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「グ」に力を込めて

紅茶のティーバッグはティー「バッグ」なのだけど、パンツのTバックと発音が似すぎていて厄介だ。このことは散々言われてきているので今さら「似てるよな!」とはしゃぐ気にはならないし、わざわざ触れることでもない。だから「ティーバッグ」を発音する際には、紅茶の方ですよ、というのがわかるようにはっきりと「バッグ」と発音するのだが、違いを表せる部分が「グ」の濁音しかなく、そこを聞き逃されるとたちまち「Tバック」に近づいてしまっていらぬやり取りが増えてしまう。

なので、より違いを明確にするために「ティーパック」という言い方をしたこともあるのだが、「正しくない言い方をしている」という意識がどうしても出てきてしまい、それはそれでもやもやする。形状的にも「パック」でしっくりきているのだが、だからこそ世間的に「やってしまいがちな間違い」のジャンルに入っていて、指摘はされないまでも相手に心の中で「あの人、間違ってる」と思われる危険性があるのだ。

だったら最初から「ティーバッグ。紅茶のね。パンツじゃなくね」と説明すれば確実なのだが、わざわざそこまで言うのもくどい気がするし、ことさらに「Tバック」を意識しているみたいになるのも不本意だ。やはりできるだけわかりやすい発音で「ティーバッグ」と言うしかないのだろう。

そんなことを考えるとだんだん面倒になってきて、「ティーバッグ」と発音するのを避けるようになってくる。よほど重要な場面ならば言うだろうが、そんな場面はまずないのだ。こうしていつのまにか「ティーバッグ」という言葉がタブーのように扱われだし、そのまま放送禁止用語のようになってしまう……なんてこともあるかもしれない。「Tバック」はテレビで言っていいのに「ティーバッグ」はダメ、というよくわからない状態になる恐れがあるのだ。

だから我々は、誤解を恐れずにしっかりと「ティーバッグ」を発音していかなければならない。言葉を殺さないために。ティーバッ「グ」と。しっかりと力を込めて。


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