かぞく【ふりかえるとよみがえる】(毎週ショートショートnote)
家を出て歩き出す。
気がつくとぼくは先頭を歩いている。
いいんだ。
ママはゆっくりにしか歩けない。
陽射しは眩しくて夏休みの匂いがしている。
ぼくは小学校に上がった。
はじめての夏休みの宿題はドリル2冊と読書感想文と絵日記と自由研究。
ドリルはこのあいだおじさんと一緒に終わらせた。
おじさんとは去年一緒に七夕祭りに行った。
それからたびたび一緒に出かけた。
おじさんはママよりちょっと若い。
いくつ違うのか聞いたら教えてくれなかった。
年齢なんてただの記号だよ。
記号?
それなに??
おじさんもママも笑うだけで教えてくれない。
ぼくはお父さんの顔をしらない。
覚えているのはママの泣く背中と誰かの怒鳴り声だけ。
家族だった時はあったのかな。
ケイタ。
そんなに早く行かないで。
うしろからママが呼ぶ声。
ぼくはうしろをふりかえる。
ママの少し大きくなったお腹。
となりにはおじさんが笑っている。
これがかぞくなのかな。
ゆっくりよみがえるのは幸せな気持ち。
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