ぼくのかんがえたさいきょうの夏マスク
さいきょうの夏マスク生地切り売りページはこちら
コロナはまだ去らないのに、夏がやってくる
私は、4月からすでに浴衣を着ているほどのズボラマンにして暑がりなのだが、これからやってくる、いや、すでにやってきた夏に、口周りにまとわりつくマスクを着け続けなければいけないと分かった時の絶望はどのように言い表せばいいだろう。
布マスクはおろか、薄手の不織布マスクですら暑くて不快に感じているのに、風呂上がりに布団にすっぽりくるまれるうな8月の京都を、口周りを塞いで過ごすなんて罰ゲーム以外の何物でもない。
京都の藤森にある、青少年科学センターに、砂漠と京都の夏、それぞれの環境を再現した部屋がある。
次の京都観光の際はぜひ体験してきてほしい。砂漠の部屋が天国に思えてくるから。
最近の化学繊維の発展はめざましく、大手衣料製造小売チェーンが開発した新素材や、きもの好きの間ではおなじみのセオαなど、吸湿性に優れ夏を快適に過ごす生地の快適さは私が説明するまでもない(愛用中)。
だが、年中着物で過ごす人間として忘れてはならないのが、夏物着物の快適さである。
絽や紗、上布といった夏の「薄物」と呼ばれる着物は、高温多湿の日本の夏を快適に過ごすために先人が作り出してきた文化であり、知恵の結晶に他ならない。
「着たいモノを着て生きていく」選択をした結果、私は着物を着て生きている。ならば、毎日身につけるマスクも、自分が欲しいマスクを作ろうじゃないか。
着物大好きマンのための最強のマスク素材をさがせ!
そんなわけで素材探しが始まった。
何が素材に適しているか考えた。
縛りは、「和の生地」だ!
夏の和の生地といえば浴衣だが、綿100%だと呼吸がこもって暑苦しい。
マスクを試作してみたものの、めっちゃかわいいんだけどやっぱり暑い。
どうしても湿気がこもって熱を持つ。
何枚か作ったけど、残念ながら却下になった。
よくよく考えてみると、自分が持っている着物の中で一番涼しいのは、宮古上布。初めて袖を通したときの恋に落ちるような感覚は、今でも覚えている。
とはいえ、宮古上布の新反でマスクを作ろうものなら、1個1万円は超えてくるし、透けすぎて用を為さない。
でも、着物用麻織物は、日本の夏を涼しく過ごすための知恵が詰まった、着るエアコンといったら過言かもしれないけど過言ではない叡智の結晶だ。
餅は餅屋、生地は生地屋。
いつもお世話になっている廣田紬さんに聞いてみた。
北井「価格と質のバランスの取れた、洗えて通気性が良くて丈夫でひんやりした麻の反物ない?」
廣田「ほれ、近江麻」
まず出てきたのが夏襦袢用に織られた近江麻。
平織りでハリがあり、こんにゃく糊で麻特有のゴワゴワケバケバを抑えているので肌当たりが非常に良い。
次に出てきたのが、近江縮(ちぢみ)の反物。
言わずとしれた、「涼しい」夏着物の代表格だ。
シボ加工を施しており、皺になりにくく(目立ちにくく)アイロンいらず(というかアイロン禁止)。
こちらもこんにゃく仕上げになっている。
廣田「こんにゃく襦袢の麻は、接触冷感度合が天然素材でもトップクラス」
北井「接触冷感」
廣田「触ったときにひんやり感じる感覚のことで、Q-max値という値で数値化できる」
北井「Q-max値」
廣田「こんにゃく襦袢のQ-max値は、アイスコットンの約1.5倍」
北井「1.5倍!」
いきなり答えにたどり着いてしまった。
もう、これでマスク作る。
夏の着物の素材を身に纏えて、なおかつ涼しくて冷たくてお手入れかんたんならもうこれしかない。
早速マスク作り
購入した生地を持って帰り、スタッフに協力してもらってマスク作りが始まった。
浴衣で作ったときの型紙を改良して裁断してミシンで縫ってあっという間に完成。
弊社のスタッフ優秀すぎワロタ。
できたマスクがこちら。
表地を近江縮、裏地を近江麻襦袢地で袷にした、「ぼくのかんがえたさいきょうの夏マスク」。
子供用はこんな感じ。
※着けているのは小学校2年生男子です。
【セルフレビュー】
つけ心地はとても軽やかで、息苦しさがない。
鼻で息を吐いたとき、湿気がスッと裏地に吸収される感じがして、べとつかない。次の瞬間、息を吸うときには、裏地に残る湿気は冷やされており、むしろ冷たさすら感じる。
医学的な効果の裏付けは一切ない。
