見出し画像

ICUは外国語大学ではない


ICUは語学に堪能な人を輩出する外国語大学であるかのように言われることがあります。「ICU出身なのに英語ができないなんて有り得ない」「英語で卒論を書かないとICUを卒業できない」このような書き込みは、SNS上で簡単に見つけることができます。ICUの授業が全て英語で行われるわけではないという記事を過去に書きましたが、ICUは語学スクールでもなければ英語話者養成所でもありません。日英両語を使って勉強する大学であり、外国語学習をするための場所ではありません。

ICUでは何もかも英語で行われるという誤解が、英語で卒業論文を書かなければICUを卒業できないという勘違いを生んだのだと思います。卒論は日本語でも英語でも書くことが可能です。ICUは日英両語を公用語としています。英語だけを重視して日本語を排除したり、その逆をしたりしてはいけないというのが大学の方針です。実際には、教職課程が日本語話者のみを対象としていたり、大学からの情報が日本語の方が充実していたりするので、日本語が不得意な学生にとって不利なことはたくさんあります。英語も日本語も大切にしようとする意識は他のどの大学よりも高いものの、日本の大学であるため、どちらかというと日本語中心になっているのがICUの実情です。

ICUが外国語大学でないのなら、学生たちは一体何を勉強しているのか。ICUでは何が学べるのか。こう聞かれれば、人類学、数学、化学、法学、情報科学、哲学など色々学べるという無難な回答を普通はしています。ICUは様々な領域の勉強ができる大学です。しかし、学生がICUで何を学んでいるかは大して重要ではありません。内田樹は、学ぶということは脳の「中身(コンテンツ)」が増えることではなく、「入れ物(コンテナ)」自体が変わることだと言っています。ICUでの学びの本質も、単に知識を増やしたり英語に堪能になったりすることではなく、入学前と後では全く違う人間に変わることだと思います。試験前に必死に覚えたことや授業の細かい内容は、数週間も経てば忘れます。しかし、授業を通して身に着けた考え方やテキストに向かう姿勢は、簡単にはなくなりません。ICUの授業では、当たり前だと思っている常識や固定観念を問い直させられる機会がたくさんあります。そういった経験を繰り返すうちに、多くの学生は、ICUに入る前とは全く異なる人間に変わっていくのです。

ICUの学びの本質は、外国語学習でもなければ、特定の学問分野の知識を身に着けることでもありません。英語学習をしたい人にはお勧めしない大学ですが、英語がそれほど好きではなくても、考えることが好きで学ぶ意欲がある人にはお勧めの大学です。ICUは学生数が少なく知名度も低いため、どんな大学なのか知ることが難しいと思います。この記事が少しでもICUについて知る助けになれば嬉しいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?