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【対談】黙劇 × もちだころ 「絵について。」(後編)(1) 絵は、何があると、絵になる?

[ 黙劇 ] 漫画「sister.」、詩集企画「sea.」など
[ もちだころ ] 地元漫画「まつかぜ」、同人誌表紙など

横浜のとあるアメリカンダイナーにて、ビールを飲みながら、、

*前半はこちら(黙劇さんブログ)から読めます。


絵は、何があると、絵になる?

黙: これはね、ちょっと抽象的な問いではあるんですが。二人とも真っ白い状況から絵を描いてるじゃないですか。これは漫画に限らず一枚絵でもいいんですけど。どっから絵になってるって判断するのか、っていう聞き方もあるし、逆にどこまでいったら自分の絵として完成なのか。どっから絵が始まってるのっていうボーダーの話をしようかなと思って、これを書きました。

おもちさんの絵は意外と絵の始まりがすごくこう、この線しか描いてないんだけど、もう絵として始まってる感じがすごいするんですよ。

も: へー、そうか。

黙: <『まつかぜ』の車窓のコマをみながら>
これとか(笑)

も: これとかね(笑)

黙: 確かに雲だね、みたいな。

も: そうですね。それ、かなりあっさりですね。

黙: 描き込んでるところはもちろん描き込んでるんですけど。さっきと同じで手の話になりますけど、これが手ですっていう。

も: たぶんこのテーマとちょっとズレちゃうかもしれないんですけど、やっぱり、このキャラを描いていこうとか、この物体を描いていこう、みたいなモチベーションじゃなくて、この時の情景みたいなものを描こうとしてるから、あんまりその物体そのものをどう描くかっていうのは、そこまで重視してないんでしょうね。ていうのと、絵にした時の気持ちよさみたいなのもそれなりに重視しているから、この情景を描こうとしたときに、これが気持ちいいなみたいな、収まり良いなみたいな、ところがみつかると、なんかまあ絵が決まるかもしれません。

黙: なるほど。けっこう情景っていうのがある意味その決め手になってる。決め手っていうか、そこがオッケーだったらオッケーみたいなところがある。

も: そうですね。なんかしっくりくるかなーみたいな。
この構図のほうが収まりが良いんだけどなんかしっくりこないなみたいな時もあるじゃないですか。で、それをちょっとだけずらしたら、居心地わるいんだけどでもしっくりくる、みたいな時もあるから。次の日みたらそれがしっくりこない可能性もあるんですけど、、。まあでもそこの感覚みたいなのを大事にして描いてるかな、、。
ちょっとズレちゃったけど、、。

黙: なるほどですね。いや、いいと思います。

も: 私はちょっとこのテーマをきいたときに、絵とイラストもまた別ものだというのを思って。

黙: あー。はい。

も: イラストって、こういう目的があって、それを表すために説明するために描く、みたいなところがあるけど。絵はそういうスタートじゃなくて、なんかモヤモヤしてることが描いてるうちに捏ねあがってきて、あっこんな風だったんだってわかる、みたいな。「絵は何があると絵になるか」って、どっちかというと、目的意識みたいなのが無ければ無いほど絵になると思う。

黙: なるほどですね。

も: で、絵全般についてはそういう風に思ってるんですけど、じゃあ漫画はどうかっていうと、漫画はイラスト寄りな要素も多分にあるので、なんかその合いの子みたいな感じ。私はどっちかっていうと絵を大事にするタイプの漫画を描いてると一応思ってるんですけど。それはなんかいろいろ振れ幅があると思う。漫画っていう枠組みの中でも振れ幅がある。

黙劇さんは、なんかそういうの意識しますか?

黙: 伝わればいいかなっていう感じなんですよね。自分の表現が足りてるか足りてないか別として、伝わればまあ赤点ではないかなみたいな。私はちょっとそういうレベルかな。漫画とかに関しては。
<『sister. 』の最初のページをみながら>
ここが森の中の教会なんだなっていうのがわかればいいなーみたいな。シスターさんだっていうのがわかればいいかな、みたいな。ていうところは自分の中で合格点として決めてて。私の絵は既にそこでオッケー出してるんですけど。その上でプラスでこういうのがあったらいいかなとか、こういうスタイルが良いかなっていうので、付け加えていくイメージ。

