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三代に渡って竹紙を漉いてきた「なかせ竹紙」のこれまでと、竹紙ができるまで。ーーなかせ竹紙・永江陽子
こんにちは、おおい町地域おこし協力隊の張本です。
おおい町で活動する人たちを取材するインタビュー企画第6 弾のお相手は、なかせ竹紙の永江陽子さん。永江さんの祖母が直木賞作家である水上勉さんに竹紙の漉き方を教わったことをきっかけに、なかせ竹紙の活動がはじまり、三代に渡って活動を続けられています。
今回はなかせ竹紙のこれまでと、竹紙ができるまでの過程についてお話を伺っていきます。
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なかせ竹紙 3代目
永江陽子(ながえようこ)
おおい町岡田出身。35年前に祖母が創業した「なかせ竹紙」の3代目。工房でつくる竹紙は若州一滴文庫や京都の竹紙専門店に卸している。
水上勉さんに教わり、はじまった「なかせ竹紙」
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ーー竹紙がどういうものなのか、教えていただけますか?
永江竹紙とは、名前のとおり竹を原料にした紙のことです。竹を1年ほど水につけた後に、窯で炊き、木槌でたたき、出来上がった竹餅を漉いて作っていきます。中国が源流のこの製法は、水上勉さんの著書『竹紙を漉く』にも詳しく書かれています。
実は、なかせ竹紙があるのは水上さんのおかげなんです。祖母が水上さんのもとで竹紙づくりを体験し、竹紙に惹かれ、漉き方を教わったことがきっかけで、なかせ竹紙が始まりました。
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ーー永江さんの祖母の代から、なかせ竹紙さんは続いているんですね。
そうですね。祖母のあとは父が引き継ぎました。この工房はかつて倉庫だったのですが、家族の協力で紙漉き場に改造しました。そして、4年ほど前に、父に教えてもらいながら私も紙漉きを始め、今に至ります。
ーー永江さんはどういう経緯でなかせ竹紙を継ぐことに?
小さいころは、母にくっついて一滴文庫に竹人形文楽を観に行ったり、父が竹のおもちゃを作ってくれたり、竹は身近な存在だったので、竹紙作りも自然な流れで始めました。
そして、この工房は、学校の登下校の途中にあり、祖母が必ずここにいるので、よく学校の帰り道に寄り道して紙漉きをしてから家に帰っていました。竹紙を漉く祖母の姿は、とてもキラキラしていたのを覚えています。だからなのか、私も竹紙作りが楽しいなと感じるので、自分が納得いく竹紙をつくりたいと思います。
周りの皆さんから、「貴重な取り組みだからこれからも続けてください」いう声をよくいただきます。父のあとに竹紙を作る人がいなくなるのはさびしいので、今後も続けていけたらと思っています。
竹紙ができるまで
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ーー竹紙で使う竹は山から取ってくるのですか?
そうです。タケノコは春先に収穫しますよね。竹紙に使う竹はタケノコが伸びて、枝がわずかに出てきたタイミングのものを使います。時期としては、5月下旬から6月上旬ぐらい。そこから1年間、水に漬け込みます。大きめの桶に伐採した竹と水を入れ、水をアルカリ性にして、発酵させるんです。だから、竹紙を今つくろうとすると、昨年に取ってきた竹が材料になります。
ーーでは、来年の事を考えて竹を取らないといけないんですね。
そうなんです。しかし、竹も豊作の年とそうでない年があります。今年は少なかったので、竹を取ることはできませんでした。
1年間漬けたあとは、窯で3日ほど炊きます。この間に不純物を取り除き、柔らかくなったか確かめて、水で洗い流します。そして、機械を使って数時間、餅つきのように竹をつきます。
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できあがった竹餅はさらに2、3日かけて手作業で叩きます。細かくしすぎてもダメなので、これは感覚です。これでいけると思ったら、槽にいれ撹拌して紙を漉いていくんです。
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ーーようやく、ここで紙を漉けるんですね。
そうですね。紙漉きは流し漉きと溜め漉きという二つの手法があります。なかせ竹紙では溜め漉きで漉いています。短冊やはがき、B5サイズなどさまざまな大きさの枠を利用し、紙を漉きます。1週間ほど自然乾燥させて、竹紙の出来あがりです。
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ーー想像していたより大変な作業でした。手作業も多いんですね。
楽な作業ではないのですが、炊いてるときや手作業で細かく叩いているときに「どんな竹紙になるかな〜」と楽しみにしながら作業をしています。そして、出来あがった1枚の紙をみると「会えた〜」と思うんです。だから、苦労することもあるけれど、そこまで気にならないです。
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ーーそうして丹精こめて作られた竹紙は、どのように使われると嬉しいで
すか?
ものづくりをされている人に共通していることだと思うのですが、大事に可愛がっていただけると嬉しいです。京都で和歌を詠む人に竹紙を購入していただいたり、竹紙を使ったアート作品をつくられる人もいたり。最近では、フランスのパリに竹紙を使った作品を出展していただきました。自由に使っ
ていただけるのが嬉しいですね。
ーー竹紙への愛着がとても伝わりました。今日はありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。今日漉いていただいた竹紙、また
お渡ししますね。
編集後記
竹が放置され、森林の土壌を悪化させるという放置竹林の問題が全国的に広がっているという話を聞いたことがあります。その話をすると、永江さんは「竹林は宝の山なのにね」と不思議そうに話されていました。幼少期からたけのこを掘ったり、親から竹を細工した遊び道具をもらったり、竹林が身近にあったからこその感想なのでしょう。自分で初めて漉いた竹紙、大切に使わせていただきます。
執筆・撮影:張本舜奎
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