人生の最後に食べたい物 第3話(完)

人生の最後に食べたい物は?

「定食こそ至高」
この思想は長く少年の心を支配していた。
しばらくは大学の近くにある、ご飯と味噌汁がおかわりし放題、そして日替わり定食があるお店に足繁く通っていた。
そして、そのお店のホイコーロー定食に関しては炒め具合と味付け具合からシェフのその日の体調を推察できるほどに食い尽くしたと思う。

・・・そういえば私のバイブルと言える美食漫画「美味しんぼ」でこんなシーンがあった。
ある中華料理店で働く料理人と、その中華料理店のオーナーで有名な美食家である男の娘が恋に落ち、そのオーナーになんとか結婚して独立することを認めてもらいたい。というストーリーだった。
その料理人はもともと腕は確かで料理店でも一目おかれた存在だったのだが、気が弱くプレッシャーに弱い性格。(「美味しんぼ」にはとにかくよく登場するタイプのキャラクターである)
結婚と独立を認めてもらうために料理の腕試しが行われる最中、オーナーはこう言った。

「チャーハンを作ってこい。」

その料理人は「え、いまさらそんな簡単な料理を?」と、戸惑いながらもチャーハンを作りオーナーに提供するのだが、そのチャーハンを食べて

「こんな料理を作るやつに娘はやれん!!」

と言い放つのだ。

そこからのストーリー展開はいつもの「美味しんぼ」節炸裂で、主人公の山岡さんに同じようにチャーハンを食べてもらい、どこが悪いか指摘してもらい改善する・・・という流れなのだが、結局チャーハンが認められなかった理由は

「自信のなさから来る、中華鍋の振りの弱さ」

だったのだ。腕は確かなのだが、元来の自信のなさとプレッシャーへの弱さから中華鍋の振りが弱くなってしまい、ことに炒め物の味が落ちてしまっていたのだ。

・・・
この話を見て私は一つ学んだ。

料理の味とは作り手の精神状態に左右されるものだ

という事である。

話は戻るが

そういう経験からその定食屋でも、ホイコーローのキャベツが炒めすぎているときは「なんか考え事でもあるのかな・・・」とか
ホイコーローの味付けが濃いときには「なんか嫌なことあったのかな・・・」などと妄想していた。

・・・・
そんな絶賛ホイコーロー野郎だった少年に、ある一つの、とてもとても重大な出会いが訪れる。

それは

「原付きバイク」

との出会いである。

ココロオークションの二代目ギタリストから格安で譲ってもらった物なのだが、原付きバイクを手に入れたことによって少年の生活範囲は格段に広域化する。

それまでは電車に乗っていかないと行けないところも原付きで気軽に行けるようになったのだ。当時はバンドの練習スタジオにも原付きで通っていた。

原付きがあればどこにでも行ける

バイクと道があればどこまでも行ける
(藤井フミヤさんが同じことを言ってた気がする)

そしてそんな少年がある事実に気づくまで時間はそれほどかからなかった。

「原付きあったらケンタッキー買いにいけるやん」

当時住んでいる場所から原付きなら片道15分ほどで行ける場所にケンタッキーがあったのだ。

今まで少年とケンタッキーの間を引き裂いていた2つの’距離’のうち、物理的な距離を原付きバイクが繋いでくれたのだ。

・・・

初めて原付きバイクで最寄りのケンタッキーに到着した時の事はよく覚えている

ブンブーン!

少年「おい、急に呼び出してどこに連れて行こうってんだよ!」

原付バイク「まぁまぁ!黙ってついてこいよ!!15分くらいで着くからさ!」

少年「ったく、なんだよもう〜!」

〜15分後〜

ブーン・・・・

少年「やっと着いたか・・・!ったく、ここどこだよ・・・って!!!ここって!!!??」

原付きバイク「そうだ。ケンタッキー〇〇店だ。」

少年「おい!そんなの誰も頼んでねーぞ!!」

原付きバイク「こんな所に来てまで、つまんねー見栄を張ってんじゃねーよ。隠してたってバレバレなんだよお前っ!顔に書いてるぞ「定食よりもケンタッキーが食べたいって」よぉ!」

少年「な、なんだよそれ!勝手な思い込みでおせっかいしてんじゃねーよ!オレはもうケンタッキーの事なんか忘れちまったんだよ!!」

原付バイク「プー!!!(クラクションの音)うだうだ言ってねーで早く行けよ。俺は帰りのガソリン入れに行くからさ。あとはお前たち二人の問題だ。」

少年「原付きバイク・・・」

ブーン!!

