不器男の三ヶ日(「里」1月号_川島ぱんだ)


正岡子規に「鍋焼きうどんを7杯食べてうどん屋の親父に怒られる」という逸話がありまして。率直に言えば、今までホラ話だと疑ってかかっていたのですが、案外そうではないのかものしれない。と、「里」1月号を読みながら、思い直しました。

巻頭エッセイに川島ぱんだ氏の「不器男の三ヶ日」。正月らしい、ゆったりとした記事。芝不器男記念館に所蔵されている100年前の不器男の日記を読み解く内容で読み応え十分。

英語で書かれた、当時19歳の不器男の日記は正月からはじまる。その日記によれば、元日、雑煮の餅を13個食べ、また翌日に13個食べたそうで。

早逝であるがゆえに虚弱な印象を不器男に対して勝手に抱いていたのですが、健啖。勉強になりました。鍋焼きうどん7杯にも真実味が増してきます。(それにしても、あの頃の皆さんよく食べる……。)日記には続きもあるそうです。

好きな句をいくつか挙げます。(敬称略)

電気むさぼる花冷のドライヤー    中原久遠
白菜に似すぎた母の笑い顔      森貘郎
炭出すやごっぽり夜を引っ張って   川嶋ぱんだ
寒林や地に鳥たちの溜まりをり    黄土眠兎
ほろほろ鳥ほろほろ歩いてゐる二月  瀬戸正洋
冬天に熊野の鳶として老いぬ     谷口智行
訪ねゆく不在の庭を冬薔薇      藤井美琴
コンビニに寄り道をする小春かな   水内和子
コンビニのおでんの冬を大切に    上田信治
寒燈やあまねく独り居の団地     叶裕
雪を拂はば氷あらはれ十二月     島田牙城

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