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メラトニンのくすり

新発売

2020年6月23日(火)に発売されたばかりの、メラトニン受容体作動性入眠改善薬『メラトベル顆粒小児用0.2%(一般名:メラトニン)』の処方箋がはやくもやってきました。

Rp) メラトベル顆粒小児用0.2% 0.5g/1×就寝前

1g薬価は 207.80円なので、今回の1日薬価は103.90円となっています。メラトニン受容体アゴニストのロゼレム®(ラメルテオン)が1錠86.2円なので、同程度の薬価設定になっているかと思います。

メラトベル_パッケージ+ボトル

粉薬は特に苦みもなく「無味」で顆粒はサラサラしていますが、粉末状のものが混ざっており、その粉末の分包機への付着性は多少あったように感じました。

添付文書情報をPick Up

まずは服薬説明をするために添付文書をザーッと眺めた時に気になった部分をピックアップしてみました。

【禁忌】フルボキサミンマレイン酸塩を投与中の患者
【効能効果】6歳未満又は16歳以上の患者における有効性及び安全性は
確立していない =6歳~15歳が使用の対象
【用法及び用量】1日1回1mgを就寝前に経口投与。4mg上限
 ・就寝の直前に服用させること
 ・増量にあたっては1週間以上の間隔をあける
 ・本剤は食事と同時又は食直後の服用は避けること
  (Cmaxが低下するおそれ)
「健康成人6例を対象とした国内臨床試験(単回投与試験)において、メラトニン1mgを空腹時又は食後に単回経口投与したとき、空腹時に比べ食後投与時のCmaxは15.4%低下し、AUC0-10hは18.7%増加し、t1/2は11.9%増加した」
【相互作用】本剤は主としてCYP1A2により代謝される。その他、CYP1A1、CYP1B1及びCYP2C19が代謝に関与
・フルボキサミンマレイン酸塩:CYP1A2,2C19を阻害して血中濃度上昇(Cmax1074%,AUC1635%に増加;10倍以上)
・キノロン系抗菌薬(シプロフロキサシン)等:CYP1A2を阻害して血中濃度上昇(Cmax137%,AUC120%増加)
・カフェイン:CYP1A2の基質であり、メラトニンの代謝が抑制され血中濃度上昇
・喫煙:CYP1A2代謝酵素誘導で、メラトニンの血中濃度低下
【血中濃度】Tmax:0.21~0.32hr、T1/2:1.13~2.46hr
【バイオアベイラビリティ】2.5~33%
【作用機序】
メラトニンは視交叉上核のMT1及びMT2受容体を活性化することで視交叉上核の神経活動を調節し、睡眠の誘導作用を示す。
【取り扱い上の注意】
ボトル包装品を分包した場合は、遮光して保存すること

気になる部分だけでもごちゃごちゃになってしまいますが、重要な部分だけを抜粋しています。

ここまでで、自分が興味をもったのは、①メラトニンは内因性物質だけど今発売になったのはどうしてか?②カフェインとメラトニンの相互作用って面白いな③ロゼレム®(ラメルテオン)と同じくMT1、MT2に作用する薬だな ということでした。

メラトニン発売までの流れ

メラトベルの製品情報概要の情報を抜粋すると

2013年 臨床試験を開始
 ↓
2016年 神経発達症のうち自閉スペクトラム症を有する睡眠障害の小児を対象とした国内第Ⅱ/Ⅲ相試験(NPC-15-5試験)及び神経発達症を有する睡眠障害の小児を対象とした26週間投与の国内第Ⅲ相試験(NPC-15-6試験)を実施し、有効性と安全性が検証された。
 ↓
2019年1月 日本小児神経学会より厚生労働大臣宛に、「神経発達症に伴う睡眠障害に対するメラトニンの早期承認」についての要望書が提出された
 ↓
2019年4月 製造販売承認申請を行い
 ↓
2020年3月 「小児期の神経発達症に伴う入眠困難の改善」で承認

小児分野では待望の薬だったということですね。

カフェインとメラトニンの相互作用

カフェインをとると覚醒して眠れなくなるんじゃないの?

これが普通の感想です。代謝酵素だけでみると、カフェインと一緒にとるとメラトニンの血中濃度は上昇する。

Effect of Caffeine Intake 12 or 24 Hours Prior to Melatonin Intake and CYP1A2*1F Polymorphism on CYP1A2 Phenotyping by Melatonin.Basic Clin Pharmacol Toxicol,99(4):300-4,2006

この資料の中では、メラトニン摂取の24時間前のカフェイン摂取は影響を受けないが、12時間前のカフェイン摂取はメラトニン濃度を4倍にしたとされています。24時間カフェインを断っていれば確実に影響を受けないということになります。

ただしCYP1A2には遺伝子の表現型もあり、カフェインのメラトニン代謝抑制効果は、非喫煙者と*1F/*1F遺伝子型を持つ人で顕著であることが示されている資料もあります。

Effects of Caffeine Intake on the Pharmacokinetics of Melatonin, a Probe Drug for CYP1A2 Activity.Br J Clin Pharmacol,56(6):679-82,2003

こうみてくると、カフェインがメラトニンに及ぼす影響は、摂取時間によっても異なってくるし、人によっても異なってくると言えそうです。必ず影響を受けるとも限らないということですかね。

処方のきっかけ

処方のきっかけはなんだったのか? 今回話をしていたときに「アメリカではサプリメントとして販売されているのに日本ではどうしてないんだろう?と思ってました」という言葉が出てきました。

「あれ?メラトニンって海外ではサプリメントで発売されてるんだ?」

と思いました。知りませんでした。

試しに個人輸入サイトでみてみると

■ オオサカ堂
確かにたくさんメラトニンのサプリメントが出てきました。用量としては5mgからのものが多くあります。

無題

■ お薬なび
これで検索してもいくつか出てきました。

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確かにあります。

処方のきっかけは、この患者さんからの話だったのかもしれません。

話と説明をして、遮光袋に入れたお薬をお渡ししました。入眠効果が今後気になるところです。


ほか、睡眠薬について書いたブログもあるので、興味があればみてみてください。


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