12: 「社会の課題としての視覚障害:支援制度の現状と課題(4)」

12: 「社会の課題としての視覚障害:支援制度の現状と課題(3)」の続き

目次

7. 国際協力と未来の展望
7.1 国際協力の現状
7.1.1 視覚障害者支援の国際的取り組み
7.1.2 国際協力の課題と展望
7.2 未来の視覚障害者支援
7.2.1 AIと福祉の連携
7.2.2 未来の支援技術と社会
8. 統計と視覚障害者団体
8.1 視覚障害に関する統計
8.1.1 視覚障害者の人口統計
8.1.2 支援の利用状況
8.2 視覚障害者団体の役割
8.2.1 団体の活動と支援
8.2.2 団体の課題と未来


7. 国際協力と未来の展望

視覚障害者支援は、国内での取り組みだけでなく、国際的な連携も不可欠です。各国が協力することで、視覚障害者の生活の質向上に向けた知識や技術を共有し、支援体制を強化することができます。
本稿では、視覚障害者支援における国際協力の現状と、未来展望について詳細に考察します。最新の情報を基に、情報源を明記し、より充実した内容を提供します。

7.1 国際協力の現状

視覚障害者支援における国際協力は、政府、非政府組織(NGO)、国際機関などが連携して推進されています。以下では、主要な国際的取り組みを5つ紹介します。

7.1.1 視覚障害者支援の国際的取り組み

1. 世界保健機関(WHO)の取り組み
1.1 VISION 2020: The Right to Sight
WHOは、2020年までに主要な視覚障害原因を大幅に減少させることを目標とした「VISION 2020: The Right to Sight」キャンペーンを実施しました。このキャンペーンは、加盟国や国際機関、民間企業などが協力し、以下の活動を行いました。

  • トラコーマ撲滅プログラム: 世界中でトラコーマの予防と治療を推進し、2020年には感染者数を大幅に減少させました。

  • 白内障手術の普及: 低所得国における白内障手術の件数を増加させ、多くの人々の視力を回復させました。

  • 糖尿病網膜症の予防と治療: 糖尿病網膜症の早期発見・早期治療を促進し、失明を防ぐ取り組みを推進しました。

1.2 その他の取り組み
WHOは、VISION 2020以外にも、視覚障害の予防と治療に関する様々な取り組みを行っています。

  • 視覚障害に関するデータ収集・分析: 世界の視覚障害に関するデータを収集・分析し、政策立案に役立てています。

  • 視覚障害予防のための研究開発: 視覚障害の予防方法に関する研究開発を支援し、新しい治療法や予防法の開発を目指しています。

  • 視覚障害に関する啓発活動: 視覚障害に関する啓発活動を行い、視覚障害への理解と関心を高めています。

情報源:

2. 国際エージェンシーの活動
2.1 ライオンズクラブ国際協会
ライオンズクラブ国際協会は、世界最大の奉仕団体の一つであり、視覚障害者支援に積極的に取り組んでいます。同協会は、以下の活動を実施しています。

  • 視覚検査の実施: 世界中で無料の視覚検査を実施し、視覚障害を早期発見・早期治療につなげています。

  • 眼鏡の寄付: 低所得国の人々に眼鏡を寄付し、視力を回復させています。

  • 視力回復手術の支援: 視力回復手術を必要とする人々に経済的な支援を提供しています。

  • 盲導犬の育成・訓練: 盲導犬を育成・訓練し、視覚障害者に無償で提供しています。

2.2 Sightsavers
Sightsaversは、イギリスに本部を置く国際NGOであり、アフリカやアジアの発展途上国で視覚障害の予防と治療に取り組んでいます。同団体は、以下の活動を実施しています。

  • 地域住民向けの視覚障害予防プログラム: 地域住民向けの視覚障害予防プログラムを実施し、トラコーマや白内障などの予防に取り組んでいます。

  • 視覚障害者のための教育支援: 視覚障害者のための教育支援を行い、自立生活に必要な知識やスキルを身につけられるようサポートしています。

  • 視覚障害者のための職業訓練: 視覚障害者のための職業訓練を行い、経済的に自立できるようサポートしています。

  • 視覚障害者支援のための資金調達: 視覚障害者支援のための資金調達を行い、活動の継続を支援しています。

情報源:

3. 教育と訓練プログラムの実施
3.1 国際視覚障害者連盟(World Blind Union)
国際視覚障害者連盟は、世界中の視覚障害者団体を代表する組織であり、視覚障害者の教育機会拡大に取り組んでいます。同連盟は、以下の活動を実施しています。

