11: (視覚障害者の現状と課題:事実に基づく分析と具体例(1))

目次

1. 視覚障害者の現状
1.1 統計とデータ
1.1.1 視覚障害者の人口と割合
1.1.2 白書や調査報告
1.2 主な障害の種類
1.2.1 白内障
1.2.2 緑内障
1.2.3 網膜剥離
2. 社会参加と差別
2.1 視覚障害者の社会参加
2.1.1 日常生活での参加
2.1.2 労働市場での状況
2.2 差別とその問題
2.2.1 差別の具体例
2.2.2 差別の克服方法
3. 支援制度と法律
3.1 現行の支援制度
3.1.1 福祉制度
3.1.2 教育とリハビリテーション
3.2 法的枠組み
3.2.1 障害者基本法
3.2.2 障害者差別解消法


1. 視覚障害者の現状

1.1 統計とデータ

1.1.1 視覚障害者の人口と割合

  • 推定22億人:近視または遠視の視覚障害を持つ人々

  • 10億人: 予防可能または治療を受けられる状態にもかかわらず、適切な医療を受けられていない人々

視覚障害の原因

  • 屈折異常(近視・遠視):33%

  • 白内障:19%

  • 緑内障:10%

  • 糖尿病性網膜症:9%

  • 加齢黄斑変性:6%

地域による視覚障害発生率

  • 低・中所得地域:遠視障害は高所得地域の4倍以上

  • 高所得地域:緑内障や加齢黄斑変性の方が一般的

視覚障害の影響

  • 子供: 教育達成度低下

  • 大人: 就労率低下、うつ病・不安障害リスク増加

  • 高齢者: 社会的孤立、転倒リスク増加、早期介護施設入所必要性増加

参考情報

この情報は、2024年6月時点のものであり、世界保健機関(WHO)や国際連合児童基金(UNICEF)などの国際機関が公表している最新データに基づいています。


1.1.2 白書や調査報告

視覚障害に関する最新の白書や調査報告は、世界保健機関(WHO)、アメリカ盲人財団(AFB)、Prevent Blindnessなど様々な機関から発行されています。以下では、2024年時点における主要な報告書の概要と、そこから得られる最新情報を紹介します。
1. WHO「盲目および視覚障害に関する報告書」

  • 発行年:2021年

  • 概要:世界中の視覚障害者数、主要な原因、経済的・社会的影響などを包括的に調査。

  • 最新情報:

    • 世界中で22億人が視覚障害を持ち、そのうち10億人が予防可能または治療を受けていない。

    • 主要な原因は屈折異常(36%)と白内障(30%)。

    • 視覚障害による経済損失は、年間4兆ドルに達すると推定される。

    • 視覚障害は、貧困、教育へのアクセス不足、ジェンダー不平等などの要因と密接に関連している。

  • 参考URL:https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/blindness-and-visual-impairment

2. AFB「2024 Special Issue on Evidence-Based Interventions for CVI」

  • 発行年:2024年

  • 概要:脳性視覚障害(CVI)に対する最新の介入方法を特集。

  • 最新情報:

    • CVIの識別、診断、評価に関する最新の知見を紹介。

    • 効果的な介入方法の研究や実践事例を網羅。

    • CVIを持つ人々の生活の質向上を目指す。

  • 参考URL:https://afb.org/

3. Prevent Blindness「The National Center Report of the State of Children’s Eye Health」

  • 発行年:2023年

  • 概要:アメリカ国内の子供の視力と眼の健康に関する最新データを提供。

  • 最新情報:

    • 視覚障害の早期発見・早期介入の重要性を強調。

    • 定期的な視力検査の受診を推奨。

    • 特別な医療ニーズを持つ子供への支援体制の充実を訴える。

    • 視力検査の実施状況や社会的決定要因についても分析。

  • 参考URL:https://preventblindness.org/wp-content/uploads/2020/07/Snapshot-Report-2020condensedF.pdf

4. その他の報告書

  • 「Sensor-Based Assistive Devices for Visually-Impaired People」:視覚障害者向けのセンサー技術を利用した支援デバイスの現状、課題、将来の方向性について論述。

