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3.我が家のルール ※姉は適用外

そして1年経ち、小4になった。もはやこの1年間、仲間の新車に紛れて走り続けたチドリ号。河原のサイクリングロードで誰が速いかを競走したとき、変速機のない俺のチドリ号は、立ちこぎしても絶対勝てなかった。屈辱である。世の中、思い通りにいかないことも良く分かった。さぁ、あとはタイミングだ。この1年を無駄にしないためにはタイミングを間違えてはいけない。この世で一番大切なのは…である。(誰かが歌ってたな)そう。「素敵」に話さなければなるまい。そして金曜の夜、チャンスは訪れた。

「お父上(絶対こんな呼び方しない…)お話がございます…」頭を丸めた(してない)おれは、一休さんよろしく夕食の終わりに呼びかける。「ん?なんだ?」「実は自転車のことなんだけど、覚えてる?」「ん?」「あれから1年が経ちまして、やっぱり欲しいなぁと」「ああ、約束だったな」「うん」「じゃあ、来週買ってやろう。但し条件がある」「…条件って?」「買ってやった自転車が故障した場合は全部自分で直すこと。自転車屋さんに持ち込むことは許しません。但し工具は全部ある。必要な部品は買ってやる。直し方も1回は教えてやる。で、全部自分で直すこと。その約束を守れるか?」「パンクも?」「もちろん」「タイヤ交換も?」「当たり前だ。全部だ全部!お前が乗るお前の自転車なんだから当たり前だ」「はい。分かりました。約束します」「じゃあ来週日曜日。買いに行こう。町田のダイクマに」

出された条件を考える。その時の俺は安易にこう考えた。「新しい自転車なんだ!壊れるはずがない。そう、壊さなきゃいいんだ。大事に乗ろう!」(後にこの考え方は、泣きを見ることとなるのだが…)

で、もう一点。ダイクマ?ダイクマにはスーパーカーライトのマシン(!)は絶対おいてない。ブリヂストン、ミヤタみたいな名のあるメーカーものは無い。何故ならディスカウントストアだから。しかもダイナミック!(関係ないね)ただ自転車は買ってもらえる。もはや文句は言えない。悔しい思いをして1年間待ったんだ。つまり、俺が一番欲しい自転車は、早くも買ってもらえないのが判明したわけだ。そして購入店舗は町田。当時我が家で流行りよく行っていたダイクマの町田常盤店。車で30分はかかる。うちの車に自転車は積めない。配送を頼むような家柄(!)ではない。
「バイクで二人乗りで行って帰りは乗って帰ってきなさい。お前のヘルメットは持って帰ってやるから」さらりと言い仕事部屋に消えた親父。

あえてヘルメットの話を持ち出すあたり、緩めない親父の様(さま)を痛感する。
かくして修理は自分で、買った店から2時間乗って帰ってこい、という2点の条件付きで自転車が手に入ることとなったのであった。嬉しいのか悲しいのか分からないが、でも嬉しい。これがほんとの当時の僕の気持ちである。


<続く>

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