  • インクルーシブ教育の推進: 視覚障害者が一般の学校に通えるよう、インクルーシブ教育の推進に取り組んでいます。

  • 視覚障害者向けの教育教材の開発: 視覚障害者向けの点字教材や音声教材などの開発を行っています。

  • 視覚障害者教員の育成: 視覚障害者教員の育成を行い、質の高い教育を提供できるようサポートしています。

3.2 その他の取り組み
視覚障害者の教育と訓練を支援するプログラムは、国際機関やNGOによって様々なものが実施されています。

  • 国際通貨基金(IMF): IMFは、視覚障害者の教育と訓練プログラムに資金援助を提供しています。

  • 世界銀行: 世界銀行は、視覚障害者のための学校建設や教師研修などのプロジェクトを実施しています。

  • 国連児童基金(UNICEF): UNICEFは、視覚障害児向けの早期介入プログラムや教育プログラムを実施しています。

情報源:

4. 技術支援とアクセスの向上
4.1 Daisy Consortium
Daisy Consortiumは、視覚障害者がデジタルコンテンツにアクセスできるようにするための技術規格を開発する国際的なコンソーシアムです。同コンソーシアムは、以下の活動を実施しています。

  • DAISY規格の開発・普及: DAISYと呼ばれる音声読み上げ用の標準フォーマットを開発し、普及活動を行っています。

  • 電子書籍リーダーの開発: 視覚障害者がDAISY規格の電子書籍を閲覧できる電子書籍リーダーを開発しています。

  • ウェブアクセシビリティの向上: 視覚障害者がウェブサイトをより利用しやすくするためのガイドラインを策定しています。

4.2 その他の取り組み
視覚障害者が情報にアクセスするための技術支援は、様々な機関によって進められています。

  • マイクロソフト: マイクロソフトは、視覚障害者向けのスクリーンリーダーソフト「Narrator」を開発・提供しています。

  • アップル: アップルは、視覚障害者向けのスクリーンリーダーソフト「VoiceOver」を開発・提供しています。

  • グーグル: グーグルは、視覚障害者向けのスクリーンリーダーソフト「TalkBack」を開発・提供しています。

情報源:

5. 視覚障害者の権利保護
5.1 障害者権利条約
2006年に採択された障害者権利条約は、視覚障害者を含むすべての障害者の権利を保護するための国際的な条約です。この条約は、以下の内容を定めています。

  • 差別禁止: 視覚障害者に対するあらゆる形態の差別を禁止しています。

  • 合理的配慮の義務: 政府や企業に対して、視覚障害者が平等に参加できるよう、合理的配慮を提供する義務を課しています。

  • アクセシビリティの確保: 視覚障害者が情報やサービスにアクセスできるようにするための措置を講じることを求めています。

5.2 その他の取り組み
視覚障害者の権利保護は、様々な国際機関やNGOによって推進されています。

  • 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR): OHCHRは、障害者権利条約の履行状況を監視し、各国に勧告や助言を行っています。

  • 世界障害者連盟(World Disability Alliance): 世界障害者連盟は、世界中の障害者団体を代表する組織であり、視覚障害者の権利擁護活動を行っています。

  • ヒューマンライツウォッチ: ヒューマンライツウォッチは、人権侵害を調査・報告し、視覚障害者の権利保護を訴えています。

情報源:

まとめ
視覚障害者支援における国際協力は、視覚障害者の生活の質向上と社会への参加促進に不可欠です。今後も、国際的な連携を強化し、様々な課題に取り組むことで、すべての人が平等に暮らせる社会を目指していくことが重要です。
※ 上記の文章は、2024年6月時点の情報に基づいています。
参考資料

その他


7.1.2 国際協力の課題と展望

視覚障害者支援における国際協力は、近年目覚ましい進歩を遂げてきました。しかし、依然として多くの課題が残されており、これらの課題を克服し、未来に向けた持続可能な支援体制を構築することが重要です。
1. 資金不足:持続可能な支援のための多様な資金調達
資金不足は、視覚障害者支援における国際協力の大きな課題の一つです。特に、発展途上国では、政府予算の制約や経済状況の悪化により、視覚障害者支援に必要な資金が十分に確保できないケースが多くあります。
この課題を克服するためには、政府、国際機関、民間企業、個人からの持続的な資金調達が不可欠です。従来の政府開発援助(ODA)に加え、民間企業による社会的責任投資(CSR)、クラウドファンディング、寄付など、多様な資金調達方法を組み合わせることが重要です。
参考事例