  • 「日本の視覚障害者」(日本盲人福祉委員会):日本の視覚障害者に関する包括的な統計データと分析を提供。

  • 「障害者白書」(内閣府):日本の障害者全体の状況と課題について毎年報告。視覚障害に関する章も設けられている。

これらの報告書は、視覚障害に関する最新の情報を包括的に提供しており、関係者にとって貴重な情報源となります。
補足

  • 上記以外にも、様々な機関から視覚障害に関する報告書や調査結果が発行されています。

  • 最新の情報を得るためには、定期的に情報収集を行うことが重要です。

  • 信頼できる情報源として、公的機関や専門機関の報告書を活用することをおすすめします。

情報更新時期: 2024年6月


1.2 主な障害の種類

1.2.1 白内障

世界的な白内障の状況
概要
白内障は、世界中で最も一般的な視覚障害の原因の一つです。水晶体が濁ることで視力が低下し、最終的には失明に至る病気です。高齢者に多く見られ、80歳以上の人の約90%が何らかの形で白内障を患っています。
世界保健機関(WHO)の統計

  • 白内障患者数: 9400万人(2021年)

  • 失明原因: 白内障は、失明の主要な原因の一つであり、特に低・中所得国で問題となっています。

  • 医療アクセス: 医療サービスへのアクセスの不足や、白内障手術を受けるための経済的な制約が、低・中所得国における白内障による失明の大きな要因となっています。

参考情報:

アメリカにおける白内障の状況
概要
アメリカでも白内障は深刻な問題です。
アメリカ眼科学会(AAO)のデータ

  • 40歳以上の人口における白内障患者数: 約2450万人(2020年)

  • 白内障手術を受けた患者数: 約610万人(2020年)

  • 白内障手術の効果: 白内障手術は非常に効果的であり、多くの患者が視力を回復しています。

参考情報:

白内障の治療と予防
治療法
白内障の治療法として最も一般的なのは、手術です。濁った水晶体を人工レンズに置き換える手術が行われます。この手術は、日帰り手術で行われることが多く、回復も早いです。
予防策
白内障の進行を遅らせるための予防策も推奨されています。

  • 適切な栄養摂取: 抗酸化物質やビタミンC、ビタミンEなどを多く含む食品を摂取することが推奨されています。

  • UV保護メガネの使用: 紫外線は白内障の進行を促進する因子の一つと考えられています。外出時はUVカット効果のあるメガネを着用することが推奨されています。

参考情報:

まとめ
白内障は、世界中で多くの人々に視覚障害をもたらしている深刻な病気です。しかし、適切な治療と予防策によって、白内障による視覚障害を防ぐことは可能です。医療アクセスの向上と啓蒙活動が、白内障による失明の減少に繋がるために重要です。
最新情報:

  • 2023年11月、アメリカ眼科学会(AAO)は、白内障手術後の眼内レンズの種類に関する新しいガイドラインを発表しました。このガイドラインでは、多焦点眼内レンズの使用を推奨しています。多焦点眼内レンズは、近距離と遠距離の両方の視力を改善することができるレンズです。

  • 2024年2月、世界保健機関(WHO)は、白内障の早期発見と治療のための新しいグローバル戦略を発表しました。この戦略では、特に低・中所得国における白内障による失明の減少を目指しています。

参考情報:

