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ビートルズのデビュー・シングル『ラヴ・ミー・ドゥ』って、ビートルズ通が言うほどそんなに地味な曲かしら?


ビートルズ関連のYouTuberの動画をいくつか見ていく中で気になることがある。どうも、どうやら、彼らの間ではデビュー・シングルの
『ラヴ・ミー・ドゥ』は地味な曲になるらしい。ある人気YouTuberに言わせると、
『アスク・ミー・ホワイ』(デビュー時からあったオリジナル曲。2ndシングル『プリーズ・プリーズ・ミー』のB面曲となる)のほうがデビュー・シングルにふさわしかったんじゃないか?  と。そうなの?  ひょっとして、昨今の熱心なビートルズ・ファンの間ではそういうのがコンセンサスみたいになってるのかしら。

40年ぐらいビートルズを聴いてきて、そんなことは微塵も思ったことなかったので、驚いた。かなり驚いた。

そりゃ、確かに『プリーズ・プリーズ・ミー』や『抱きしめたい』に比べると、派手さはなく、地味な味わいなのは認める。ただ、そうは言っても、全米1位に輝いた曲だからなあ(イギリスでは17位)。ビートルズ・ファンならご承知のように、『プリーズ・プリーズ・ミー』は全米1位にはなっていない。

自分が最初に『ラヴ・ミー・ドゥ』をフルに、マトモに聴いたのは40年前(中3の終わり頃)のこと。なんていい曲なんだろうと心底感動した。感動を自分内で収めきれず、妹やクラスの人間に下手な歌声で聴かせたほどに。

ビートルズの曲を順に聴いていくうちに、『ラヴ・ミー・ドゥ』よりもいい曲はいくつもあるなと、田舎の中学生なりに気づいたが、それでも『ラヴ・ミー・ドゥ』は『ラヴ・ミー・ドゥ』でいい曲だという確固たる認識があった。全米1位になった事実を知るのは、しばらく時間が経ってからだった。

むろん、曲の良し悪し、好き嫌いなどというのは個人の価値基準でいい。だが、比較として『アスク・ミー・ホワイ』を持ち出されると、やはり、一言申したくなる(笑)。

ジョンとポールとジョージがデビュー曲に決めたわけで(リンゴは加入したばかり)、なにより、プロデューサーで発言権絶大でプロ作曲家が書いた別曲を用意していたジョージ・マーティンが納得した曲だから、なにも問題のない、文句のつけようのない曲と言える。

のちにビートルズの弟分的存在となるドノヴァンは相当な衝撃を覚えた由。

こういうふうに書いても、しょせんアナタの感想でしょ?  確証バイアスでしょ? などと言われそうだが、それじゃあ、こういう理由付けはどうだろう。

『ラヴ・ミー・ドゥ』が全米1位になる前の週の1位曲。その曲はメアリー・ウェルズの『マイ・ガイ』

モータウン・サウンドの新進歌姫の爽やかでキャッチーな名曲。ビートルズの面々といえばモータウン・サウンドが大の大好きであり、彼女の翌週に1位になったのはとても嬉しかったと思われる。いちいちチャートをチェックしていたとは思われないが、知れば、いや応なしに喜んだだろう。

仮に『アスク・ミー・ホワイ』をシングルに切ったとして、『マイ・ガイ』に勝てるとは思えない。いい曲とランキングはまったくリンクしないのは百も承知だが、1位という記録はやはり違う。この歴史的事実は好ましい。微笑ましい。1964年の夏のアメリカに『ラヴ・ミー・ドゥ』はズバリ、ハマッたのだ。

ちなみに、『ラヴ・ミー・ドゥ』の次に1位になったのは、黒人女性3人組のディキシー・カップス(名前がかっこいい!)の『チャペル・オブ・ラヴ』。泣きメロが印象的な日本人好みの楽曲。

『マイ・ガイ』、『ラヴ・ミー・ドゥ』、『チャペル・オブ・ラヴ』という流れは、実にいい感じ。『ラヴ・ミー・ドゥ』の持つ味わいのよさ、ひいてはビートルズ流の黒っぽいサウンドの新味がより際立つ。1964年のその時分のアメリカに、行けるものなら行ってみたい気がする。

あらためて、『ラヴ・ミー・ドゥ』に魅せられた理由を書くと、こうなる。
●イントロのハーモニカからキャッチー過ぎ。耳に残る
●ジョンとポールのヴォーカルそれぞれの聴かせどころが(すでにして)ある
●間奏がまた聴かせる
●その間奏で「ヘイ!」の掛け声(必要)。ロックしてるじゃねえかと

やはり、『ラヴ・ミー・ドゥ』がデビュー曲だったのは大正解だったと言うしかない。あまのじゃくのひねくれライターとしては、YouTuberに負けじと逆バリで行きたいのは山々だが、こればかりは無理だ。

できれば、ライヴでどんどん演っていただきたかった。

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