  • 日本国際協力機構(JICA):視覚障害者向けの教育・職業訓練プログラムを実施するために、民間企業と連携した資金調達プロジェクトを実施。

  • 国連児童基金(UNICEF):視覚障害のある子供たちへの教育支援プログラムを運営するために、クラウドファンディングを活用。

2. 技術格差:最新の支援技術の普及と能力開発
先進国と発展途上国との間には、視覚障害者支援における技術格差が存在します。先進国では、点字ディスプレイ、音声読み上げソフト、AIを活用した支援機器など、最新の支援技術が利用されていますが、発展途上国ではこれらの技術の普及が遅れている状況です。
この技術格差を埋めるためには、以下の取り組みが必要です。

  • 最新の支援技術の普及: 先進国で開発された支援技術を、発展途上国へ導入するための支援が必要。

  • 能力開発: 視覚障害者支援に関わる人材の能力開発、特に、最新技術の利用に関する研修やトレーニングの充実が必要。

  • 地域に適した技術開発: 地域のニーズに合致した、安価で使いやすい支援技術の開発も重要。

参考事例

  • 世界保健機関(WHO):発展途上国における視覚障害者支援のための技術移転プロジェクトを実施。

  • 国際視覚障害者図書館(IBL):オンライン教材や学習プラットフォームを通じて、発展途上国の子どもたちに視覚障害者向けの教育を提供。

3. 文化的・社会的障壁:理解と啓発活動の推進
多くの国では、視覚障害者に対する偏見や差別が根強く残っており、これが視覚障害者が教育や雇用、社会参加の機会を得ることを阻害しています。
この課題を克服するためには、視覚障害に対する理解と啓発活動の推進が不可欠です。学校教育やメディアを通じて、視覚障害に関する正しい知識を広め、偏見や差別をなくすための取り組みが必要です。
参考事例

  • 国連障害者権利条約:視覚障害者を含むすべての障害者の権利を保障するための条約。

  • 日本盲人会連合会:国内外の視覚障害者支援団体と連携した啓発活動を実施。

4. 法的枠組みの不足:権利保護のための法整備
視覚障害者の権利を保護するための法的枠組みが不十分な国も多いです。障害者権利条約を批准していない国や、国内法で視覚障害者の権利が十分に保障されていない国では、視覚障害者が適切な支援を受けられないことがあります。
この課題を克服するためには、以下の取り組みが必要です。

  • 障害者権利条約の批准・国内法への反映: すべての国が障害者権利条約を批准し、国内法に反映することが重要。

  • 視覚障害者に関する差別を禁止する法律の制定: 視覚障害者に対する差別を禁止する法律の制定が必要。

  • 視覚障害者向けの合理的配慮の義務化: 公共施設やサービスにおいて、視覚障害者向けの合理的配慮を義務化することが重要。

参考事例

  • 外務省:障害者権利条約に関する日本の取り組みを紹介。

  • 国立障害者総合研究所:海外における障害者に関する法制度・政策に関する調査研究を実施。

5. 持続可能な開発目標(SDGs)との連携:すべての人が取り残されない社会の実現
視覚障害者支援を持続可能な開発目標(SDGs)と連携させることも重要です。特に、「誰一人取り残さない」というSDGsの理念に基づき、視覚障害者が社会の一員として完全に参加できるようにするための取り組みが求められます。
具体的には、以下の目標との連携が重要です。

  • 目標1:貧困を撲滅する:視覚障害者は、貧困層に陥りやすいという課題があります。貧困削減に向けた取り組みを通じて、視覚障害者の生活水準の向上を図ることが重要です。

  • 目標4:質の高い包括的かつ公平な教育をすべての人に確保し、すべての人生の段階における学習機会を促進する:視覚障害のある子供たちにとって、教育を受ける機会は限られています。インクルーシブ教育の推進や、視覚障害者向けの教材や支援体制の整備が必要となります。

  • 目標8:すべての人々に、包摂的かつ持続可能な経済成長、完全かつ生産的な雇用、及びすべての人にとってのディーセントな仕事(働きがいのある仕事)を促進する:視覚障害者が経済活動に参加できるよう、職業訓練や就労支援の充実が必要となります。

  • 目標10:すべての人々の間で不平等を減らし、あらゆる形態の差別を撤廃するために努力する:視覚障害者に対する差別をなくし、すべての人が平等に扱われる社会の実現を目指します。

  • 目標11:包摂的で安全で強靭で持続可能な都市及び人間居住区を作ること:視覚障害者が安全かつ自由に都市生活を送れるよう、バリアフリー化や情報保障の充実を進める必要があります。

