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アウトレットと心の状態

アウトレットモールに行った。アウトレットモールには、なぜこれが企画会議を通過して商品化されたのか理解に苦しむデザインのプリントのTシャツや、絶望的に頭の悪いキャラクターを演じる際に着る衣装以外には使いようがなさそうな配色のセーターなど、売れ残るべくして売れ残ったような服がたくさん並んでいるものだ。

それはそれで楽しいのだが、こちらの心のコンディションによっては、到着して10分で「この敷地内に自分の欲しいものなど何もない」というモードになってしまい、すべての感情が無になることがある。

そうなってしまうと、もう何も楽しくない。それどころか服がゲシュタルト崩壊を起こしてただの布にしか見えなくなり、一体自分は何をしているのか、どうせ死んでしまうのに人はなぜ服を買うのか、そもそもなぜ生きるのか……と思考がおかしな方向に進んでしまうのだ。そして、一刻も早く家に帰りたくなるのである。

アウトレットモールに来ると、毎回その不安が頭をよぎるのだが、幸い今回は大丈夫だった。最初に入った店でいいなと思うものを見つけることができたのだ。そうなればもうこっちのものである。一着いいと思えた時点でアウトレットモールに来た意味があり、つまりはこの時間は無駄では無いと思えるのだ。その精神的余裕がさらに視野を広くして、いいなと思える服の守備範囲も広くなる。人はいずれ死ぬが、それでも服を買うから人間なのではないか!というモードに入れるのである。

そうして非常にポジティブな状態に入った僕は、機嫌良くモールを回ることができた。結局、最終的に買ったのは一番最初の店で気になっていた上着一着のみだったが、大いに満足だった。どのくらい満足かというと、紙袋のサイズが無駄に大きいのが全然気にならなかったくらいだ。

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