今が一番おもしろいという素晴らしさ。

娘。はいつの時代も”今”が一番おもしろい。

 2014年8月に発売された読むモー娘。(著:花山十也氏)は、この一文からスタートします。10年以上ハロヲタを続けている私自身も、この言葉を身をもって感じています。
 この本は私がハロヲタになった直後に発売されており、当時のモーニング娘。は一般層に抜群の知名度を誇るリーダーの道重さゆみちゃんが、9期~11期の若手メンバーを率いてグループの勢いを一気に取り戻した時期で、統率の取れたフォーメーションダンスを武器に活躍の幅を広げていました。
 私のように2014年あたりからファンとなったヲタクは、同年からグループ名の最後に年号を付けるようになったことにちなんで、’14新規と呼ばれています。
 モーニング娘。’14に出会った衝撃は一生忘れることはないであろうものでしたが、モーニング娘。はその後も、衝撃を更新し続けてくれています。


サッカーは今が一番おもしろいのか?

 サッカークラブでは、アニバーサリーイヤーに合わせてベストイレブンを選出したり、専門誌などで過去最高のチームはどこか?と言った企画が頻繁に行われています。
 Jリーグにおいては、いわゆるN-BOXシステムを武器に無双状態にあったジュビロ磐田が史上最強と言われていますし、代表チームに目を向けるとマジックマジャールと呼ばれ、1950年代前半に無敗記録を打ち立てたハンガリー代表が史上最強のひとつと言われています。私の個人的な趣味嗜好で語るなら、大木武監督の下、4-3-3の攻撃サッカーでJ1を席巻したヴァンフォーレ甲府が過去最高におもしろかったチームです。
 このように、サッカーを語る際に”今が一番”と語られることは非常に珍しく、仮に一時的にそう言われていたとしても、それが続いていった事例は見たことがありません。また、先日、イタリア、セリアAのローマで共に活躍した元日本代表の中田英寿氏と、元イタリア代表のフランチェスコ・トッティ氏の対談の中で、近年のフィジカル重視のサッカーに対する懸念のファンタジスタが活躍した時代への哀愁が語られるシーンがあったように、過去への郷愁は様々な場面で見られる光景です。

過去のモーニング娘。も素晴らしい。

 モーニング娘。を語る際にも、サッカーと同じように過去の素晴らしかった時代を語ることがあります。
 2021年に公開された松坂桃李さん主演の映画『あの頃。』は、ハロヲタ達の青春を描いた映画で、原作は2014年に出版された剱樹人氏のエッセイです。この映画は黄金期のハロヲタ達の青春物語で、ハロプロを追いかけながらも時間の流れの中でそれぞれが社会人として巣立っていく様子が、剱氏を中心に描かれています。
 この作品はタイトルの通り”あの頃。”の思い出を回想すると同時に、物語の終盤で亡くなった同士に向けて今のハロプロを語るラストシーンがあり、ここからもハロヲタが、”今”を大切にしている様子が伺えます。
 また、高橋愛ちゃんがリーダーを務めたプラチナ期と呼ばれる2007年中旬から2010年末頃までの期間は、世間的な注目度は低かったもののハロヲタの間では非常に評価された時期であり、’14新規である私も、プラチナ期の集大成である2010年秋ツアー”ライバルサバイバル”のDVDは遡って購入しており、同ライブでの6期メンバーによる”大きい瞳”パフォーマンスは、今では千伝説のひとつとなっています。
 このように、過去を振り返り良さを語り合ったり、新規ヲタが過去の素晴らしさに気付いて遡っていくことはありますが、それでもなお、”今”が一番おもしろと言われ、私自身が強くそう感じているのはなぜでしょうか?

モーニング娘。はなぜ”今”がおもしろいのか?その①

 モーニング娘。(ハロープロジェクト)は、”今”が一番おもしろのにはいくつかの要因があります。
 一つ目の要因は、現役メンバーの過去へのリスペクトと、絶え間ぬ努力です。現役メンバーのインタビューを読むと、そのほとんどでこれまでの先輩メンバーに対する敬意と、歴史を積み重ねてきてくれたことへの感謝を感じ取ることが出来ます。また、インタビュー等の表に出る場面ばかりではなく、新曲発売などの節目で現役リーダーがOGに連絡をするなどの見えない場面でもOGを大切にしており、過去を作り上げたことへのリスペクトを垣間見ることが出来ます。
 また、そんな偉大な積み重ねを超えていくという気概も、どの時代のメンバーからも感じることが出来、歴史へのリスペクトと挑戦の二つのベクトルがモーニング娘。の今を面白くしていると言えるでしょう。

