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延命治療をどうする? 希望を明示することが大事

末期ガンや心疾患、脳疾患などで治療の存続をどうするか、医師に判断を委ねられるのは、多くの場合、家族です。延命治療や臓器提供の意思表示を紙面で行い、身近な人に託しておくことで、家族の精神的負担が和らぎます。また、おひとりさまはいざというときの身元引受人を決めておくのが大事です。


重大な責任を負ってしまう家族を、紙面でそっとサポートして

延命治療や臓器提供の意思表示が、なぜ大事か。一番は、本人が意思表示できない場面にあっても意思を尊重するためです。でもそれと同じくらい、家族のためでもあります。
 
身内の延命治療をするか否か。その決断を迫られたとき、平然と「延命治療はしないでください」と言える家族はほとんどいないでしょう。延命治療をしないということは、近々身内が亡くなってしまうことを意味するためです。
 
一方で、「延命治療をしてください」と迷わず言える家族がいるかといえば、それもまた疑問です。延命治療をすることで命は長らえますが、本人は意識がないままずっとベッドに横たわっていなければなりません。その苦痛がいかほどのものか、本人に聞くことができないまま、治療を続けることになります。
 
どちらを選んでも、迷いや後悔が続くかもしれない。そんな家族の苦しみを救うのが、あなたが用意する一枚の紙、一冊のエンディングノートです。本人の意思表示がハッキリ残っていれば、家族は重すぎる責任に押しつぶされることなく選択できるでしょう。

延命治療の意思表示はどうやって行う?

延命治療の意思表示は、どのようなものであってもよいとされています。法律で、書かなければならない文言が決まっているわけではありません。極端な話、プリント用紙にボールペンで走り書きをしても構わないのです。
 
ただ、「どんな文言にすれば良いか分からない」という人もいるでしょう。また、プリント用紙に走り書きでは、家族に渡したとしても本気の気持ちが伝わらないかもしれませんし、いざというとき他の家族に見せても説得力がないかもしれません。
 
自治体によっては、「意思表示ノート」といった名前で、延命措置に対する希望を書き残せるノートを配っているところもあります。役所や社会福祉協議会、福祉施設などで配布されているものを取り寄せてみましょう。
 
参考:私の意思表示 ノート-埼玉県
   意思表示シート(羽曳野市)
 
なお、1976年(当時は「安楽死協会」)より活動してきた日本尊厳死協会のホームページからは「私の希望表明書」(PDF)を無料でダウンロードできます。
 
参考:リビング・ウィルとは(公益財団法人日本尊厳死協会)
 
エンディングノートを作成している人は、ノートの項目に書き記しておいてもいいでしょう。ただし、生前に家族の目に触れなければ意味がないため、ノートの存在を家族に伝えるとともに「亡くなったときではなく、介護や医療が始まったらもうノートを開けてみてほしい」と伝えるのが大事です。

臓器提供の意思表示は運転免許証やマイナンバーカードでもできる

臓器提供とは、脳死後、あるいは心臓が停止した死後に、臓器移植が必要な人のために健康な臓器を提供することです。脳死後と心停止後では提供できる臓器が違い、脳死後は「肺・肝臓・腎臓・膵臓・小腸・眼球・小腸」が、心停止後は「腎臓・膵臓・眼球」が提供可能です※1。
 
臓器提供が可能になる場面はめったにありませんが、もし可能になったとして、そのときには本人に意思を聞くことができません。よって延命治療同様、事前に意思表示をしておくことが重要になります。
 
臓器提供の意思表示は、運転免許証の裏やマイナンバーカードでできます。これまでの健康保険証が廃止されると、健康保険証に書いた意思表示を誰も確認できなくなってしまうため、マイナンバーカードや免許証にも忘れず書き込んでおきましょう。
 
ただ、臓器提供は家族が反対するとできません。どうしても臓器提供で人の役に立ちたいと考えている人は、家族に意思表示を示した上で、よく話し合っておきましょう。
 
※1参考:脳死後と心停止後の臓器提供の違い(日本臓器移植ネットワーク)

おひとりさまはいざというときの身元引受人を用意して

おひとりさまは、終末医療についての意思表示を誰に行えばいいのでしょうか。そしていざ亡くなったとき、病院から身元を引き受け、葬儀を行ってくれるのは誰なのでしょうか。
 
社会福祉協議会が、身寄りのない人が入院したり施設に入所したりするときの身元引受人になってくれる支援を展開しているところがあります。自分の住まいがある住所を管轄している社協が対応しているか、まずは調べてみましょう。
 
ただ、社協の支援基準を満たさない人もいることでしょう。例えば「他に頼れる身内がいない」ことが条件になっている場合、「子どもの世話になれない」と感じている人は利用できません。
 
公的支援の情報を集めながら、足りない部分は民間の終活支援サービスを利用するのはいかがでしょうか。委任契約を結ぶことで、入院時の身元引受を行ってくれる身元保証サービスがあります。生前のことから、葬儀やお墓、相続などに関する死後のことまで依頼できるため、おひとりさまにとっては安心です。


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