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入学以来の1年半で買った本

東京大学には進振りと呼ばれる仕組みがあるため、入学から2年夏学期までの約1年半という期間はひとつの大きな区切りとなっています。そこで、この1年半の間に買った本を備忘録的に並べておきたいと思います。ただし、いくつかの本は無用な煩雑さを防ぐため除外することにしました(指定教科書や、処分済みの本、雑誌類(数理科学など)等々)。

数学(微積)

・小平邦彦『解析入門I』(岩波書店、2003)
・小平邦彦『解析入門II』(岩波書店、2003)

小平解析は1年次に買った本ですが、わざわざ買わなくても良かったなあと思います。後で紹介する杉浦解析が詳しすぎるほど詳しいので、そちらで充分でした。

・杉浦光夫『解析入門I』(東京大学出版会、1980)
・杉浦光夫『解析入門II』(東京大学出版会、1985)

杉浦解析はほとんど辞書のような詳細度です。2年生になってから買いましたが、それ以降ほとんど毎日この本を開いていたと思います。今後もずっとお世話になるでしょう。入学したら真っ先にこれを買うべきでした。

・杉浦光夫ほか『解析演習』(東京大学出版会、1989)
問題が大量に載っています。誤植も多いですが、それを差し引いても魅力的な本です。微積続論やベクトル解析の問題演習でお世話になりました。複素解析の問題があまり載っていないのが難点です。

数学(線型代数)

・齋藤正彦『線型代数入門』(東京大学出版会、1966)
出版年は古いですが、1年次の線型代数で扱う内容はほとんど完全にカバーされています。非常に良い本だと思います。

・齋藤正彦『線型代数演習』(東京大学出版会、1985)
2年生になってから、ジョルダン標準形の単因子論を使わない証明を知りたかったので買いました。もっと早く買っても良かった気もしますが、1年次は忙しいのでこれをこなす余裕は無かったでしょう。

数学(その他)

・森口繁一ほか『岩波数学公式I』(岩波書店、1987)
・森口繁一ほか『岩波数学公式II』(岩波書店、1987)

手計算の答え合わせに使ったり、ふとしたときに役立ちました。

・青本和彦ほか『岩波数学入門辞典』(岩波書店、2005)
簡単なレポートを書くときに定義を引くのに使ったりしました。温かみのある書きぶりで読み物としても面白い本です。

・寺田文行、坂田泩『新版演習微分方程式』(サイエンス社、2010)
微分方程式の授業の問題演習のために使いました。

・H. P. スウ『ベクトル解析』(森北出版、1980)
力学の授業でベクトル解析の公式が出てきたときに、その証明が知りたくて買いました。ただ、あまり厳密に書かれていないので、ベクトル解析を道具として使えればよいと割り切って読む必要があると思います。

・梅原雅顕『曲線と曲面』(裳華房、2021)
微分幾何の輪講の副読本として買いました。輪講で読んでいたのは小林昭七『曲線と曲面の微分幾何』ですが、そちらで省略されている証明もきっちり書かれていたりして非常に役立ちました。

・松本幸夫『多様体の基礎』(東京大学出版会、1988)
こちらも微分幾何の輪講のために買いました。まだきちんと読み込めていませんが、直感的な記述と厳密さがうまく共存していて読みやすいという印象を受けました。3年次に教科書として使うらしいので今後も役立つと思います。

・吉田伸生『新装版ルベーグ積分入門』(日本評論社、2021)
積分論の全容を俯瞰したかったので買いました。まだきちんと取り組んではいません。

・金森敬文『統計的学習理論』(講談社、2015)
学外の機械学習セミナーに参加するために買いました。1年次に受講した「情報α」という深層学習の授業で扱った内容に近いところがあります。

・吉田朋広『数理統計学』(朝倉書店、2006)
統計学を厳密に解説した辞書的な教科書が欲しかったので買いました。まだきちんと取り組んではいません。

情報幾何学

・甘利俊一『新版 情報幾何学の新展開』(サイエンス社、2019)
情報幾何学を創始した甘利先生の著書です。入学以前から情報幾何に興味があったので買いました。入門書ではないので結構難しいです。力がついてからまた読み返してみたいと思います。

・藤原彰夫『情報幾何学の基礎』(共立出版、2021)
こちらは情報幾何の入門書です。微分幾何の基礎的な部分は読みやすいと感じました。一方、確率統計に関わるところは知識不足でまだ読み切れていません。

・渡辺澄夫『代数幾何と学習理論』(森北出版、2006)
神経回路網の学習理論に興味があったので買いました。知識不足で全然読めていません。あと1年くらいしたら少し読めるようになっているかもと期待します。

記号論理学

・野崎昭弘『詭弁論理学』(中央公論新社、2019)
記号論理学のレポートのテーマとして、日常会話に現れる形式的誤謬に興味があったので買いました。が、結局このテーマは採用しませんでした。本自体は面白いです。

