草下シンヤ原作『ハスリンボーイ』

友人の草下シンヤが原作を手掛けるマンガ『ハスリンボーイ』の第2巻が発売された。

これは、主人公が奨学金を返すために裏稼業(道具屋)のアルバイトで金を稼ぐというお話で、動機が今の若者的で妙にリアル。
しかも舞台が池袋であり、板橋出身でそこそこアウトなローである人々との付き合いが多かった私としては、そういう属性の人達と何かあると池袋詣でという生活だったため、非常に生々しくて吐きそう。歌舞伎町や渋谷や六本木じゃない辺りが草下君の悪いところだよなあ。

また、草下シンヤのこの手の創作物といえば 過去に出した小説 が思い出されるのだが、そいつは内容がかなりヤバかった。
テーマが "うんちゃら連合" であり、私が読んでも「これ書き過ぎじゃない?」と思ったほどで、実際に連合の中の人からは「あと一歩踏み込んでたらさらってたよ」と温かい言葉を貰ったらしい。

それと比較すると彼も大人になったのか、ちょっとだけボカすとか、マイルドに仕上げるとか、ファンタジーに逃げるという手法を覚えたようで、今作は読んでてお尻の穴がキュンとするほど危なっかしくはない。これくらいならまだマンガとして純粋に楽しめる。
しかし、それでも細かい部分が昔どこかで見た光景だったり、作中の舞台となっている場所に妙に見覚えがあったり、想像や憶測で書いていない事がヒシヒシと伝わって来る。
普通は「想像や憶測でものを書くな」という怒られ方をするものだが、草下が関わる作品の場合は逆である事が多い。「創作なんだからドキュメント過ぎるのやめろよ」と怒られるのである。

マンガの内容は、基本的には道具屋の主人公が必要に応じて悪さに使うカギや、飛ばし携帯や、銀行口座などを仕入れて売るといったもので、作中に登場する半グレ組織が「オレオレで稼いだ金で大きくなった」という設定と絶妙にリンクしている。
2巻ではそうした道具屋のお話だけではなく、シマ争いや ”タタキ” まで登場し、もはや主人公が道具屋として活躍できる余地があるのか不安になる展開だ。タタキなんて早い話が強盗殺人だからねえ……。

『ハスリンボーイ』は安定の草下作品なので、不良・半グレ系の細かい設定などはしっかりしている。ドキュメント作品ではないので事実をそのまま描くような愚は避けているが、それでも分かる人間には「わ~~」と感じる部分があるので、そっち方面をよく知る人でも半ファンタジーとして楽しんで読めるのではないだろうか。

とりあえず、何巻まで続くのか知らんけれども、引き際だけは常に考えておいた方がいいと思う作品である。
出版社の判断次第ではあるけれども、たとえ人気が出たとしても、欲をかいてこれを長続きさせてもリスクが増すばかりで、ウシジマくんになる前に関係者が行方不明になる気がするんだよね……。
ウシジマくんは内容的にちょっと昔の話だったから助かったという一面があると思うのだが、それに対してハスリンボーイは話が中途半端に新しい。
今のバランスならば平気だろうけど、連載が長引くとブレーキよりもサービス精神や刺激が優先されて、どんどん書いちゃいけない内容になると思うのよ。それがちょっと怖い。
安心安全を最優先していただきたい。

◇ CM
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