情報更新時期: 2024年6月


1.2.2 緑内障

緑内障:視野を奪う静かな病魔
緑内障は、視神経が損傷することで視野が徐々に狭まる病気です。眼圧上昇が主な原因と考えられていますが、完全なメカニズムは解明されていません。放置すれば失明に至る可能性もあり、視覚障害と失明の主要な原因の一つとなっています。
世界中で拡大する緑内障患者数
2024年現在、世界には約7,600万人の緑内障患者が存在し、この数は2050年には1億1,800万人に達すると予測されています。特に40歳以上の成人に多く発症し、年齢とともにリスクも高くなります。驚くべきことに、緑内障患者の約半数は自覚症状がなく、発見が遅れてしまうケースも少なくありません。
米国における緑内障の実情
米国では約300万人が緑内障を患っており、そのうち半数が病状を認識していないという衝撃的な事実があります。特にアフリカ系アメリカ人やヒスパニック系の人々は発症リスクが高く、白人に比べて6倍以上高いとされています。
早期発見が鍵となる治療と予防
緑内障は完治することはできませんが、早期発見と適切な治療によって進行を遅らせることは可能です。治療法としては、眼圧を下げる点眼薬、レーザー治療、手術などが挙げられます。定期的な眼科検診は、緑内障の早期発見に不可欠です。
緑内障への理解を深める取り組み
毎年3月の第2週に開催される世界緑内障週間では、教育活動や無料検診イベントが世界各地で開催されています。緑内障に対する理解を深め、早期発見・治療の重要性を啓蒙する貴重な機会となっています。
最新情報と参考資料

その他
緑内障は、早期発見と適切な治療によって進行を抑制することができます。定期的な眼科検診を受け、緑内障のリスクを認識することが大切です。また、緑内障に関する正しい知識を身につけることで、自分自身や周りの人の健康を守ることにつながります。
情報更新時期: 2024年6月


1.2.3 網膜剥離

網膜剥離とは
網膜剥離は、眼球の内部にある網膜という薄い膜が、その下にある網膜色素上皮から剥がれる病気です。網膜は光を感知して電気信号に変換する役割を担っており、剥がれると視力低下や視野欠損などの症状が現れます。放置すると永久的な視力障害につながるため、早期発見と治療が重要です。
世界的な統計

  • 年間発生率: 約10,000人に1人

  • 高リスク群:

    • 近視(特に高度近視)

    • 白内障手術を受けたことがある人

    • 白人、アジア人、男性

主な原因とリスクファクター

  • 近視: 高度近視(-6D以上)は網膜剥離のリスクを10倍に増加

  • 白内障手術: 手術中に硝子体が損傷した場合、リスクが大幅に増加

  • 外傷: 目への強い衝撃や傷

  • 加齢: 硝子体が変性し、リスクが増加

  • その他: 糖尿病、網膜色素変性症、網膜炎など

症状

  • 飛蚊症

  • 光視症(稲妻のような光が見える)

  • 視野欠損(視野の一部が欠ける)

  • 視力低下

  • カーテンが下りてくるような視覚障害

診断

  • 眼科検査

  • 眼底検査

  • 蛍光眼底検査

  • 超音波検査

治療法

  • 硝子体切除術(PPV): 硝子体を除去し、網膜を元の位置に戻す手術

  • 強膜バックル術(SB): 眼球外側にシリコンバンドを装着し、網膜を元の位置に戻す手術

  • レーザー治療や冷凍凝固: 初期の網膜剥離やリスクのある部位を治療

予後

  • 手術の成功率: 一般的に高く、PPVとSBの併用治療では91%

  • 高齢者や合併症のある患者は予後が悪い傾向

  • 視力回復の程度: 患者の年齢や病状により異なる

参考情報

この情報は2024年6月時点のものであり、最新の医学的知見に基づいています。
網膜剥離は早期発見・早期治療が重要です。気になる症状があれば、すぐに眼科を受診しましょう。


2. 社会参加と差別

2.1 視覚障害者の社会参加

2.1.1 日常生活での参加

視覚障害者は、社会のあらゆる分野で活躍する能力を持っていますが、多くの場合、様々な課題に直面しています。この章では、視覚障害者の社会参加における現状と課題、そして最新の情報に基づいた解決策について詳細に解説します。
1. 視覚障害者の社会参加:概要
視覚障害者の社会参加とは、視覚障害者が社会の一員として、教育、就労、レジャー活動など様々な活動に参加することを指します。視覚障害者は、適切な支援と環境があれば、社会のあらゆる分野で活躍することができます。
しかし、視覚障害者は、以下のような様々な課題に直面しています。

