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【デイケアのお風呂場から】下着を履いていないという日常


お風呂場の介護職になって、よくよくわかった。

高齢者が下着を履いていない、はよくあること。
そして多くの場合、すぐにどうにかできることではないということ。

認知症はある。
でも、何も分からずに履いてないのではない。

そして、本人だけの事情ではない。

例えば、
ご本人としてはこんなこと。

履いたつもりだった。
いつもの所に無くて仕方なく。
汚れたから外した。

いつものように2枚紙パンツを履いてると思い、自分で中に履いた一枚だけをトイレで捨てたつもりだった、
ら、そもそも一枚しか履いてなかった。
などなど。


ここへ掛け算で加わるおうちの事情は、複雑なことが多い。

身体的に限界で、下着を履いたかまで見届けられない。
金銭的に、限界。
親子関係のもつれ。
異性の親の下着を買いに行けない。
親が失禁することを受け入れられない。
などなど。

履かずにくる人や、
履いてるけど溢れ出てくる人は
ほぼ毎回決まっている。

正直言うとお風呂場を始めた頃、
関わる専門職が「ちゃんとしていない」からだと思った。

多職種に話を聞くうちに、
専門職のアドバイスを聞き入れない家族のせいだと思った時期もある。

でも、どちらでもない。

2年過ぎて分かったことは、
「家族の状態が下着に現れる」こと。
だからこそ、
こじれた下着にまつわることは

一発逆転!
スッキリ解決!

とはならないということ。
それを目標にしても、誰かを責めるだけになること。

すでに何十年かの積み重ねでこじれた親子関係のうえで、

あの父の あの母の下着と向き合う、
なんてことは専門職のアドバイスでどうかなるものでは無い。

一発逆転はないのなら、
どうしているか。

ケアマネや介護職は、
離れず責めず、
ご家族に伝えるし、待つし、出てくる言葉を聞いている。

私のお手本は
お風呂場の先輩スタッフの
「そういう日もあるね」
「大したことじゃないよ」
のスタンス。

ご本人の「誰かが私に水をかけた」という言葉を、否定しないこと。

汚れた服を脱いで、洗って、
あったかいお風呂に入れること。

そんなわけで、
下着を履いていない、は
ままあることです。

さぁ、お風呂に入ろう。

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