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【映画】スパイク・リー監督作品『ザ・ファイブ・ブラッズ』は学びの宝庫

今回は、Netflixで配信中の映画『ザ・ファイブ・ブラッズ』を紹介したいと思います。

黒人のベトナム帰還兵を取り上げており、今アメリカで加熱している「BlackLivesMatter」運動の最中にあって大きな注目を集めた作品です。

概要

ベトナム戦争に従軍した元黒人兵4人が、戦死した仲間の遺骨と戦地に埋めた金塊を回収するべく、ベトナムを45年ぶりに訪れるという話。

監督は、『ドゥ・ザ・ライト・シング』や『ブラック・クランズマン』でも人種問題を描いたスパイク・リー。

「常に時代の先を見ている」と言われている監督で、本作の配信開始日が白人警官による黒人絞殺事件によって「BlackLivesMatter」運動が加熱したタイミングと重なっているところに、彼の先見性が見てとれます。

ベトナム戦争に従軍した黒人を描いた作品

この映画が企画に上がった当初、主人公は黒人ではなく白人の予定だったそうです。しかし、

「多くの黒人がベトナム戦争に従軍していたにも関わらず、彼らに焦点を当てた作品がほとんどないのは何故か?」

とスパイク・リー監督が問題意識を持ったため黒人を主役にすることになったそうなんですね。

劇中でも言われていますが、

「アメリカ国民に占める黒人の割合はおよそ10%であるのに対し、ベトナム戦争に従軍した黒人の割合はおよそ30%」

なので、スパイク・リー監督の言う「多くの黒人がベトナム戦争に従軍していた」事実は数字から見ても明らかなわけです。

国内で不当な扱いを受けながらも、国のために戦うことを強いられる・・・

このことに対して、ハノイ・ハンナというベトナム人の女性DJがベトナム戦争中、ラジオを通して

「あなた方は元のアメリカの国ではひどい目にあって踏みにじられているのに、どうして白人のために戦うんですか?あなたも何の恨みもない我々ベトナム人をなんで殺すんですか?」

と語りかけていたシーンも映画の中で取り上げられていましたね。

「ベトナム人」の視点から見るアメリカ黒人の加害性

黒人を扱った映画は、アメリカ社会の歴史の中で黒人が如何に虐げられてきたかといった「被害者的側面」にフォーカスされることが多いです。

ただ、この作品ではベトナム戦争におけるベトナム人の視点を盛り込むことにより、アメリカ黒人の「加害者的側面」も浮き彫りにしているのが大きな特徴です。

アメリカ国内で不当な扱いを受けていようと、ベトナム人からすれば多くの同胞を彼らに殺されているわけです(劇中ではソンミ村虐殺事件のことに触れていました)。

さまざまな立場の人物を物語に登場させることにより、どの立場にも肩入れしすぎず、中立的な視点で見ることができる映画だなと感じました。

さまざまな要素が盛り込まれている作品

上記で紹介した以外にも、黒人の中にトランプを支持している層とそうではない層の分断が描かれていたり、ベトナムで地雷撤去活動をしているフランス人のグループが絡んできたり・・・

また、映画の冒頭で黒人にまつわるアメリカでのエピソードが一気に紹介されていたり、過去に公開されたベトナム戦争映画のオマージュが至るところに散りばめられていたりと、数え上げればキリがないほどいろんな要素が盛り込まれている作品になっています。

これらを一つずつ掘り下げていくだけでも相当な勉強になるんじゃないかなと思います。
きっと、見れば見るほどに新たな気づきが得られるはず。

一つの作品にここまでの要素が盛り込まれている映画はなかなかないと思うので、まだご覧になられていない方はぜひ一度見てみてくださいね!


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