見出し画像

クールジャパン!

地下鉄から階段を上がったところの地上への出口のど真ん中でスーツのおじさん三人がたむろしていた。何か大きな取引でもまとまったのだろうか。三人は気分が高揚した様子で、互いに言葉を掛け合いながら肩を叩き、何度も何度も固い握手を交わしている。

お互いをねぎらうのは結構だが、ここは地下鉄の駅の出入り口のど真ん中だ。僕と同じくさっき地下鉄を降りた人々やこれから地下鉄に乗ろうという人々が絶対に通り抜ける必要のある場所である。いわゆる通行の要。ど真ん中に大人三人が突っ立っていたら邪魔でしょうがない。実際人の流れは明らかに悪くなっていた。出入りできるスペースが分断されているのだから当然だ。僕も仕方なく迂回して握手三人衆を避けながら地上に出た。

まったく、いい大人が三人も揃って何をやっているんだ。ちょっと場所をずらすという発想はなかったのか。自分たちの感情のみを優先して出口を塞ぎ、皆が外に出るのを邪魔しやがって。嫌な生え方をしたケツ毛みたいな奴らだな。そうだ。ケツ毛だケツ毛。あいつらはケツ毛だ。株式会社ケツ毛の営業担当だ。ケツ毛の契約でも結んだのか。ついでにケツ毛も結んじゃったりしてな。ほどけないよー、なんて言って。まあせいぜいケツ毛同士仲良くしてくれや。

腹が立ったのでそんなことを思いながら家路についた。ずいぶん口汚く罵倒しているように思えるかもしれないがそんなことはない。彼らをケツ毛に例えることは、同時に自らを糞に見立てることになるのだ。つまりこれは、非常に謙虚な姿勢による異議申し立てなのである。日本人らしい奥ゆかしさの表れと言えるだろう。

イエス!イッツクールジャパン!

サポートって、嬉しいものですね!