保証できる効果は、通常会話程度の飛沫は少なくとも抑えることができるのと、「マスクを着けていることで」周りの人に安心感を与えられること。
そして、とても涼しいこと。
「これはいい!他にも欲しい人がいるはず」
自分がほしいと思うものは他の人も欲しいはずという、コンサルなら即クビになるような感覚マーケティングで、マスクの製造を社内にプレゼンしてみたものの、反応がイマイチ良くない
「いまさらマスクは遅すぎる」
「今はもうみんな自分で作ってる」
「作り方もいろんなところで公開されてる」
なるほど、たしかに。
でも、うちはマスク屋さんじゃないから別に売れなくていいのだ。
自分で作れる人には生地を、作り方がわからないけど作ってみたい人には作り方と材料一式を、作れない人には完成品を。
3つの選択肢を用意して、この日本が誇る素晴らしい麻織物への理解が深まる機会になればいい。
催事が消え、夏祭りが消え、花火大会が消え、需要が消えてしまった夏着物とその産地に、少しでも貢献できればいい。
そんな思いで皆様にお届けします。
マスクにする方法は3つあります
1.生地の切り売り
作り方も知ってるし、作ったこともあるし、ミシンも踏めるし、ゴム紐も持ってる。そんな人向けの生地の切り売りです。
幅40cmの反物を、長さ最低20cmから、10cm刻みで販売します。
おはりばこのウェブショップからお求めください。
2.マスク制作キット
こちらは、マスクの生地とゴム紐と型紙と作り方の紙(おそらく動画)をセットにしたものになる予定です。
作り方は知らないし、作ったことないけど、ミシンか手縫いで自分で作ってみたい人向けのキットです。
現在準備中のため、準備が整い次第発売しますので少々お待ち下さい。
3.完成品
おはりばこが制作し、マスクの状態になったものを販売します。
が、そんなに作る手があるわけではなく、外注する気もないので、数はそんなに多く作れないですし、材料費に加工賃を加味するとお安くはならないと思います。。。
また、表が近江縮白生地、裏が近江麻襦袢白生地の1パターンしか作る予定はありません。ご了承ください。
生地の種類のご紹介
最後に、生地の種類をご紹介しておきます。
【近江縮こんにゃく糊しあげ】
しぼのある質感が涼しげで、夏着物や浴衣のときのマスクにぴったり。
マスクにするには惜しいほどの夏の優等生。次生まれてくる時は、ぜひ着物に仕立ててあげたい。
表地におすすめ。
【近江麻襦袢こんにゃく糊仕上げ】
近江で織られた、平織りの麻襦袢、こんにゃく仕上げ。
とにかく接触冷感バツグン。天然素材で、現実的なコストなら、この子が最強なのでは?
マスクにするには惜しいので、1反自分で購入して夏襦袢にします。
裏地におすすめ
追記:売り切れてしまいました。再入荷はありません。下で紹介する近江麻の絹麻上布が接触冷感バツグンの裏地おすすめ生地です。
【小千谷麻襦袢生地(2色)】
小千谷ファンの皆様、おまたせしました。
縮といえば、麻といえば小千谷ですよね。忘れてませんよ!
こちらは平織りの襦袢地で、爽やかなブルーとミントグリーンがかわいい。
お化粧汚れなどで白は避けたい方におすすめ。
表地・裏地どちらにもおすすめです。
【近江縮綿麻縞】
ちょっとおしゃれを楽しみたい方に、こんな縞もご用意しました。
爽やかな寒色系の縞になっていて、近江縮らしさが出ています。
素材は綿麻50%の交織のため、Q-max値は少し下がりますが、表地用なのであんまり影響ないかな?
表地におすすめ。
【近江産 絹麻上布特上】
100番手という極細の繊維を使って織られた、きめ細やかで絹のような光沢を持つ、「絹麻」と名付けられた上布の中でも最高級の「特」クラスの上布です。
Q-max値はなんと0.35。肌触りと接触冷感の両立を可能にした、裏地にぴったりの麻織物です。
というわけで、
ぼくがかんがえたさいきょうの夏マスクが、きもの好きにとってもさいきょうになれば嬉しいです。
そして、これを機会に「夏の麻織物で着物や襦袢を仕立てたい!」という方はぜひご相談ください。
一度袖を通せば、きっとあなたも恋に落ちます。
それでは快適なウィズコロナライフを!
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