偶然今日がその日だった
今日の日付は六月十九日。
太宰治の誕生日であり、彼の遺体が玉川上水から発見された桜桃忌の日である。
オタ活がメインのアカウントでは、今日という日を祝うイラストや沢山の供物に囲まれた太宰の墓の写真がぞろぞろと流れてくる日だ。基本どれも赤い。今居る界隈のせいだろうが、中学時代お世話になった茶色い方の太宰はあまり流れてこなかった。
ちなみにヘッダーのさくらんぼは太宰の命日とされる13日あたりに食べた頂き物のお高そうなさくらんぼである。甘酸っぱくてめちゃくちゃおいしかった。
そんな日から、私はnoteを書き始めることにした。
前から他人のnoteを読むたび、自分もこんな風に思考を文字に起こしたりエッセイを書いたりしたいなあと思ってはいた。かつては小説サイトに夢小説なんかをパカスカ書いて出し書いて出ししていた訳だし、元々文字で表現するのは好きなタチだ。まあ思うだけで実行はしていなかったわけだが。
きっと始めるきっかけはなんでもよかったのだと思う。
ただ、始めたいと思うまでには一定のラインに達するまでの蓄積が必要で、その最後のひと押しがあったのがたまたま今日という日だったのだ。
さて、その「最後のひと押し」の話だが。
それはある友人のnoteを読んだことだった。
半年ほど前だろうか、執筆中の冒頭部分を読ませてもらった文章だ。
食らえ火炎瓶 お前も苦しめなどと言いながらLINEのトーク画面に投げられた帯のような文章(すべて見るの表示が出ていた)を読んだ記憶がある。その時点の私は投げ渡された2000字ほどの冒頭部分ではそこまでダメージを受けなかったのだが、今日たまたま友人が引っ張り出してきた完成版のnoteがTLに流れてきたのを見つけ、たまたま気が向いてそのリンクを踏んだのである。
その結果がこれだ。見事に刺さった。おめでとう友人、あの時の宣言通りお前の文章で無事に薙ぎ倒されています。
なお原因のnoteはここには貼らないでおく。
公開しているとは言え友人がそのnoteのリンクを流していたのは鍵垢かLINEでのことだったはずだし、そもそも文章の殺傷能力が高すぎる。友人がこのnoteを読んで投擲せよと言ってきたら追記かなんかして貼ろうと思うが、投擲命令が出ない限り私からは拡散しないので気合いで見つけてほしい。件のnoteを読むなら自己責任でお願いします。
正直言って、あのnoteの内容には同意しかない。
友人ほどではないにしろ、私も未だに幻となった大会やかつての現役時代に囚われている。今だってこのnoteを書きながら、現役の頃読んだ原稿のイメソンを聴いて感傷に浸っている。
あの大会の当日、この曲を聴きながら朝早く電車に乗って、月と名の付く駅に向かっていたのだ。部員達や顧問の先生方からもらった応援メッセージの書かれた付箋を眺めながら、自分に与えられた1分半がやってくるのを今か今かと心待ちにして。
今の私も朝早く電車に乗って、月と名の付く駅に向かっている。ただ、見つめているのはスマホの画面で、文章を書き込んでいるのは私で、電車の向かう先は学生生活という変わり映えのしない日常なのだけれど。
あーあ。今目の前に広がる青々とした山が、トンネルを抜けて目を開けたら朝日を受けてきらめく街並みに変わっていれば良いのになあ。
一見前に進んでいるように見えるけれど、文章を書きながらそんなことを考えてしまうくらいには割り切れていないのだ。
割り切れていないからこそ私は合唱団に所属したし、教職という道を選んでいる。
あの日の無念が私をこの道へと駆り立てている。
この話はきっと長くなるのでまた別の機会に話せたらいいなと思う。具体的には、来月の終わり頃とかに。
私達の生きるこの世界は、沢山の偶然で成り立っていると思う。
太宰の遺体が彼の誕生日に見つかったのも狙ったわけではなくて、きっと偶然だったのだろう。
私の身の回りで起こることも同じだ。
最後の大会が感染症の流行で無くなったのも。
進学先が教員養成に強い学校だったのも。
その学校に全国で戦えるレベルの部活があったのも。
今日私がnoteを書き始めたのも。
偶然、その時に起こったこと。
そう思うからこそこの偶然を大切にしたい。
全ては必然であり奇跡は起こるべくして起こるのだと言う人も中にはいるけれど、私は必然ではなく偶然の積み重ねなのだと思わないとやっていられないのだ。
仮に必然で成り立っていたとして、自分の推しが、友人が、あの瞬間必然的に死を迎えたなんて考えたくないから。
だからこのnoteも、偶然気が向いたその時に書こうと思う。偶然思い立った、思い出したその瞬間を切り取って重ねていく、スクラップブックのような場所にしたい。そしてなんか良いなとかそれなと思ったらいいねでもしてもらえたら嬉しい。
お互いの偶然がかちりとはまる時にでも、また遊びに来てください。
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