お願いいたします〜1秒

#1秒の恋


1秒の恋(約1300文字)


1秒さんが、恋をした。噂はたちどころに全時間帯へ広まった。

「恋のお相手は、誰だろう??」

「やっぱり、2秒さん? 3秒さん?」

「もしかしたら、3分さんかもよ。いやいや、1時間さんじゃないの?」

時計中が恋の噂でチクタク振動した。

「……それで? だれなのよ?」

「さあ?」

どの時間帯にも、1秒さんの恋のお相手は分からなかった。しかし、1秒さんの恋について分からないと困ったことになる。1秒さんは時計の基本の単位である。つまり、1秒さんが恋に揺れていると時計全体が困ったことになるのである。万が一1秒さんが恋の病に倒れてしまいでもしたら、世界の時間は総崩れだ。今でも時間がこんなにも揺れているのに。

そこで白羽の矢が立ったのが、1分さんだ。

「ちょっと、1分さん。聞いてみてくれる?」

「えー?! 俺が?? やだよ!」

「いいから! あんたたち似てるし。 聞いとくこと!!」

しぶしぶ、聞いてみた、1分さん。

「1秒さん、あー、今日はいい天気だね?」

「ええ。」

1秒後。2秒になりました。2秒さんは聞きます。

「1分さん、1秒さんのこと、聞けましたか?」

「いや、あの……。まだ……。」

「えぇ!?」

こうして、1分さんは、1秒さんに会うたびに、しどろもどろでどーしようもなくどーでもいいことを1秒ずつ聞く日が続きました。

ある日。1分さんは、1秒さんに声をかけられませんでした。理由は、ぼーっとしていたからです。なぜぼーっとしていたかというと、1秒さんのことを毎日毎日考えすぎて、眠れなくなってしまい、頭がぼーっとするようになっていたからです。

次の日。1分さんが今日もぼーっとしていると、1秒さんから声をかけられました。

「あの、……大丈夫ですか?」

「ほゎえへぇ??」

1分さんが、寝ぼけた声を出すと、あっという間に2秒になっていました。

2秒さんは呆れています。

「1分さん、もう、いいよ。よくやったと思うよ」

「え??」

1分さんは、ショックを受けました。もう、誰とも顔を合わせることができません。とはいいましても、毎日顔を合わせることになるのが、時間の決まりなのですが。

そういうわけで、時間の世界はいよいよゴニャゴニャに歪み、世界中、いや、宇宙中が困り果ててしまいました。

ついには、宇宙の終焉と、宇宙の創世があと少しでゴッツンコするくらいになってしまいました。

……もはや、時間は虚時間と実時間まで入り乱れてしまい……。

……。

……。

……。

宇宙は混沌になりました。

……。

……。

……。

そういえば、あの恋はどうなったのでしょうか。

おや? 時間の混沌のなかに、泣いて佇む誰かがいます。1秒さんです。

「わたしのせいでこんなになってしまって……」

そこへ。

「やあ、今日もいい天気ですね?」

1秒さんが振り向くと、そこには懐かしい1分さんがいました。

「1分さん……。うれしい……あ、でも、もう1秒経ってしまいますね……」

「1秒さん、大丈夫ですよ。この宇宙はもはや混沌。時間の概念はいくらでも伸び縮みできます」

「1分さん……じゃあ」

「1秒さん。はい、たくさん話ができますね!」

ふたつの時間は、たくさんおしゃべりをしました。ええ、永遠の宇宙の混乱の中で。

1秒の恋。そのお相手は……。もう、お分かりですね?


メデタシメデタシ。



(おわり)


↑ こちら、いい曲ですね!!



すみません。言い出しっぺ、書いておきました!

どうもありがとうございます(^_^)

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