おばあちゃんを思う孫
2019/03/07
随分大きくなったねえって言ったのよ。久しぶりに腕相撲しようかって。そしたらわざと負けてくれるのよねえ、そうなの。大きくなっちゃってって。この間背比べもしたのよ。柱に印付けてるんだけどね、もう一緒くらいなのほとんど。そう、早いわよねえ。
病院で順番を待ってる間ってぼんやりしているから、色んな話が耳に入ってくる。すぐ横に座っているおばあちゃんふたりは控えめな声で孫の思いやりが泣ける、という話をずっとしている。
井の頭線沿いに住んでいるあたしの母方のおばあちゃんは先月90歳になった。年末におじいちゃんが亡くなってからもあの家で過ごしていて、食欲がないだとか目が痛いとか母と喧嘩したとか色々あるみたい。
父と母と妹と4人で久しぶりにおばあちゃん家に行った。おばあちゃん、ピザが食べたいというのでピザのデリバリーを頼んでお昼に皆んなで食べた。大きなテーブルはもう家にないからサイドテーブルみたいなのにピザを置いて、サラダとかは床に置いて。
おばあちゃんは80代でまだ元気だった頃、友達と渋谷へ映画を見に行っていた。帰りに焼肉ランチを食べてたそうで、そんなおばあちゃんっぽくないおばあちゃんが自慢だった。渋谷へ遊びに行かなくなった今だって、ピザを食べたりしている。自慢のおばあちゃん。
もうこれが最後かなあなんて別れ際に思うようになったのはいつからだろう。長生きすることが美徳かどうかは分からないけれど、また会えるよねという気持ちで玄関を閉める。
さっきまで横にいたおばあちゃんの片方は名前を呼ばれて診察室に入る。それじゃあまたと言って。きっとお互い名前も知らない者同士だったのだろう。それじゃあまた。