参考事例

  • 国連開発計画(UNDP):視覚障害者向けの就労支援プログラムを実施。

  • 世界銀行:視覚障害者向けの教育支援プログラムに融資。

展望:技術革新、グローバルパートナーシップ、教育、資金調達の多様化
視覚障害者支援における国際協力の未来には、多くの希望があります。以下のような展望が描かれます。

  • 技術革新の活用:AIやIoT技術を活用した支援機器の開発:AIやIoT技術を活用した、より高度で使いやすい支援機器の開発が期待されます。例えば、AIを活用した音声認識技術や、視覚障害者が周囲の状況を把握できるスマートグラスなどが開発されています。

  • グローバルパートナーシップの強化:国際機関、民間企業、NGOの連携:国際機関、民間企業、NGOが連携し、視覚障害者支援に取り組むことが重要です。それぞれの組織が持つ強みを活かし、より効果的な支援体制を構築する必要があります。

  • 教育と啓発活動の強化:偏見や差別の解消:視覚障害に対する理解と啓発活動の強化を通じて、偏見や差別を解消し、視覚障害者が社会の一員として受け入れられる環境を作ることが重要です。

  • 資金調達の多様化:持続可能な支援体制の構築:政府、国際機関、民間企業、個人からの資金調達に加え、クラウドファンディングや企業の社会的責任(CSR)活動など、多様な資金調達方法を組み合わせることで、持続可能な支援体制を構築することが重要です。

これらの課題を克服し、未来に向けて持続可能な支援体制を構築することが、視覚障害者がより良い生活を送るための鍵となります。
情報源

注記

  • 上記の情報は、2024年6月時点のものです。

  • 国際協力の状況は、常に変化しており、最新の情報を入手することが重要です。


7.2 未来の視覚障害者支援

AI(人工知能)やIoTなどの最新技術の活用と、福祉サービスとの連携は、視覚障害者支援の未来を大きく進展させる鍵となります。これらの技術革新は、視覚障害者の生活の質 (QOL) を向上させ、より自立した生活を実現する可能性を秘めています。

7.2.1 AIと福祉の連携

1. AI搭載の視覚補助デバイス
AI搭載の視覚補助デバイスは、カメラとAIを組み合わせることで、視覚情報をリアルタイムで音声に変換し、周囲の状況を視覚障害者に伝えます。従来の白杖や誘導犬に比べて、以下の利点があります。

  • より詳細な情報提供: カメラで捉えた情報をAIが分析し、物体や人物の詳細な情報を音声で伝えます。例えば、歩行者の性別や年齢、表情、服装などを認識し、より安全な歩行をサポートします。

  • ハンズフリー操作: 白杖や誘導犬と異なり、手を自由に使えるため、スマートフォン操作や食事など、他の活動と並行して利用することができます。

  • 学習機能: 使用者の行動パターンや環境を学習し、より的確な情報を提供する機能を搭載したデバイスも開発されています。

例: OrCam MyEye 2は、AI技術を活用した視覚補助デバイスです。周囲の物体や文字を認識し、音声で読み上げたり、顔認識、製品識別、バーコードスキャンなどの機能を備えています。さらに、周囲の音声を認識して要約する機能や、道案内機能なども搭載されており、視覚障害者の生活を多方面からサポートします。
2. 音声アシスタントの進化
Amazon AlexaやGoogle AssistantなどのAI音声アシスタントは、視覚障害者が日常生活における様々なタスクを効率的にこなすための強力なツールとなります。音声コマンドで以下のような操作が可能になります。

  • 情報検索: インターネット上の情報やニュース、天気予報などを音声で取得することができます。

  • スケジュール管理: スケジュール管理アプリと連携し、予定の確認や追加、編集を行うことができます。

  • 家電操作: スマートホーム対応の家電製品であれば、音声で操作することができます。

  • オンラインショッピング: 音声で商品検索を行い、買い物をすることができます。

  • コミュニケーション: 音声通話やメッセージングアプリを利用して、家族や友人とコミュニケーションを取ることができます。

これらの機能により、視覚障害者は情報収集やコミュニケーション、買い物などの日常生活における様々なタスクを、より自立的に行うことが可能になります。
3. AIによる画像認識技術
AIの画像認識技術は、スマートフォンアプリを通じて、周囲の物体を識別し、音声で説明します。従来の音声読み上げ機能と比べて、以下の利点があります。

  • より多くの物体を識別: AIは、日々学習と進化を続けており、認識できる物体の種類がどんどん増えています。

  • より詳細な説明: 物体だけでなく、その属性や状況なども音声で説明することができます。例えば、食品であればカロリーや原材料情報、書籍であればタイトルや著者情報などを音声で読み上げることができます。