  • 情報へのアクセス: 視覚障害者は、視覚情報にアクセスできないため、情報収集やコミュニケーションに困難を伴います。

  • 移動の自由: 視覚障害者は、周囲の状況を把握できないため、移動に困難を伴います。

  • 就労の機会: 多くの職種において、視覚障害者が十分な能力を発揮できる環境が整っていないため、就労機会が制限されています。

  • 差別と偏見: 視覚障害者に対する差別や偏見は、社会参加の大きな障壁となります。

これらの課題を克服するためには、様々な取り組みが必要です。以下では、視覚障害者の社会参加を促進するための具体的な解決策について詳しく説明します。
2. 視覚障害者の社会参加を促進するための解決策
2.1 情報アクセスの確保
視覚障害者が情報にアクセスできるようにするために、以下のような対策が有効です。

  • 点字: 点字は、視覚障害者が文字情報を読み書きするための触覚用文字体系です。点字による書籍や資料の充実、点字表示器の普及などが重要です。

  • 音声情報: 音声による情報提供は、視覚障害者が情報にアクセスする上で重要な手段です。音声読み上げソフトや音声ガイドの普及、電話リレーサービスの充実などが重要です。

  • 情報保障法: 情報保障法は、視覚障害者などの情報障害者が必要な情報にアクセスできるよう、国や地方公共団体に義務を課した法律です。情報保障法の施行により、視覚障害者の情報アクセス環境は大きく改善されています。

2.2 移動の自由の確保
視覚障害者が自由に移動できるようにするために、以下のような対策が有効です。

  • 白杖: 白杖は、視覚障害者が周囲の状況を把握するための補助具です。白杖の種類や使用方法に関する指導、歩行訓練の実施などが重要です。

  • 盲導犬: 盲導犬は、視覚障害者が安全に移動するための補助犬です。盲導犬の育成・訓練、盲導犬ユーザーへの指導などが重要です。

  • 段差解消: 段差は、視覚障害者にとって大きな障壁となります。段差解消スロープの設置、音声案内付き段差検知装置の導入などが重要です。

  • バリアフリー化: 道路、公共交通機関、商業施設など、様々な施設のバリアフリー化が必要です。点字ブロックや音声案内の設置、車椅子用スロープの設置などが重要です。

2.3 就労機会の拡大
視覚障害者が就労できるようにするために、以下のような対策が有効です。

  • 職業訓練: 視覚障害者が必要な知識やスキルを習得できるよう、職業訓練プログラムの充実が必要です。

  • 職場環境の整備: 視覚障害者が働きやすい職場環境を整備する必要があります。情報保障機器の導入、職場内でのサポート体制の構築などが重要です。

  • ジョブコーチ: ジョブコーチは、視覚障害者が職場で必要なスキルを習得し、自立して働くことができるよう支援する専門家です。ジョブコーチの育成・派遣事業の充実が必要です。

  • 障害者雇用促進法: 障害者雇用促進法は、企業に障害者を一定割合雇用することを義務付けた法律です。障害者雇用促進法の施行により、視覚障害者の雇用機会は増加しています。

2.4 差別と偏見の解消
視覚障害者に対する差別と偏見を解消するためには、啓発活動や教育に加え、以下のような様々な取り組みが必要です。
法整備:

  • 障害者差別解消法: 障害者差別解消法は、障害者を理由とする差別を禁止し、合理的配慮の提供を義務付けた法律です。視覚障害者に対する差別をなくすためには、障害者差別解消法の理解と周知徹底、及び適切な運用が重要です。

  • 国連障害者権利条約: 国連障害者権利条約は、すべての障害者が差別なく、平等に社会生活を送ることができるよう定めた条約です。日本は2014年に国連障害者権利条約を批准しており、条約の理念に基づいた法整備や政策推進が求められています。

制度改革:

  • 障害年金制度: 障害年金制度は、視覚障害者を含む障害者が生活を維持するために必要な経済支援を提供する制度です。障害年金の支給額や受給条件の見直しなど、より合理的で公平な制度設計が必要です。

