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【「セックスワークにも給付金を」訴訟】 原告の訴え棄却、法の専門家達から疑問の声 前編

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「セックスワークにも給付金を」訴訟の判決に非難集中

当noteでも過去に何度か話題にしたが、性風俗店やストリップ劇場などの経営者及び従業員が、コロナ給付金の対象外とされたことで、国に対して訴訟が起きている。

6月30日に東京地裁で、この「セックスワークにも給付金を」訴訟(通称)の判決が下りたのだが、その内容が目を疑うような内容で、法の専門家を中心として疑問の声が噴出している。

◇ ニュース一覧

※ これらはほんの一部です。「性風俗 給付金」などでニュース検索すると、新聞各社の報道をはじめとして山ほど記事が引っかかります。

これらの報道内容を確認してみると、概ねどこも「この判決は不当では?」という論調で統一されているように思う。

また、弁護士や学者など法の専門家達がニュースにコメントを寄せていたり、個人のTwitterで非難の声を挙げるなど、「批判一色」と言っても大げさではない状況だ。

ここまで判決結果を巡って意見がひとつになるというのは、ちょっと珍しい事なのではないだろうか。

では、今回の判決の何がどうおかしいのか確認していこう。


ここが変だよ地裁判決

まず、CALL4が今回の判決文や答弁書などを全て公開してくれているので、それをお読みいただきたい。

↑答弁書などはこちらから

https://www.call4.jp/file/pdf/202206/a3f0743ac45f5ffb22a2119fef62dc30.pdf↑今回の判決文

判決文の中ほどまで進めていただいて、『当裁判所の判断』という項目以降から、特に問題のある部分を抜き出してみよう。
全てを取り上げると長くなりすぎるので、ここでは一番の争点と思われる部分についてのみ考察する。


憲法14条1項に違反するか否かの判断枠組みについて

※憲法14条1項
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

ア 憲法14条1項は、法の下の平等を定めているが、同規定は合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって、各人に存する経済的、社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは、その区別が合理性を有する限り、何ら同規定に違反するものではない
(中略)
国が行う給付行政において、給付金等の給付基準を法令ではなく内部規則により定める場合についても、同様に当てはまるものというべきである。

まず最初に憲法14条1項、いわゆる法の下の平等であるとか、職業差別か否かという点について書かれている。

ただ、書き出しから「同規定は合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって」とあり、この部分ですでに「給付金対象外としたことに合理的理由はある」「職業差別ではない」と言っているも同然である。

その直後に「その法的取扱いに区別を設けることは、その区別が合理性を有する限り、何ら同規定に違反するものではない」とあるが、この部分が今回の判決の最大のブーメランになっているように思う。
性風俗業者(風俗店・ラブホテル・ストリップ劇場など)だけ他と区別し、「休業要請だけして給付金を払わない」ことに、どのような "合理的な理由" があるというのだろう。

イ 本件各給付金のような給付行政は、限られた財源の中で行われるもので あるから、給付の対象者をどのように選別して、各対象者にどの程度の給付をすべきか等の給付基準の策定に当たっては、当該給付に係る政策目的の実現に向けた効果的、効率的なものとする必要があり、そのためには、潜在的な対象者の間に存する事実関係上の差異に着目することに加え、類似の目的を有する他の施策とのすみ分けや均衡についても考慮すべきもの である

つべこべ言っているけれども、手短にまとめると「財源には限りがあるのだから、国が対象者を選別したっていいだろ」ということである。

ところが、性風俗産業であっても税金を納めている国民なのだから、それを選別して棄民するというのは大問題である。すみ分けや均衡なんて言い方をしているが、同じ納税者を妙な理由で選別することに、それこそ上で挙げた "合理的な理由" があるとは思えない。

財源に限りがあるという言い分も理解はできるが、コロナ禍のような万が一の時への備えという意味も含めて、我々は「国に金を預けている」のである。だからそれを「正しく分配せよ」というだけの話だ。
このような万が一の事態に何もしない、見捨てるというならば、国は二度と性風俗業者に納税義務を背負わせてはいけない。

「なんのリターンもないなら税金を収める意味がない」これは何をもって国家とするかといった、非常に根源的な話である。何もせずとも国民が義務として税金を納め続けてくれるだなんて考えてはならない。

「国民は税金という形で国に金を預けている」のであって、政治家など一部の上級民がそれを私物化していい訳がない。税金を払っているのだから返せ。使え。分配しろ。それが出来ないなら納税を免除しろ。

これこそが当たり前かつ "合理的な" 考え方である。


政治的中立性や政教分離の原則への配慮を要することはもちろん、当該支 出について最終的に納税者の理解を得られるものとなるよう一定の配慮を することも許されるものというべきである。

判決文と国側の答弁書を読み比べると分かるのだが、「訴えられた国側が答弁書の中に書いてもいないような事を裁判官が判決文で補足しているような有り様」で、どの口が "政治的中立性" などと吐くのか。

また「納税者の理解を」というが、何度も言うけれども性風俗産業に従事する人間がみな税金を滞納しているというならともかく、そうじゃないのだから、原告をはじめセックスワーカー達も同じ納税者であろう。

それとも、セックスワークに携わっている人間は、税金を納めても納税者の中に入れてもらえないとでも言うのか。裁判所の "合理的な判断" とやらで、"同じ納税者なのに区別する" というのか。

判決文をたった何行か読んだだけでも、憲法違反・差別以外の何物でもないのだが……。


以上によれば、本件各不給付規定が、性風俗関連特殊営業を行う事業者について他の事業者と区別して本件各給付金の給付対象から除外してい ることが憲法14条1項に違反するか否かについては、そのような区別をする目的に合理的な根拠があり、かつ、その区別の具体的内容が上記の目的との関連において不合理なものではなく、行政庁の合理的な裁量 判断の範囲を超えるものではないと認められる場合には、当該区別は、 合理的理由のない差別に当たるとはいえず、憲法14条1項に違反する ということはできないものと解するのが相当である。

こんなにザル……というより差別ど真ん中の内容であるのに、トドメとばかりにこう書かれている。

「以上によれば(中略)そのような区別をする目的に合理的な根拠があり(中略)不合理なものではなく、行政庁の合理的な裁量判断の範囲を超えるものではない」

とあるが、裁判官の判断にこそ全く合理的な根拠がなく、「これこれこうだからこうなのだ」という力強さは微塵も感じられない。むしろ何かをボカして「だってねえ、そういうものですから、ぐふふ」と小声でゴニョゴニョ言って誤魔化す的なバツの悪さすら伝わって来る。

その後も原告側の「性風俗業への差別の助長」であるとか「スティグマの押し付けを招く」といった主張に対してあの手この手で否定しているのだが、もうこれがスティグマであり差別そのものだという笑えない話になっている。


続く↓↓↓


※ 本文ここまで
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