モーニング娘。はなぜ”今”がおもしろいのか?その②

 二つ目の要因は、OGが現役メンバーを大切にしている姿勢です。
 芸能界で活躍するOGが多いモーニング娘。ですが、そのOG達が現役メンバーの活躍を温かく見守ると同時に、OGの言葉や現役メンバーに対する姿勢から歴史を積み重ね続けていることへの感謝を感じ取ることが出来ます。
 特に25年を超える歴史を重ねてきたモーニング娘。の楽曲は膨大で、新メンバーになればなるほど最初に覚えなければならない楽曲は多くなり、またスキルが日々進化しているため、求められるパフォーマンスの完成度も高くなっています。その辺りを、現役を含む先輩メンバーは非常に良く理解をしていて、後輩メンバーへのケアはもちろん、彼女たちに対する敬意をことある毎に垣間見ることが出来ます。

モーニング娘。はなぜ”今”がおもしろいのか?その③

 三つ目の要因は、継続的な変化です。
 モーニング娘。最大の特徴は、モーニング娘。という箱を残しながら、メンバーが卒業と加入を繰り返し絶えず変化をしていくことです。今でこそ当たり前となったこの手法ですが、開拓者はモーニング娘。であり、彼女たちの活躍で日本の女性アイドルの歴史が変わったと言っても過言ではありません。
 変化には不安が伴いますが、不安があるからこそ、変化が起こった後の喜びも大きなものとなります。
 私が10年のハロヲタ歴の中で、最も不安を抱えたのが2019年の15期加入前でした。当時のモーニング娘。は、年齢層の近いメンバーが切磋琢磨し合いパフォーマンスの完成度が非常に高く、前年のロックインジャパンフェスでは、ハロヲタではない一般の音楽ファンにも大きな衝撃を与えるパフォーマンスを披露し、モーニング娘。の歴史においても唯一の立ち位置を確保していたように思います。そんな完成度の高いグループに新メンバーが入ることで、パフォーマンスの質が低下し、この完成された空間が変わってしまうのではないかと危惧していました。
 しかし、蓋を開けてみると、15期メンバーの3人は素晴らしいメンバーでモーニング娘。の魅力を更に高めてくれ、私の心配は全くの杞憂に終わりました。それどころか、そのタイミングで加入した山﨑愛生ちゃんが新たな推しとなり、今では15期が歴代でも一番好きな期となっています。
 このように、不安を凌駕する楽しみを伴った変化が続いているからこそ、モーニング娘。は”今”がおもしろいのです。

モーニング娘。はなぜ”今”がおもしろいのか?その④

 四つ目の要因は、脈々と受け継がれるグループのDNAです。
 メンバーの卒業と加入という変化が常に起こっているモーニング娘。ですが、変化の裏側では、グループのDNAと言える大切な要素が先輩から後輩へ受け継がれ続けています。
 音楽的な要素であれば、16ビート。これはモーニング娘。に限らず、アップフロントに入った段階で、16ビートを刻むレッスンを行うことがメンバーから語られているほどの、重要な基礎となる要素です。また、グループの格好良さも、受け継がれ続けている重要な要素で、先日huluで配信された対談の中でも語られています。
 このように、単に変化するだけでなく、歴史と伝統が着実に積み重ねられているからこそ、それを土台として輝き続けられるのでしょう。

モーニング娘。から我々が学べること。

 ここまでモーニング娘。の”今”がおもしろい要因を読み解いていきましたが、モーニング娘。はこれまでの積み重ねを着実な土台とし、その上にファフォーマンスを積み重ねているからこそ、おもしろさが常に更新されているのだと思います。また、現役・OGそれぞれがそれぞれの頑張りを尊重し合っていることも、今を楽しめる大きな要因です。
 サッカークラブでは、監督や経営陣が変わると刷新や改革といった形で、クラブの方針を”変える”ことがよく見られます。これはサッカークラブに限らずに企業など他の組織でも見られることでもあります。
 確かにマンネリ化した組織や停滞している組織には大きな変化が必要です。実際、2011年頃~2013年頃のモーニング娘。も、ベテランメンバーの卒業と9期~11期の若手メンバーの加入、そしてフォーメーションダンスとEDMへの挑戦など大きな変化があり、その結果が’14以降の活躍へと繋がるわけですが、この変化はあくまでこれまでのモーニング娘。が積み上げてみたものの上にある変化であり、土台を壊すようなものではありません。
 つまり、組織改革に当たっては基本的には、それまでその組織が積み重ねてきたもの、組織が持つ特徴や風土を土台としながら変化を加えていくことがより効果的であり、より今の組織を輝かせることが出来るのでは内でしょうか。
 そしてこれは、個人の人生においても同じであると思います。
 自分がこれまで積み上げてきたものと、これまで頑張ってきた過去の自分を大切にするからこそ、今の人生がより充実し輝いていく。時に辛いことやおもしろくない時期があったとしても、それはおもしろくなっていくための過程であり、そんな時期があるから人生がより豊かになると思えれば、モーニング娘。のような”今”がおもしろい人生が送れるのではないでしょうか。

 モーニング娘。は私にとっての人生の教科書です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?