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こんなのは愛でもなく【夜みゆ&オラヴ】コラボ小説

ソファの上でわたしは一日中、携帯でゲームをしている。
ゲーム好きなのかと聞かれたらどうなんだろうと答えるだろう。本当に好きなものは今まで生きてきて、はたしてあったのだろうかと疑う自分がいる。他にやりたいことがないから手っ取り早くスマホに手を伸ばして時間潰しをしているだけだ。


子供は2人。もう成人している。
もう直ぐ大学を卒業して働き出したら、学費もかからなくなるし、わたしの稼ぎはほぼ貯金にまわせる。
もう何年も家族三人分の食費だけ出しているだけだから、貯金は貯まっていく一方だった。
世帯主はあいつだ。
このマンションもあいつの名義でローンも駐車場代も光熱費もすべてあいつの口座から引き落とされている。


洗濯はしない。
ごはんは作らない。
会話もない。
目も合わせない。
もちろん、セックスなどは10数年ない。
嫁入り道具として持ってきた箪笥を押し込めた実質4畳半の和室にあいつは寝泊まりしている。


子供達には小さい時からあいつの悪口を事あるごとに言ってきた。
子供にとっていつもそばにいる母親の影響は大きい。わたしにとってそうだったように。
何かあるとわたしはあいつの悪口を息をするように話してきた。
子供達はそうだね、悪いのはお父さんだと素直に答える。考え、判断する力を無くしてきたのが功を奏した結果だ。


男は馬鹿だ。
特にあいつはその筆頭だ。
休みとなるとのそのそと早く起き出し、朝シャンをし、念入りに身支度を整えて嬉々とした顔で出ていく。
帰りはいつも遅い。
リビングで寝ているフリをしていると静かにドアが開き、こそこそと泥棒のように音を立てぬように自室に向かい、やがて眠りについたのか鼾が聞こえてくる。
わたしは起き上がり、スマホの明かりをたよりにあいつの部屋に行き、カバンの中を漁り財布を取り出す。
大したレシートもなく、わたしはまたリビングに敷いてある布団に戻った。


わたしは息子にあいつの車に盗聴器をつけるように言った。
息子はわたしのために、あいつを断罪するという。重大な任務のように、取り付けたことを報告してきた。
証拠集めの為に探偵も依頼した。
こんな調査だけで食っていける世の中だ。
なんと堕落しているのだろう。


あいつは帰ってきた足でまっすぐ風呂場に向かう。シャワーの音がしたら、こっそり脱衣所に向かい、あいつが脱いだばかりの下着の匂いを嗅ぐ。
痕跡がないか目を凝らす。
頭の中にはさっきまで読んでいた依頼していた調査結果の文字が浮かんでいる。
見も知らぬ女の名前。
女の住所も家の写真も、電話番号も書いてあった。
若い女かと思えば、わたしと大して変わらない中年女。
写真も入っていた。
ふたりとも浮かれた中学生のように笑いながら手を繋いで歩いている。
こんなふうに笑うあいつを見たのはいつぶりだろう。
片時も離れたくないと言わんばかりにぴったり寄り添って歩く姿。
ホテルに入っていく車。そして出てきた車。
気味が悪いのは女の目だった。
1枚だけ、こちらを見ている写真があった。
やれるもんならやってみなさい。
逃げも隠れもしないから。


あいつを手放すには惜しいのだ。
何の文句もいわない。
ただひたすら世帯主の役割を果たすあいつ。円満な家庭を営んでいることを証明するためにも、いなくなっては困るのだ。
ローンもあと数年だ。
それまでは居てもらわなければ困る。終われば追い出すだけだ。
女からはしっかり慰謝料を踏んだくるつもりだ。他人のものを奪ったら罰を受けなければならない。
たとえこの家庭が砂の上の幻のようなものであっても。


今頃、女は受け取ってるだろう。
わたしからの宣戦布告の手紙を。
さあ、ゲームの始まりだ。


夜みゆちゃんとのコラボ小説です。
いや、夜みゆちゃんがどんな物語にしてくれるのか、楽しみです♡
ドロドロの物語にしたいねと話し合って書き始めました笑
もちろんフィクションですけど笑
こんな感じなのかなぁなんて目一杯想像して創造してみました笑

夜みゆちゃんにバトンタッチです❣️
よろしくお願いします💗

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