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【デイケアのお風呂場から】腹が立つこと


腹が立ちながらも人目を気にして書けなかったことを、書きます。
感情にまかせてますゆえ、細かな数字が施設により違うとかは置いていきます。


「お風呂一回   ¥400」

銭湯ではない。

身体、環境、様々な理由で「おうちのお風呂」に入れない方をプロが介助して入る「お風呂」だ。

お体の状態によっては、お一人に3人のスタッフで介助もする。
介助のレベルもグラデーション。
歩いて入る方、抱え上げて入る方、本来なら車椅子レベルだが本人の強い希望で濡れた床を歩いて入るため厳重に介助が必要な方、などなど。

着替えはAからBに変えるのではない。パンツだけ変える、洗濯された3枚目がある時だけいちばん下の肌着を変える、本人が入れた大量の服から一緒に確認して決める、汚れていたら変えるその際は家族に確認する、失禁で下着が汚れたことを家族に知られたくないから入浴の間に汚れを手洗いしてドライヤーで乾かして間に合わせるなどなど。

お客様の数だけ、お風呂の温度も入り方も着替えも薬も違う。

それを全て対応しつつ、
「その人らしさ」を守りながら「お風呂に入る」を叶えているスタッフが手伝うお風呂が、

「一回 ¥400」
(多くの方は1割負担なのでお支払いは40円)

介護保険で提供するサービスの値段を決めるのは 国  。

介護保険サービスを商品と捉えると、その値段がどんどん下げられたら、お店である施設が存続するには、「薄利多売」するしかない。

限られた時間で、限られた人手で。
お客様の人数だけが増えれば、現場は「その人らしさ」を守る余裕が無くなり、
「誰も怪我をせずに終えること」
を目標にするのが精一杯になる。
実際、そんな日はもう何度もある。

慌てるスタッフが怪我をすることもある。1人で何人も見守りながら介助している最中に他で歩き出す人もいれば濡れた床、車椅子で混み合う中で駆け出すから。

お風呂は、清潔のためだけじゃない。
そして、お風呂に臨むことは人それぞれ。

その人らしさを守りながら、お風呂に入るを叶えてあげたいプロがやっているのだ。
「安全第一」を目標にするしかないなんて、そんな悲しいことをさせないでくれ。

私の手は、今日も数えきれないほど湯の温度を確かめ、下着を足に通し、背中に薬を塗った。

50キロのお米は担ぐ気になれないが、50キロの高齢者を担ぐことは喜びだ。

けれど、介護保険サービスの値段を決める人たちに、「やる気」や「やりがい」をあてにされるのは腹立たしい。

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