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レジ前の試練

レジ前にレジ袋の束が置いてあって各自で一枚取るシステムのスーパーがたまにあるが、僕はこれが苦手だ。手が乾いているのかなんなのか、なかなか上手に一枚つかみ取ることができないのだ。どれだけ慎重にやっても、数枚まとめてつかんでしまう。

後ろに並んでいる人を意識すると徐々に焦ってきて、前の人の会計が済んでしまうと焦りはピークに達する。結局レジ袋を数枚まとめて引き出し、その中から一枚だけ取って残りを無理矢理束に戻すことになる。そうすると綺麗な束の上にぐしゃっと乱れた状態の袋が置かれることになってとても気持ち悪い。後ろの人も嫌だろうと思う。

ゾンビの集団が追ってきているが車のエンジンがなかなかかからないというシーンが映画でよくあるが、レジに並びつつ袋を取り出すときの心境はこれに近いものがある。心の中で「カモンカモンカモン…」とつぶやきながらやると臨場感がアップするが、実際にはそんな遊びを入れる余裕はない。

レジ前だと指先湿らし用のスポンジがないため、己の水分量のみで戦わなければならないのも辛い。大人の指先など基本的にカサついているものだ。皆不便に感じているはずなのだが、どうしているのだろうか。さすがに唾をつけるわけにはいかないし。指先を強く噛んで血を出すのも怖いし。涙ならまだいい気がするが、切羽詰まった状況では『MOTHER3』のことを思い出してもなかなか泣けない。

人間が指先を自在に湿らせることができるように進化するのは何代先のことなのだろうか。

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