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パイ食って思う

ちょっと前にネットで「グロテスクな見た目だけど味は美味しい」と話題になっていたパイを食べた。筒状に丸められた黒いパイ生地の中に毒々しい赤紫色のクリームが詰められており、さらにその上に同色の粒状の菓子が数十粒くっついているという、なるほどたしかにインパクトのある見た目だ。生物の卵に例えられていたのも納得である。

好感を持てるのは、このパイが自ら「気持ち悪い」とか「怖い」とか言われようとしていない(ように見える)ところだ。最近ははなからネットで弄られることを目的にしたような「いびつさ」を目にすることがとても増えた。それに対して人々が喜々として制作者の思惑通りのコメントを寄せている場面を見ると、リハーサルと寸分違わぬコメンテーターとアナウンサーのやりとりを見たときのようなむず痒い気分になる。だからこのパイの恐らく結果的に「そうなってしまった」気持ち悪さというのはとても潔く見えるし、仮に意図的だとすればかなり品があると言っていいのではないか。

「見た目に反してちゃんと美味しい」という触れ込みで買ったこのパイだが、結論から言うと味の方もなかなかにエキセントリックだった。強面だけどいい人だよと聞いていた人から普通に殴られた気分だ。中のクリームがブルーベリーガムみたいな味で、どうしても僕のような昭和生まれの旧型人間の感覚からするとパイ生地には合わないなあという気がする。イメージとしてはパイの中にねるねるねるねを入れて上にパフチョコをのせた感じ。アメリカの汚職警官とかが食べてそうだ。デスクの上で脚を組んで。

ただ、僕はあんまりだったが、この独特の癖が好きな人には熱狂的に支持される可能性もある気がする。広く浅くではなく狭いところに深く刺さる味、そしてこの見た目。しかもそれを大手チェーン店でやるというのはなかなかできることではない。地下ライブの人気者が芸風を変えずにゴールデンの番組に出ているみたいな、一番かっこいいパターンである。

もう一度買うかと言われたら絶対買わないが、陰ながら応援はしている。これからも頑張ってください!

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