あなたにとって、理解するって、なんですか?

「ちゃんとわかってる?」
研究室ではよくある質問だけれど、おそらく1番難しい質問だ。難しいのは、質問に答えることそのものではない。「分かっている」ということの意味が人によって違っていて、この質問をする時点で、すでにもはや会話が成立しないほど理解に差があるからだ。

分かっているって、理解するって、なんだろう。
思えば、私が、学部4年に研究室で学んだことで最も意味あることは、
“理解するということが何なのか、自分は何一つわかっていない“
“理解する、ということが何かわからないまま、4年間勉強をしていた“
ということだった。
もちろん、こんな状態では、必要なことは何一つ身についていないし、結局研究をガラリと変えることになった。

それから、幸運にも自分に合う研究テーマに出会い、研究テーマや研究の方向性を自分で考える機会にも恵まれ、色々研究してきた中で、最近やっと少し答えに行き着いた。

例えば、何か研究テーマを見つけたとする。
その時、まず初めにするのは、簡単な方法で可能性を確かめることだ。
そして、簡単な方法でできること、できないことを見つけ、できないことを解決する方法で1番楽な方法を探す。いろんな人と相談しながら。
そして、良さそうな方法を学び、取り組んでみる。
そして、改良した方法でできることとできないことを見つける。
この繰り返しで研究が進んでいく。

ここで大事なのが、他の人の発表を理解することと、新しいテーマの研究をすることは、同じなんだ、と捉えてみることだ。
他の人の発表は、この研究が進んでいく様子を、まとめ直したものにすぎない。そこには、色々試してみたけど、ダメだった“簡単な方法”がある。
発表を聞くときに、この場面なら自分はどうするかな、と考える。
すると、何か簡単な方法を思いつく。
そのまま発表を聞いていると、発表の中で、その簡単な方法がダメだった理由が出てくる。なるほど、確かにそうだ。この方法よりも今発表されている方法の方がいい。でも別の可能性として、こんなのもありそう。ああ、次のスライドで出てきた。それも試したんだなあ。


きっと、理解するって、研究の発表なら、自分が研究をする時と同じ流れで考えてみて、多少手を動かし、頭を動かし考えて、それで確かに自分でもこうするだろう、と手を動かしてみた実感を持ちながら納得することなんだ。
理解する、ということは、自分でささっと手を動かしてやってみた時に、同じようなことになる、ということなんだ。

私は、かれこれ5年間かけて、自分なりに理解する、ということを言葉にしてみました。でも、10人いれば、10通りの“分かる“があるのではないでしょうか。

あなたにとって、理解する、とはなんですか。

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