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鳴神どもの矜恃──格闘技イベントRIZINが宿す「誇り」の正体「追撃戦」

榊原信行が「人生初」の土下座で「目くらまし」に成功


 総合格闘技イベントRIZINとその運営会社ドリームファクトリーワールドワイド(DFWW)、同社代表の榊原信行の行状にメスを入れるルポ『鳴神どもの矜恃──の格闘技イベントRIZINが宿す「誇り」の正体』全14回の連続公開を終えた翌日。9月29日のことだ。

 DFWWを何度目かの激震が襲った。

 震源は「週刊新潮」10月16日号。「MONEY」欄に掲載された記事〈「きらぼし銀行」執行役員が不正融資でキックバックの証拠動画〉である。同欄は1カ月前にも「コロナ融資詐欺」で逮捕された大阪府寝屋川市議会議員・吉羽美華のマネーロンダリング先がRIZINであることを報じている。

 今回の記事によれば、きらぼし銀行の元執行役員・KはRIZINへの不適切な融資に手を染めていたという。DFWWが慢性的な資金不足に苦しんでいることは『鳴神どもの矜恃』でも詳述している。

 KはDFWWのオフィスで榊原に指示し、バランスシートを操作。負債隠しを行った。イカサマのバランスシートをもとに行内稟議を通し、1億6000万円を貸し付けた。

 榊原はKにキックバックの支払いを事前に約束。融資実行後の2020年暮れ、Kを紹介した不動産会社社長を通じて100万円を渡した。その模様を隠し撮りした動画も現存するという。

「この記事が出ると知った榊原は動揺を隠せない様子でした。見る人が見れば、融資の立て付けが『給付金詐欺』そのものだからです。」(DFWWの内情をよく知る関係者)

 榊原が不運だったのは吉羽をめぐる取り調べが続いている真っ最中に「週刊新潮」が動いたこと。榊原はすでに警察の聴取を受けている。

「取り調べが進む中、『給付金詐欺』への関与を匂わせるような記事が出てしまっては致命傷になりかねません。榊原は記事の掲載中止に動きました。RIZINの『トラブルシューター』である『顧問』的存在の安藤陽彦(詳しくは『鳴神どもの矜恃』を参照)とともに方々に働きかけましたが、ストップはできなかった」(興行関係者)

 榊原は保身のため、一か八かの賭けに打って出た。それが9月30日の記者会見である。

 登壇した榊原は25日に行われた「超RIZIN」でのフロイド・メイウェザーvs.朝倉未来戦前に出来したごぼうの党代表・奥野卓志による「花束投げ捨て」行為について謝罪した。その上で「世界中の人たちに本当に申し訳ないという思いをしっかり伝えたい」と発言。会見の最後には15秒間の土下座までしてみせた。本人によれば、土下座は「人生初」であり、「最大級のおわび」らしい。

「会見後には『打ち上げ』と称して、銀座で飲んでいました」(RIZIN関係者)

 どこまで謝罪の心情があったのか。そもそも誰に向けての謝罪だったのだろう。

「メディアは榊原のパフォーマンスを横並びで好意的に伝えました。このニュースにかき消され、『週刊新潮』報道への注目度は低下。後を追うメディアも見られません。巧妙な目くらましに成功。榊原の思う壺です」(芸能関係者)

 繰り返すまでもないことだが、もう一度確認しておく。奥野はオークションで420万円という最高額で「プレミアムNFTデジタルチケット」を落札。花束贈呈の権利を「副賞」として手に入れた。

 目先の金欲しさに奥野をリングに上げることを決めたのはDFWWだ。大会の目玉カードの直前に花束を贈呈するのがどんな人物なのか。チェックが入った形跡はない。責任は代表者・榊原にある。御用メディアも加担した茶番であろう。

「何があってもどんなことがあっても起こさない。誓約書を設けて、改善をしっかりして10月大会に向けて準備を進めたい」

 会見では殊勝に再発防止を誓った榊原。だが、転んでもただでは起きないのが彼の真骨頂。抜かりなくもう一つの「準備」も進めている。

「RIZINの身売りに向けてすでに交渉を開始しています。具体的な提示額まではわかりませんが、榊原は安藤を伴ってあちこちの出資者を訪ね歩いている」(興行関係者)

 ファンや選手にこれ以上の害が及ぶ事態だけは避けてもらいたい。撤退戦にこそ指揮官の腕と器がそのまま表れる。

 国内最大の格闘技イベントが直面する災厄。いつ、どんな形で幕引きがなされるのだろうか。
(敬称略)

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