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【#あなたの温度に触れていたくて】本当は、君に。

よう先輩!」

聞き覚えのある声がして振り返ると、顔を上気させ、息を切らせた後輩が立っていた。

里花りかちゃん!お疲れ。どうした?」

「これ……受け取ってください」

里花ちゃんの白くて華奢な手には、綺麗にラッピングされた小さな箱。
………中身はきっと言うまでもない。

「ありがとう。嬉しいよ」

「………あの、瑶先輩」

「ん?」

「私………先輩のこと、大好きです」

「………それは、どういう意味で?」

「も、もちろん憧れの意味で、です!
先輩の恋愛対象が女の子じゃないことはわかってますし……」

「でも、先輩って頭も良くて運動もできるし、すっごく優しいし女子の気持ちもわかってくれるし……」

「その辺の男子なんかより断然かっこいいんです……!!!」

———倉田瑶、17歳。
無駄に高い身長と女子にしては低い声のせいか、男と間違われること数知れず。

今日だって、本来であれば作って渡す側のはずなのに、両手には女の子の手作りチョコが大量に入った紙袋。

………なぜいっそ男として生まれさせてくれなかったのですか、神様。

***

「よおイケメン」

「………奏多かなた

「相変わらずすげぇ量のチョコだな。
少しくらい俺にも分けろよ」

家に帰り、ドアを開けて入ろうとしていたら、隣に住んでいる幼なじみの奏多が声をかけてきた。

「奏多ももらってきてるでしょ」

「いや、お前には敵わねぇよ」

「………ねぇ」

「ん?」

もしも、こんな男みたいな私がチョコを渡したとして、奏多は受け取ってくれるかな。

「やっぱなんでもない」

「え、気になるやん!言いかけたなら言えよ」

「いいの!なんでもないから」

———喉元まで出かかった言葉は、
今年も届くことなく儚く消えていった。


***

xuさんゆっずうっずさんの共同企画に参加させていただきました…!

「冬の恋」、「バレンタイン」、「愛」がテーマということで、男の子も顔負けなイケメン女子と幼なじみの男の子の組み合わせで書いてみました。
企画を機に、久々に小説を書くことができて嬉しいです☺️

xuさん、ゆっずうっずさん、素敵な企画をありがとうございました✨


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