春ギター
俺はミュージシャン。ボーカル担当。美しい青春は音楽活動に捧げた。老いてもなお新宿のクラブで音楽担当をしてきた。
先日、大切な友人が亡くなった。彼は腕の良いギター弾きだった。
彼の遺品として、『春ギター』を受け取った。
冷たい冬の季節が、熱い夏に向かう季節、春。そんな春のように、人生の冷たい冬の時期から熱い夏の時期に、彼が使ってきたものだった。
「縁起物だな、あいつらしいよ……」
こいつを、誰かに譲りたいと思った。なぜなら、若い才能たちの芽吹くのを、誰よりも信じていた友人だったからだ。
そうだ。来週会う予定の娘に聞いてみるか。二十年前離婚して以来、久しぶりに会う娘。
「もしよければ。友だちの形見になるけど、良いものだから……。出来なくても練習してみると良いよ」
「うーん……」
それで、結局、渡せなかった。
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あの日、もし父からギターを受け取っていたら、この「春ギター」の企画にギターで参加できてたかな?
私は今、そう思ってる。
(410文字)
久しぶりに参加させてください。
よろしくお願いいたします。
ちなみに、半分実話、半分創作です。
ありがとうございました。
いただいたサポートは、本を買うことに使っていました。もっとよい作品を創りたいです。 ありがとうございます。