・・・

こうして少年とケンタッキーは2度目の再会を果たしたのだ・・・!

もう離れ離れにならない。原付きバイクが繋いでくれた。

たくさん浮気をしてきたけど、でもいつでも心の片隅にはケンタッキーがいた!!

これからはずっとケンタッキーと一緒だ!!!

少しでもお得に食べられるようにPontaカードに加入!

クーポンも毎週チェック!

専用アプリもインストール!

ケンタッキーと少年の物語はこれからも続く‥!!!

‥‥‥
これを読んでケンタッキーを食べたくなった方へ

ケンタッキーのチキンは全部で5種類あります。
「キール」と呼ばれている胸肉の部位と「リブ」と呼ばれているあばらの部分のチキンは結構パサパサしてたり、猛烈に食べにくかったり、これだけを食べちゃうとちょっと味気ないし「ケンタッキーべつに美味くないじゃん」ってなっちゃいます。

ですが、このタンパクな2部位は他の脂っこい3部位と一緒に食べるとめちゃくちゃ美味いです。

脂分が多い部位はジューシーさを楽しめる反面、少し重たく感じたり、肉汁のせいでハーブの香りが薄まりがちです。
その点、タンパクな2部位は多少パサパサしているので、衣やハーブの香りを存分に楽しむ事ができます。

なので、ケンタッキーでチキンを頼むときは是非

「3本以上買う」

を実践していただきたい。
部位を指定して購入する事はできないのですが、5本以内の購入なら部位が被って入れられる事は'ほぼ'ありません。
なので3本以上買う事によって、バランスの良いラインナップになり、ケンタッキーをより楽しむ事ができるのです。

最後に付録として各部位毎のパラメーター(主観)を記してこの連載を終わりたいと思います。

さらばです。

ーーーーーーー
ケンタッキー5人の戦士達

・ドラム(脚の肉)
脂感 ★★★★☆
肉感 ★★★☆☆
エンタメ度 ★★☆☆☆

脂と肉のバランスが良く、他の部位にはない旨味がある。肉感が少ない場合もあるが、味は安定している。

・リブ(あばらの肉)
脂感 ★★☆☆☆
肉感 ★★☆☆☆
エンタメ度 ★★★★★

脂分は控えめで、細かい肋骨が多数付いている。骨を一本一本しゃぶるエンタメ性はピカイチだが、実際に食べられる部位は少なめ。ただ、パリッとした皮の面積は1番大きい。

・キール(胸肉)
脂感 ★☆☆☆☆
肉感 ★★★☆☆
エンタメ度 ★★★★☆

胸肉なので、かなりタンパク。この部位の味でその店の仕込みの丁寧さ、その日の鶏肉の状態がわかる。脂が多い部位を食べた後に食べるのがオススメ。軟骨を食べられるエンタメ性を忘れてはならない。

・ウイング(手羽の肉)
脂感 ★★★☆☆
肉感 ★★☆☆☆
エンタメ度 ★☆☆☆☆

全ピースの中で1番のバランス感。脂分とタンパクな肉が、1つの中で共存している。著者はこのピースが1番お気に入りである。ただ、全ピース中で1番小さい。

・サイ(お尻の肉)
脂感 ★★★★★
肉感 ★★★★★
エンタメ度 ★★☆☆☆

圧倒的な脂。食べられる部分も1番多い。これぞケンタッキーと思える部位だが、複数食べると流石に重たいか。


#エッセイ
#ケンタッキー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?