・前原昭二、竹内外史『数学基礎論』(筑摩書房、2019)
記号論理学のレポートのテーマに超準解析を選んだので、そのあたりの知識を得るために買いました。放送大学の教材が元となっているそうですが、読み物としても面白いと思います。ちなみに超準解析については、齋藤正彦『超積と超準解析』や江田勝哉『数理論理学』を図書館で借りてレポートをかきあげました。

・前原昭二『記号論理入門』(日本評論社、2005)
授業の予習復習のために買いましたが、講義内容が豊富だったのでこの本はあまり役立てられませんでした。

力学

・戸田盛和『力学』(岩波書店、1982)
力学の授業の予習復習のために買いましたが、後で紹介する[藤原]の方が詳しかったのでそちらで事足りました。

・藤原邦男『物理学序論としての力学』(東京大学出版会、1984)
教科書的に使うぶんにはこれで充分でした。ただ、演習問題がちょっと心もとないので別に演習書を買うべきでした。

熱力学

・三宅哲『熱力学』(裳華房、2006)
基礎事項を簡潔に紹介して、あとは演習問題がたくさん載っています。習うより慣れろといった感じでしょうか。自分は基礎事項の導出方法ばかり気になって演習をサボっていましたが、素直に演習をやっておけば良かったなあと思います。

・田崎晴明『熱力学』(培風館、2000)
熱力学の基礎事項の導出方法が気になったので買いました。しかし授業の流れとあまりにも違っていたのでうまく役立てられませんでした。

・久保亮五『大学演習 熱学・統計力学 (修訂版)』(裳華房、1998)
演習のためにと思って買いましたが、[三宅]で書いたとおりそもそも演習自体に全然取り組めませんでした。もったいない。

電磁気学

・砂川重信『理論電磁気学』(紀伊國屋書店、1999)
解説が詳しく書かれた辞書的な本で、講義資料を補完する存在として役立ちました。演習書も別途買えば良かったなあと思います。

化学

・梶原篤ほか『基礎化学』(サイエンス社、2011)
・梶原篤ほか『基礎化学演習』(サイエンス社、2013)

化学系の授業の予習復習のために買いました。が、自分のなかで優先度が低かったのであまり取り組めませんでした。

認知脳科学

・Eric R. Kandel ほか『カンデル神経科学』(メディカル・サイエンス・インターナショナル、2014)
これは入学前から持っていたので改めて買ったわけではないのですが、初めてまともに使ったのが認知脳科学の授業だったのでここに挙げておきます。実物を見ればわかりますが物凄いボリュームです。授業で気になった点がほとんどすべてカバーされていて、非常に役立ちました。

・横澤一彦『視覚科学』(勁草書房、2010)
授業の予習復習のために買いましたが、カンデルが圧倒的に有用だったのでこちらはあまり必要がありませんでした。

・S. Weinschenk『インタフェースデザインの心理学 第2版』(オライリー・ジャパン、2021)
視覚とインタフェースデザインの関係が気になったので、授業とは直接関係ないのですが個人的な興味で買いました。

ロシア語

・宇田文雄『ロシア語文法便覧』(東洋書店新社、2016)
ロシア語の指定教科書は文法の説明が結構簡素なので、補完のためにこの文法書を買いました。しかしあまり役立てられた感じはしません。それよりも習うより慣れろでもっと演習問題に取り組んだほうが良かったなあと思います。

・桑野隆『初級ロシア語20課』(白水社、2012)
ロシア語のテスト対策に演習問題が欲しかったので買いました。薄めなのですぐに終わってしまいました。

その他

・野島高彦『誰も教えてくれなかった実験ノートの書き方』(化学同人、2017)
実験系の授業で実験ノートの書き方が不安だったので買いました。が、この本のがどうのこうのというよりも、そもそも授業でノートを提出しても有用なフィードバックが返ってこないので実験ノートの書き方に習熟できた感じはしませんでした。

・蟹江憲史『SDGs (持続可能な開発目標)』(中央公論新社、2020)
色々な授業で SDGs の知識が当然のごとく必要となるので、これはまずいと思って勉強のために買いました。

・松岡亮二『教育格差』(筑摩書房、2019)
教育格差問題にもともと興味があったので買いました。しっかりデータを提示しながら書いてあるので説得力のある本だと思います。奨学金の小論文を書くのにも役立ちました。

・池内紀『尾崎放哉句集』(岩波書店、2007)
・夏石番矢『山頭火俳句集』(岩波書店、2018)

以前から自由律俳句が好きだったので買いました。お気に入りの句は放哉の「茄子もいできてぎしぎし洗ふ」。

・五藤隆介『理系の料理』(秀和システム、2015)
上京して久々に料理を再開したのでそのときに買いました。またちゃんと料理をするようになるきっかけとなった一冊です。

・A. ソーカル、J. ブリクモン『「知」の欺瞞』(岩波書店、2012)
「不完全性定理」や「相対性理論」といった巷に氾濫する専門用語の誤用に関する本です。元々英語版を持っていたのですが、英語の授業でレポートを書くためにすぐ読み込む必要があったので急いで邦訳版を買いました。非常に興味深い本です。

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