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1993年春、当時自分らが始めた「ロックとプロレスに関するミニコミ」において、快くインタビューに応じてくれた松村雄策さん。29年の時を経て、その誌面から抜粋して掲載する〜その2

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――話は変わりますが、今回本誌でもカーター・ジ・アンストッパブル・セックス・マシーンやEMFなどの新世代バンドを取り上げているんですけど、こういった90年代リアルタイムのロックについては、どう思われますか。
松村 僕はほとんど聴かないね。ロックって、やっぱり基本的に若い人が若いバンドを聴くものであってね。本来なら僕なんか原稿書くべきじゃないんだよ。昔の場合、バンドってのは5年10年もたないですぐ消えるものだったんだけど、最近はそれもないからなあ。ストーンズとかキンクス、ポール・マッカートニーなんて年食ってんのに未だ現役だもんね。プレスリーの時代には全く考えられなかったと思うんだけど。うーん、本当だったら僕なんか、『ロッキング・オン』でももう書かないほうがいいんじゃないかなあ。ただ、僕は文章を書くってことに関しては圧倒的な自信を持ってるから、その点は別にいいんだけど。まあ、そういう若いバンドの音楽も聴けるんだけど、もはや感動するっていうのはないんだよね。ニルヴァーナとかガンズとか、いいなっては思えるんだけど、やっぱりピンとこないね。それよりもニック・ロウとかキンクスとか同世代の人に思い入れが強くて、それに浸っていると、どう生きるか、なんて考えるんだよね。要するにロックっていうのは、受け手にとって、人生とか生き方とかに結構影響を与えると思うから。だって、新世代のバンドとかって、下手すると二十も年下の人達でしょう。自分の子供としてもおかしくない年頃の人についていきます、なんては思えないよ。ついていこうって思うのは、やっぱり同世代の人だね。その時代にリアルタイムで聴いたわけだから、重みも違うし。だから今のロックは君たちみたいな若い人に聴かれるべきで、それこそ僕らがビートルズやストーンズを聴いたように、ニルヴァーナとかガンズなんかに反応していけばいいんだよ。
――日本のロックはどうですか。
松村 やはりチャボとか同世代のねえ、そっちだね。今、ブランキー(ジェット・シティ)もいいとは思っているんだけど、彼らにのめり込むかというと、のめり込めないんだよね。カッコいいな、とは思うけどやっぱりそこまでだね。
ーー今の世代にギャップとかは感じますか。
松村 いや、ギャップとかじゃなくて、ロックってそういうもんなんだよ。今のロックも別に否定はしないし。ただ、インパクトっていうのがあって、それはやっぱり10代で聴いたものにすごく感じるよね。最初に聴いたのは、もう世界観が変わるようなそんな感じを受けるから。もうそこからは変わらないよ。僕の場合はビートルズだったんだけどね。逆に言えば、今の若い人が知らないはずの60年代ロックとかを喜々として聴いてるほうがおかしい。
ーー結構多いですよね。
松村 うん。もうオタク的に詳しい人がいるでしょ。若いのになんでこんなジジイの音楽知ってるんだ、っていうね。僕はプレスリーとか、その辺はお勉強という感じで聴いたけど。90年代の若いヤツが昔のストーンズ聴いて、したり顔で「昔のストーンズのほうが最近よりもカッコいいよな」とか言っちゃえるのか、考えると不思議だよね。
(ロック編・終わり)

●余談
その1。あの時、松村さんが飲んだものはビールだった。金のなさそうな我々3人に「ビール飲んでいい?」と尋ね、「なんでも大丈夫です」と返して、ちょっと笑いになって、そこからインタビューはスタート。確か、銘柄はバドワイザー。缶だったか瓶だったかは記憶にない。気をつかってくれたのか、おかわりはしなかったはず。インタビューというのは酒飲みながらでもOKなんだということを駆け出しの(カーツさんの弟子になって直後の頃)ライターの自分は知ったのだった。

その2。「昔のロックが(も)好きな若者」とは、何を隠そう、自分のことだった。そのあたり、松村さんに言ったかは憶えてないが、昔のロックをほとんど聴かないほかの2人が、自分を皮肉るために(むろん、そういう流れはいつの時代でもあるもの)俎上に載せて聞いたのだった(苦笑)。




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