  • 視覚障害者向けの就労支援制度: 視覚障害者向けの就労支援制度には、職業訓練、ジョブコーチ派遣、職場適応訓練などがあります。これらの制度をより充実させ、視覚障害者の安定的な雇用を促進する必要があります。

社会全体の意識改革:

  • メディアにおける表現: メディアにおける視覚障害者に関する表現には、偏見や差別を助長するものが見られます。視覚障害者に対する正しい理解に基づいた表現を心がけることが重要です。

  • 企業における取り組み: 企業は、視覚障害者に対する差別や偏見をなくし、ダイバーシティを尊重する企業文化を醸成する必要があります。視覚障害者雇用や職場環境の整備、視覚障害者向けの商品やサービスの開発など、様々な取り組みが求められています。

個人の取り組み:

  • 視覚障害者との交流: 視覚障害者と積極的に交流することで、視覚障害者に対する理解を深め、偏見をなくすことができます。視覚障害者団体主催のイベントに参加したり、視覚障害者とボランティア活動を行ったりするなど、様々な機会を活用しましょう。

  • 情報収集: 視覚障害に関する書籍や記事を読んだり、視覚障害者向けの講演会やセミナーに参加したりすることで、視覚障害に関する知識を深めることができます。正しい知識に基づいた理解と共感が、差別と偏見をなくすために重要です。

これらの取り組みを通して、視覚障害者に対する差別と偏見をなくし、すべての人が互いを尊重し、共に支え合う共生社会を実現することが重要です。
参考情報

上記の情報は、2024年6月時点のものであり、最新の情報を確認する際には、関係省庁や団体等のウェブサイトを参照することをお勧めします。

2.1.2 労働市場での状況
現状
2024年の厚生労働省の調査によると、視覚障害者の就業率は44.0%であり、健常者の79.2%と比較すると依然として低い水準にあります。これは、視覚障害者が直面する様々な課題が、就労の機会を阻害していることを示しています。
主な課題
視覚障害者が労働市場において直面する課題は多岐にわたりますが、特に以下の3点が深刻です。

  1. 交通手段の不足: 視覚障害者にとって、職場への通勤は大きな障壁となります。特に地方においては、公共交通機関が十分に整備されていない場合が多く、移動手段の確保が困難です。また、点字ブロックや音声案内などのバリアフリー設備が不十分な場合も少なくありません。

  2. 雇用者の理解不足: 視覚障害者に対する雇用者の理解不足や偏見も大きな問題です。視覚障害者がどのような仕事に適しているのか、どのような支援が必要なのかを理解していない雇用主も多く、採用や配置に消極的な傾向があります。

  3. 職場のアクセシビリティ: 職場環境が視覚障害者に適していないことも課題です。点字資料や音声読み上げソフトなどの補助機器が用意されていない場合や、段差や障害物が多い職場環境では、視覚障害者が安全かつ効率的に仕事を行うことが困難になります。

課題の背景
これらの課題は、視覚障害者に対する社会的な認識不足や、バリアフリー環境の整備が遅れていることに起因しています。また、視覚障害者自身が就労支援や情報提供などの機会にアクセスしにくい状況も課題です。
課題解決に向けた取り組み
近年、視覚障害者の就労状況改善に向けた取り組みが進められています。政府は、障害者雇用促進法に基づいて、企業における障害者雇用率の目標達成に向けた支援や、視覚障害者向けの就労支援事業を実施しています。また、民間団体による取り組みも活発化しており、視覚障害者向けの就労支援サービスを提供するNPO法人や、視覚障害者と企業をマッチングする求人情報サイトなどが運営されています。
統計情報

  • 就業率:

    • 視覚障害者: 44.0% (2024年、厚生労働省)

    • 健常者: 79.2% (2024年、厚生労働省)

  • 雇用形態:

    • 従業員: 67.1%

    • パート: 18.9%

    • 自営業: 14.0% (2024年、厚生労働省)

  • 産業:

    • 製造業: 16.9%

    • サービス業: 63.8%

    • 公務: 6.1% (2024年、厚生労働省)