  • 複数物体同時認識: 複数の物体を同時に認識し、それぞれを区別して説明することができます。

これらの機能により、視覚障害者は周囲の状況をより詳細に理解することができ、より安全かつ自由度の高い行動が可能になります。
例: Seeing AIは、Microsoftが提供するアプリです。カメラを通じて周囲の物体やテキストを認識し、音声で説明します。さらに、人物の顔認識や、手書き文字の読み上げ機能なども搭載されており、視覚障害者の生活を様々な場面でサポートします。
4. AIによる予測と診断
医療分野におけるAI技術の進展は、視覚障害の早期発見と治療だけでなく、治療効果の予測や個別化医療の実現にも貢献することが期待されています。
具体例:

  • 糖尿病網膜症の治療効果予測: AIは、患者の眼底画像や病歴データに基づいて、糖尿病網膜症の治療効果を予測することができます。これにより、個々の患者に最適な治療法を選択することが可能となり、治療効果の向上に繋げることができます。

  • 緑内障の個別化治療: AIは、患者のOCT画像や視野検査データに基づいて、緑内障の進行度を個別に評価し、最適な治療法を提案することができます。これにより、患者のQOLを最大限に維持することが可能となります。

  • 眼科画像診断支援ツールの開発: AIを活用した眼科画像診断支援ツールは、眼科医の診断精度向上と診断時間の短縮に貢献します。これにより、より多くの患者に迅速かつ適切な診断を提供することが可能となります。

5. ソーシャルロボットの導入
AI搭載のソーシャルロボットは、視覚障害者の生活をサポートする新たなツールとして注目されています。従来のロボットと異なり、以下のような特徴を持っています。

  • 自然なコミュニケーション: AIは、音声認識や自然言語処理技術を活用することで、視覚障害者と自然なコミュニケーションを取ることができます。

  • 感情認識: AIは、視覚障害者の表情や声のトーンなどを分析することで、感情を認識することができます。これにより、より適切なサポートを提供することが可能となります。

  • 学習機能: AIは、視覚障害者とのコミュニケーションや行動パターンを学習することで、より個別化されたサポートを提供することができます。

例: Pepperは、ソフトバンクロボティクス株式会社が開発したソーシャルロボットです。音声認識や自然言語処理技術を活用することで、視覚障害者と会話したり、道案内をしたり、必要な情報を提供することができます。さらに、感情認識機能を搭載しており、視覚障害者の感情を理解し、寄り添うことができます。
課題と展望
AIと福祉の連携による視覚障害者支援は、大きな可能性を秘めていますが、同時に以下のような課題も存在します。

  • 倫理的な課題: AI技術の利用には、プライバシー保護や偏見の問題など、倫理的な課題が伴います。これらの課題を解決し、倫理的なAI技術の開発と利用が求められます。

  • デジタルデバイド: インターネット環境や情報機器の利用スキルに格差がある場合、AI技術の恩恵を受けられない人が生まれてしまいます。デジタルデバイドを解消するための取り組みが必要です。

  • コスト: AI技術を活用したソリューションは、導入や運用にコストがかかります。コスト負担を軽減するための仕組みづくりが必要です。

これらの課題を克服し、AI技術と福祉サービスの連携をさらに発展させることで、視覚障害者一人ひとりのニーズに合わせた、より質の高い支援を提供することが可能となるでしょう。
情報源

  • 上記の情報は、2024年6月時点のものです。

  • 情報源は、信頼できる機関や団体のものを使用しています。

  • 情報の内容は、最新の情報に基づいていますが、今後さらに進展する可能性があります。


7.2.2 未来の支援技術と社会

1. インターネット・オブ・シングズ(IoT)とスマートシティ
IoT技術の発展により、視覚障害者が安全かつ効率的に生活できるスマートシティの実現が加速しています。具体的には、音声案内システム、自動運転車、IoTデバイスを活用したバリアフリー経路の提供などが進められています。
スマート交通システム

情報源

2. ウェアラブルデバイスの普及
視覚障害者向けのウェアラブルデバイスは、GPS、カメラ、音声認識技術などを組み合わせることで、周囲の状況を把握しやすくする機能が進化しています。
スマートグラス

  • 視覚障害者向けのスマートグラスは、カメラで捉えた映像をリアルタイムで解析し、音声で情報を提供します。これにより、情報収集や周囲の状況把握が容易になり、自立的な行動を支援します。

情報源

3. 人工知能(AI)と機械学習
AIと機械学習の進展は、視覚障害者支援に新たな可能性をもたらしています。音声認識、自然言語処理、画像認識などの技術を活用することで、日常生活における様々な課題解決を支援します。
音声認識と自然言語処理

情報源

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