【宅録限定】どっちのマイクがいいの?
宅録をやっていくと必ずぶち当たるのがマイク問題。もっとざっくり言うと
ダイナミックマイク or コンデンサマイク
というわかりやすい対立(?)構図になりがち。
もちろん、それらが両方とも生産され続け使われ続けていることからわかると思うが、どちらが優れているというわけではない。というわけで、今回はスタジオにからずと言っていいほど用意されている2つのマイクを中心に比較というか違いを説明していきたい。
選手紹介
SM58
Shureのど定番で、スタジオやライブハウスなどありとあらゆるところで使われている。このマイクを知らない人間は音響関係ではいないと言っても過言ではない。ボーカルから楽器の録音(SM57という同系マイク)まで幅広く使われている。
SM58って色んなアルファベットが数字の後ろについているバージョンがあるけど、まぁ細かいことは無視してSM58として話を進める。
U87Ai
これもど定番。声を録音するスタジオでおいてないところってほとんどない。NEUMANNが誇るスタンダードなマイク。金額がお高いこともあって宅録で使っている人は少ないと思われるが、コンデンサマイクの代表として話を進めていく。
それにしてもどっちも画像が大きい・・・
基本的な違い
ダイナミックマイクとコンデンサマイクの1番の違いは電源にある。
コンデンサマイクはファンタム電源(+48Vって表記されることもある)が供給されていないと動作しないというわかりやすい部分。方やダイナミックマイクはそんなことを考えることもなく、差し込めば使える。
ファンタム電源が何かというのはこの際置いておいて、ファンタム電源を供給できる機器に繋がないとコンデンサマイクは使えないということだけ覚えておけばいい。具体的には「オーディオインターフェイス」、「マイクプリアンプ」、「ミキサー」などになる。
次によく言われるのが頑丈さ。
ダイナミックマイクはまぁ壊れない。落とそうが投げようが凹むことはあってもそんなに簡単には壊れないほど頑丈。一方コンデンサマイクはすぐに壊れるし、湿気で使えなくなることも多い。箱に入れておくのであればシリカゲル必須であり、スタジオなどでは防湿庫に入れて保管するアイテムだ。
どっちの方が性能がいいの?
まずは発表されているスペックを見てみよう。
SM58
■周波数特性:50Hz-15kHz
■出力インピーダンス:150Ω
U87Ai
■周波数特性:20Hz-20kHz
■出力インピーダンス:200Ω
ものすごくざっくり言うと
拾える音の幅 = 周波数特性
感度 = 出力インピーダンス
今の所はこう考えておおよそ間違いない。とりあえずの知識として。
この数字だけを比較すると、87の方が拾える音の幅が広く感度も高いということになる。そして、それは使えばわかるがただの事実だ。
「だったらコンデンサマイクの方が優秀じゃないか!」
と言いたいかもしれないが、そうとも言い切れない。
上に書いたが87は基本的に声をとるマイクなので、防音がしっかりした部屋で使われるし、大音量を録音することはほぼない。人間の声がどれだけ大きく張り上げても、ある程度限界はある。つまり、F1カーのようなもので、一般道路でも早いとは限らないわけだ。
上の数字を見てみるとわかるのだが、誤差の範囲に近いし、どっちにしても人間の声で使う周波数帯は余裕でカバーしている。必要にして十分であり壊れにくくてどのスタジオにでもあるレベルで定番と言われるマイクSM58。どっちが優秀という議論が実のところ成立していない。
どっちって比較が間違い
どっちも人の声を録音する能力に関しては十二分に合格点を叩き出している。その上で特性が違う。それだけの話なのだ。ちなみに、SM58というマイクで言うと、音は基本的にかなり素直。だからこそ様々なスタジオで使われているのだ。
ここまでの情報をもとに、どっちが優秀なのか、ってあまり意味がないでしょ?
そして宅録で考えると87の感度は高すぎる。シンプルに防音環境を作るのが大変になる。他にも感度が高すぎてポップガードの種類で多少音が変化するなど、取り扱いが気楽ではない部分もある。壊れたらドイツに送らないと修理してもらえないし。
58が感度が低いと言ってもお高いコンデンサマイクに比べればであって、適当なことをやればエアコンの音も入るし衣擦れも録音してしまう程度にちゃんと録音する能力はある。本当に録音能力はしっかりしているのだ。
個人的お勧め
これ、楽器などの録音に使うことが多いSM57というダイナミックマイク。
SM58と数字が一つ違うだけなんだけど、楽器の近くで録音してニュアンスまでちゃんと拾ってくれるいいアイテム。実はSM58の丸い部分(グリル)を外すとこれになる。「型番が違うんだから別もんだろwww」と言いたいかもしれないが、shureが公式に「SM58のグリルを外したものとSM57は変わらない」と発表しているのだ。
なので、宅録であればこの状態にポップガードをつけての録音が一番安定感があり、感度もちょうどよく、撮れる音もいいものだったりする。
ある種の裏技かもしれないけど、これは覚えておいてもらいたい。下手なコンデンサマイクよりもいい感じで録音できたりするのだ。
もちろん、声に特化している感度のコンデンサマイクというものは録音能力は基本的にダイナミックマイク全般よりは明らかに高い。とはいえ、感度が高いがゆえにマイクごとに異なる特性に振り回されることになりがち。このマイクだとしっくりくるんだけどこっちはこない、というのはコンデンサマイク複数持ちの人間にとってはあるあるネタなのだ。
できれば両方試してみてもらいたいが、個人的にはまずダイナミックで色々と試しながらの方がお財布にも優しいし、滅多なことがないと壊れないので気分的にも楽なんじゃないかと思っている。
教える立場なのでできる限りはワークショップなどで教えた内容を説明していこうかなと。地方の人やワークショップに事情があって参加できない人たちへのサポートが今後もやっていければと思っています。