。対策会は基本的に5月の終わりから週1回くらいのペースで開催されていて、毎週希望者が何人か黒板発表する形式でした。こうしたモチベーション維持の機会が得られるのはソロにはない良さだと思います。また、佐久間氏が作成している過去問解答集も参考にさせていただきました。

A問題は基本的にはどの分野も解こうと思えば解ける (解けるとは言ってない) ように練習しました。しかし試験直前はB問題の対策に追われてA問題にあてる時間がなかったので、直前期は専攻に近い幾何系の問題を中心に取り組んでいました。

2日目昼: 専門科目B

2日目昼は専門科目B (B問題) の試験があります (240分)。募集要項によれば「専門的問題(10 数題の問題から3題選んで解答)」が出題されます。1問あたりの時間が増えるぶん、A問題と比べてB問題は格段に難しくなります。ものによっては何日か頭をひねっても解けない問題が出てきたりします。

自分は幾何2問 (多様体、微分幾何) と解析1問 (測度論) を選びました。肝心の出来栄えについてですが、個人的には想像以上に良かったと思います。そもそもB問題は難しすぎるので、全体の半分くらい何か書ければ御の字と思っていたのですが、試験後に詳細に振り返りをした感じでいうと、どの大問も7~8割くらいは何か意味のあることを書けたように思います(もちろん、7~8割くらい得点したということではありません)。

B問題の試験対策として、8月始めから週2回のペースで、研究室の同期メンバーと一緒に幾何の過去問を解く会をしていました。いま振り返るとこれは本当に無くてはならない取り組みだったと思います。B問題は本当に難しいので、ソロでやっていると「なんとなくできたっぽい」で手を止めてしまいそうになりますが、対策会で相手に説明するとなると、もう1歩進んだ理解をしなければというモチベーションが生まれます。B問題を無事乗り切れたのは、そうしてしっかり勉強できたことが大きかったように思います。

解析の問題の対策は、佐久間氏が作成している過去問解答集の助けをお借りしながら自習しました。そもそも解析の対策をしていたのは、(情報幾何で解析の知識が必要だからという理由もありますが) 幾何の問題が難しすぎたときのバックアップのためでした。そして今年度は幾何の大問3つのうち1つが一見して難しそうだったので、代わりに解析の問題を1つ選ぶことにしました。このバックアップがなければ大問を丸々1つ取りこぼしていたかもしれないと思うと、対策しておいて良かったと思います。

口述試験について

筆記試験の合否は2日目が終わった次の日に出ました。筆記試験合格者は口述試験に進むことができます。口述試験の内容は、募集要項によれば「専門科目についての一般的質問」だそうです。自分は口述試験の内容はSNS等に漏らさないよう口止めされました。基本的には口止めされるようですが、噂によれば口止めされない人もいるようで、場合によるのかもしれません。そして、おそらく口止めされなかったであろう人からの情報がネット上に色々転がっているので、受験される方は事前によく調べてみることをおすすめします。

最後に

学部入試では成績が悪く何度も落ちてしまった私ですが、院試では一発合格できて本当に安心しています。これも周囲の環境のおかげだと思います。大学院でも引き続き頑張っていきたいです。

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