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政策参与になって1か月が経ちました

政策参与になって1か月が経ちました
大西連

蒸し暑い日々が続いていますが、みなさん、いかがお過ごしでしょうか。

私事ですが、6月1日に、政府の内閣官房孤独孤立対策室の政策参与に就任しました。就任して約1か月。今やっていることや、今後のことも含めて、少し書いてみたいと思います。

なお、ここに記載する内容はすべて僕個人の見解です。また、公開されている情報のみをもとに書きます。その点、ご了承ください。

■孤独・孤立対策室とは

内閣官房に孤独・孤立対策室が設置されたのは2月。
新たに任命された坂本哲志孤独・孤立対策担当大臣のもと、「社会的不安に寄り添い、深刻化する社会的な孤独・孤立の問題について総合的な対策を推進するための企画及び立案並びに総合調整に関する事務」をおこなうことが、孤独・孤立対策室の目的です。

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2月25日にはNPO等の支援現場のメンバーや著名人等を招いて「孤独・孤立を防ぎ、不安に寄り添い、つながるための緊急フォーラム」を開催。

3月12日には、「孤独・孤立対策に関する連絡調整会議」を実施し、「ソーシャルメディアの活用に関するタスクフォース」「孤独・孤立の実態把握に関するタスクフォース」「孤独・孤立関係団体の連携支援に関するタスクフォース」の立ち上げと議論がおこなわれました。
ちなみに、「孤独・孤立対策に関する連絡調整会議」は第2回が4月23日、第3回が5月31日におこなわれています。

そして、前後しますが、3月16日には、孤独・孤立対策をおこなうNPO等の現場への支援策として、自殺対策、フードバンク、女性への支援等を盛り込んだ「緊急支援策」を関係省庁と連携して取りまとめ公開。この支援策は多くの自治体、NPO等でも活用されています。

このように、孤独・孤立対策室は、まだまだ不十分な点はあるものの、日本の孤独・孤立対策としての支援施策を検討するべく、さまざまな企画立案、調査実施の準備、各省庁との連携や、官民連携について模索しています。

■政策参与とは

孤独・孤立対策室から政策参与に就任しないかという依頼をもらったときは、正直驚きました。
とはいえ、以下の〈もやい〉としてのリリースに記されていますが、お引き受けすることにし、6月1日付で就任しました。

もやいとしてのリリース:〈もやい〉理事長の大西連が6月1日付で内閣官房孤独・孤立対策担当室政策参与に就任しました

政策参与は何をするのか、というと、「孤独・孤立対策に係る専門的、技術的な事項について意見を具申する」とされています。
あくまで「アドバイザー」的な関りである、ということだと思います。

実際、僕自身も、政策参与になったとはいえ、〈もやい〉での活動と並行しておこなっているため、実質のコミットメントは週1~2日程度のものとなっています。
ただ、限られた関わりのなかではあるのですが、就任した以上は、日本の孤独・孤立対策の施策が少しでも前進するように尽力したいと思っています。

■孤独・孤立に関するフォーラム

6月24日に、NPO等や自治体関係者などから、現場の声や課題をお聞きする、という目的のもと、「孤独・孤立に関するフォーラム」が開催されました。

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会議冒頭、坂本大臣から、

「NPO等の現場の声を直接うかがい、従来の「上から」とは異なる、新たな政策立案の在り方へのチャレンジをしたい」

という主旨の発言がありました。
まさに「ボトムアップ」での政策実現を目指していく、との発言で、かなり画期的なメッセージなのではないか、と受けとめました。

第1回目は「子育て」がテーマでしたが、このフォーラムは10回程度行う予定です。
各回さまざまなテーマで現場の支援をおこなうNPO等の団体や自治体等のメンバーに、現場のリアルや孤独・孤立対策として必要なことをガンガン発信してもらうべく準備をしています。

■透明性、タイムリーな発信に向けた試行錯誤

実は、フォーラム実施の前日に孤独・孤立対策室のTwitterアカウントが開設されました。

フォーラム当日、さっそく、この孤独・孤立対策室アカウントで、各発言者の発言概要をTwitterで中継する、というチャレンジがおこなわれました。
政府系のこういった会議や意見交換の場で、Twitter等で中継する、というのは初めての試みだったのではないでしょうか。(すでに他省庁等でやっていたらすいません)

まだ試行錯誤中ですが、透明性、タイムリーな発信は、今後の政府系の会議等でも当たり前にしていく必要があるのかなと思うところですし、できることから取り組んでいきたいと思います。

■今後について

いま進んでいる孤独・孤立対策室でのタスクとしては、「孤独・孤立に関する実態調査」「支援情報をまとめたHP等の作成」「孤独・孤立対策の重点計画づくり」「政府とNPO等との連携強化」の4つがあると思います。

「孤独・孤立に関する実態調査」については、今年度中に全国調査をおこなう予定で準備が進められています。
「支援情報をまとめたHP等の作成」については、特にいま苦しい状況におかれている人に対して支援情報等を提供できるようにと、8月の新サイトの立ち上げを目標に、こちらも準備が進められています。HPについては、NPO関係者としては、あなたのいばしょの大空幸星さんや、Social Change Agencyの横山北斗さんも関わってくれています。

「孤独・孤立対策の重点計画づくり」「政府とNPO等との連携強化」については、今回開催しているフォーラムでのインプットをベースにしつつも、今後、さまざまな現場の声を受けとめつつ、また、関係省庁との調整等もふまえて進めていくことになると思います。
こちらは、僕のタスクにもなってくると思うので、言うべきことはお伝えしつつ、少しでも政策が前進するように取り組んでいきたいと考えています。

■最後に

僕個人としては、やはり生活困窮者の支援をおこなうなかで、「貧困」の問題というものに、重きを置いている部分はあると思います。
孤独・孤立の文脈で、地域の「つながり」、人間関係の「つながり」などに光があたり、相談支援や、地域での居場所づくり、社会的参加の機会の担保などの仕組みが拡がっていくことは、重要なことであると思います。
しかし、同時に、やはり、「再分配」の議論も忘れてはならないものであると考えています。

コロナ禍で、〈もやい〉にも他の支援現場でも、生活が苦しくなってしまった方からの相談が多く寄せられる状況となっています。
本来、失業=生活困窮、ではないはずです。生活困窮する背景には、「孤独」「社会的孤立」の問題もありますし、公助の機能不全(再分配の不十分さ)も重要な課題です。

さまざまなセーフティネット(再分配の仕組み)が適切に張り巡らされ、公的支援が整備されて、それを届けることができていれば、「貧困」の問題や、その背景にある「孤独」「社会的孤立」の問題の多くはカバーされるのではないかとも考えます。

NPO等の活動や地域の活動、そういった互助的な機能の展開や充足は、「共助」の拡大として、とても大切なことです。
ただ、そこにばかり目が行き、肝心の「公助」の拡充、すなわち、再分配機能の強化などといった、生活を支えるための施策がおざなりになってはいけないことは、強く伝えていきたいと思います。

政策参与の役割で何がどれだけできるのかわかりませんが、そんなことを考えながら、日本の孤独・孤立対策が一歩でも進んでいくように、職にあるうちは、しっかり取り組みます。

以上、政策参与になって1か月が経ちました、というご報告です。
また、みなさまのご意見等うかがわせていただく機会もあると思いますので、何かあれば遠慮なく。
また、僕から連絡がきても嫌がらないでください。よろしくお願いします。

大西連


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