も: 最低限の要素が入って分かるようになってて。で、その後もうちょっと自分が良いと思えるようなものをこう増やしたりまた削ったりとかして、完成にもっていくみたいな感じ。

黙: 自分の中ではトーンとか黒ベタの隅とかはいらないんですよ。自分の中ではね。いらないっていうか、それでわかるよねっていう。自分の中ではあるんですけど。それよりも黒ベタや光がおでこに当たってた方が、まあいいよね~っていう(笑)

も: きれいだよねーっていう(笑)それはわかります(笑)

黙: で加点していくっていう感じ。

私の絵ってほとんど線画。
絵の始まりは、なんかこうぽわーんっていう、こういうレベル。
<ペンで丸を描きながら>

も: 図、みたいな?

黙: あ、そうそう。そういうレベルな感じ。
それでこれが例えばカービーっぽいなっていうのが伝わればいいかなって感じ。もちろん線のクオリティーはいろいろあると思うんですけど。

も: なるほどね。でもさっきの表情の話しの時は、やっぱ記号化された笑顔みたいなのはちょっとやだなっていうのあると思うんですよ。

黙: 表情はそうですね。

も: そうですよね。でもっと説明的にやろうと思えばきっとできるんだけど、きっとやってないところもあるのかなって。

黙: そおっすね。

も: でもやっぱり、黙劇さんはシーンの展開を大事にされてるので、そこで、何がそれななのかっていうのがわからないとダメだから、、。
ふーん、そうか。面白いですね。

黙: <『sister. 』冒頭のエレベーターに乗り込むコマをみながら>
これもエレベーターを全体で描けば、エレベーターに乗ってるよねっていうのがわかるんですけど。でもボタンがあって閉まる扉があってゴウンゴウンいってる狭い空間があれば、エレベーターにこの人は乗ってるってことはわかるじゃないですか。ていうのでええんじゃなかろうかっていう感じはする。これでエレベーター乗ってることが伝わるじゃないですか。伝わればもういいやって感じ。

も: たしかに私だったら、もしかしたらエレベーターをもうちょっと全体が入るように描いてるかもしれませんね、、。でもその方がこの人をもうちょっと大きく入れられるとか、そういうことがありますもんね。へーそうなんだ。おもしろいですね。

じゃあ、黙劇さん的には「絵は何があれば絵になる?」は、線?

黙: 線があれば、なるんじゃないかなっていう。

も: それで言うと、ちょっと自分が考えてきてたことに、特に漫画はそうだと思うんですけど、絵柄と書く字ってなんか似てるっていうのがあって。その人が書いてる字っていうのと、絵柄っていうのがわりと似てると思ってるんですよ。で、黙劇さんがさっきマジックで書いた字が好きって言って、直線的に書いてるような字とか見てると、やっぱそうなのかなって思ったりして。漫画は特に白黒だし、字寄りの絵だなと思っていつも見てる。

黙: たしかに。擬音は私けっこう好きなんですよ。擬音けっこうありますよね、おもちさん。
<『まつかぜ』を開きながら>

も: 擬音あります?あんまり『まつかぜ』には入れてない。
擬音って漫画的ですよね、かなり。
特にこれはね、セリフと音をあんまり入れてないんですよ。

黙: 入れてないですね。人の声がすごい聞きやすいっていうか、なんていうか想像しやすい。発見。

も: うん。自分の中では、セリフとか擬音とかを入れると、絵はあんまり見てくれないっていう気がするんですよ。

黙: なるほど。

も: で、絵をみるとその分読むスピード落ちると思うんですよ。そうするとたぶん、この漫画の中で流れてる時間がちょっとゆっくりになるというのがあって。この漫画については、ゆっくりしたペースで眺めながら読んでもらうみたいな感じ。
漫画だとそういう時間のコントロールみたいなのが、ちょっと面白いですよね。

黙: あー、はい。

も: 最近けっこう意識してるのは、ここに一文字入れるか入れないかで迷って、、前はあんまりそういう風に思わなかったんですけど、入れないっていう選択をすることがけっこうある。「しーん」って入れちゃうとまあ、そこ読んで終わりになっちゃうっていう。絵はあんまり見てくれないっていう(笑)

黙: なるほどね。「しーん」っていう風景で終わっちゃうっていう。

も:ていうのありますね。

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