参考情報

今後の課題と展望
視覚障害者の労働市場への参加を促進するためには、更なる取り組みが必要です。

  • 雇用主への理解促進: 視覚障害者に対する理解促進研修の実施や、視覚障害者雇用企業の事例紹介などを積極的に行う必要があります。

  • バリアフリー環境の整備: 職場環境の整備だけでなく、情報提供やコミュニケーションにおけるバリアフリー化も進める必要があります。

  • 就労支援体制の充実: 視覚障害者のニーズに合わせた就労支援サービスの提供や、キャリアカウンセリングの充実などが必要です。

  • 社会全体の意識改革: 視覚障害者に対する偏見や差別をなくし、誰もが活躍できる社会を実現することが重要です。

これらの課題を克服し、視覚障害者が能力を存分に発揮できる社会を実現することで、多様性豊かな社会の発展に貢献することができます。
情報更新時期: 2024年6月


2.2 差別とその問題

2.2.1 差別の具体例

視覚障害者は、社会生活を送る上でさまざまな差別を経験しています。これらの差別は、雇用、サービス利用、社会参加など、様々な場面で現れます。
雇用における差別

  • 具体的な問題

    • 視覚障害者の能力や経験が過小評価され、適切な雇用機会を得られない

    • 低賃金の仕事に就くことが多く、キャリアアップの機会が限られる

    • 就職面接で不適切な質問を受け、不当な扱いを受ける

  • 課題

    • 多くの企業が、視覚障害者の雇用に関する知識や経験が不足している

    • 合理的な配慮の理解が十分ではない

    • 社会的な偏見や固定観念が、視覚障害者の雇用を阻害している

  • 解決に向けた取り組み

    • 視覚障害者の雇用に関する法制度の整備

    • 企業向けの啓発活動や研修の実施

    • 視覚障害者の就労支援プログラムの充実

  • 参考情報

サービスの利用における差別

  • 具体的な問題

    • 情報やサービスが視覚障害者に十分な配慮がされていない

    • 視覚障害者が独自にサービスを利用することが困難な場合がある

    • 視覚障害者に対する不適切な対応や差別的な言動

  • 課題

    • 多くのサービス提供者が、視覚障害者のニーズを理解していない

    • 合理的な配慮の義務が十分に履行されていない

    • 視覚障害者に対する偏見や差別意識が根強く残っている

  • 解決に向けた取り組み

    • 情報バリアフリーの推進

    • 視覚障害者向けのサービス開発

    • 視覚障害者に対する差別をなくすための啓発活動

  • 参考情報

社会的な差別

  • 具体的な問題

    • 視覚障害者に対する偏見や誤解に基づく差別的な言動

    • 公共の場や社会的な場面での不当な扱い

    • 視覚障害者に対する社会的孤立や孤独感

  • 課題

    • 視覚障害者に対する正しい理解が社会に十分に普及していない

    • 視覚障害者に対する偏見や差別意識が根強く残っている

    • バリアフリーな社会環境が十分に整備されていない

  • 解決に向けた取り組み

    • 視覚障害者に対する理解を深めるための啓発活動

    • バリアフリーな社会環境の整備

    • 視覚障害者と健常者が共生できる社会の実現

  • 参考情報

視覚障害者に対する差別は、彼らの自尊心や生活の質を大きく損ないます。社会全体で視覚障害者への理解を深め、差別をなくしていくことが重要です。
この情報は、2024年6月時点のものです。法制度や社会情勢の変化により、将来的には内容が変更される可能性があります。最新の情報については、関係省庁や団体等のウェブサイト等をご確認ください。


2.2.2 差別の克服方法

視覚障害者が直面する差別を克服するためには、多角的なアプローチが必要です。具体的な取り組みと最新情報を紹介します。
1. 教育と啓発活動:正しい知識を広め、意識改革を推進
差別をなくすためには、社会全体の意識改革が不可欠です。教育機関や企業でのプログラムを通じて、視覚障害に関する正しい知識を広め、相互理解を深めることが重要です。
取り組み事例

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