世界に誇る和牛づくりとは何か。尾崎宗春さんをお招きして「尾崎牛の夕宴」を開催いたしました。
柳川藩主立花邸 御花では、2023年より尾崎宗春氏が35年以上かけてつくりあげた世界に誇る幻の牛「尾崎牛」を使用し、「尾崎牛とうなぎのせいろ蒸し」等の特別メニューを柳川を訪れた皆様にお届けしてまいりました。今回はそんな尾崎牛の魅力についてお伝えしていきたいと思います。
尾崎牛とは
尾崎牛は、牛を育てる尾崎氏自身が毎日食べても飽きの来ない牛肉、安心して食べられる牛肉作りを目指して育てられた個人ブランドの黒毛和牛です。
幻と言われる所以は、その徹底した育て方へのこだわりがあります。
宮崎県の広大な自然のもとで防腐剤・抗生物質不使用の完全無農薬の飼料と天然の湧き水を与え、一般的な肉牛よりも長期間30~34か月熟成させる飼育法で市場に出るため、とろけるような肉質と、すっと溶けるあっさりとした脂の甘みが特徴です。年間出荷頭数は約1000頭あまり。国内での流通数は月に僅か30頭のみと、その希少価値から“幻の和牛”とも称されています。
2024年6月24日、国指定名勝の庭園松濤園を望む100畳の大広間にて、尾崎牛を堪能する「尾崎牛の夕宴」を開催いたしました。
今回は、日本でも珠玉の希少和牛「尾崎牛」を使用した5種のメニューで堪能できるコースをご用意。あまりお目にかかれない希少部位も含め、尾崎牛の旨みを御花の料理人が最大限引き出す料理が誕生しました。
そのお料理を紹介する前に、少し、日本の和牛の歴史に紐づく尾崎牛の本質的な魅力についてお伝えできればと思います。
明治時代の頃に花ひらいた「牛肉文化」
江戸時代までは、馴染みのなかった牛肉文化。日本人が初めて牛肉を食べるようになったのは、御花の西洋館や大広間といった近代和風建築が誕生した時代と同じ、明治時代です。
庶民の間まで牛肉が慣れ親しんだきっかけは、『牛鍋屋』でした。「牛鍋」は、欧米の料理を単純に真似たのではなく、欧米の素材をうまく日本人の文化に取り込んだものでした。需要とともに店の数が急増し、牛肉が日本人に受け入れられるようになっていきます。そして、ペリーが来航して以来、横浜に居留することになった外国人に対して、牛肉を調達する必要性が生まれ、1867年には幕府によりと畜場が作られました。白ぬかや豆腐粕で肥育された日本の牛肉は当時海外からも大変評判が良かったそうです。
世界に誇る和牛の未来を作りたい。師匠が繋いだ尾崎牛へつながるバトン
昔から日本の農家にいた「和牛」はそれまで農耕用や運搬用として飼われていましたが、耕運機の普及とともに牛がだんだん必要がなくなっていきます。それとは逆に増え続ける肉牛の需要に応えるため、これらの和牛を改良していこうという動きが出てきました。
世界に追いつくため、「鶏や豚と同じように和牛も外国の品種と掛け合わせて、早く太る牛を作ろう」という意見が当時大半だった中、尾崎氏の師匠、黒木法晴氏は、実際に見てみなければとヨーロッパを実際に回ってみることにしたそうです。するとヨーロッパの牛は、ほとんどが赤身で、霜降りはほどんどないということがわかりました。
黒木氏は、海外のマネをしても勝てないからこそ、「おいしい霜降りの牛肉ができる遺伝子を固めていったほうがいい」と考えたものの、当時全体からは受け入れられず、自分の地元の宮崎県や鹿児島県だけでもいいからと、霜降りと肉質を重視した和牛を作る方向に心血を注ぎました。
自分の食べたい牛肉、家族や友人に安心して食べてもらえる牛肉づくりへ
黒木氏の和牛にかける想いを継ぎ、尾崎氏は1982年、畜産の勉強のため渡米。アメリカにある約1万7千頭の牛を抱える牧場で、最先端といわれる肉牛生産技術を習得するものの、 最先端の現場でも、やはり早く太らせ早く出荷するという肉牛生産工場としての大量生産が繰り広げられていました。そのことに違和感を感じていた尾崎氏は、帰国後に「自分の食べたい牛肉、家族や友人に安心して食べてもらえる牛肉づくりをしよう」ビジョンを持ちました。それが、35年以上かけて納得のいく「尾崎牛」と自らの名が付けられる和牛への誕生へつながっていきます。
ブランドとは何か
どんな場所で育ち、どんなものを食べ、どんな水を飲んだか。飼育期間はどのくらいで、その間どんな生き方をしてきた牛なのか・・・
たとえ同じ品種の牛であったとしても、「育て方」で牛は全く違う味になるということは、想像できます。言葉では簡単ですが、果たして全てをこだわり抜き、いつどこで食べても最高の味を作るというのは並大抵のことではありません。尾崎氏はそれが実現してこそブランドであると語ります。
こだわりを積み重ね続けて
「尾崎牛」はまさに、尾崎さんが育てた牛「尾崎牛」です。自分の名前をブランド名に掲げ、世界中から求められる和牛となったことこそが、その価値を真に表現しています。
牛が食べる「飼料」
牛が食べる穀物は世界情勢と共にあるため、国際相場が変わり価格が跳ね上がるとそれに伴い餌も変えなければならないことはよくあることの一つです。ただ、餌が変わると味が変わってしまう。肉のおいしさって脂だから、餌を変えると脂の質と味が変わることを研究した尾崎氏は、相場を度外視して、尾崎氏が決めたブレンドの配合を一切変えることがないそうです。
新鮮な発酵飼料で牛を育てる
ビールのしぼり粕(大麦)を中心に13種類の飼料を毎日2時間もかけて朝夕2回ブレンド。抗生物質や防腐剤を一切使わない、新鮮な発酵飼料で牛を育てています。ただ、発酵飼料は二次発酵すると腐ってしまうため大変です。餌を継ぎ足しであげるわけにはいかず、毎日の丁寧な掃除と餌を少しでも保たせるために、粉炭を入れているのだとか。
尾崎氏は、牧草作りも自ら行い尾崎牛の自然由来の牛ふんを使って使って牧草を育てているのだそう。まさに循環型農業です。
牛が飲む「水」
ここまで軟水の多い国はとても珍しく、日本が誇る価値の一つです。アメリカでは砂漠の中に牧場があったため、尾崎氏はその価値を海外に行くことで再確認したそうです。水道水ではカルキ臭を嫌って、敏感な牛達がたくさん飲んでくれないからこそ、尾崎牛が飲む水は自然のわき水をポンプアップして牛に与えているとのこと。牧場の引越しはなんとこれまでに3回。2000頭の牛飼いができる大地、水、空気の条件が揃う最高の場所が現在の牧場なのだそうです。本当に果てしない追求をされています。
牛が育つ「期間」
通常の和牛は27ヶ月くらいでお肉になるところを、尾崎氏は30カ月くらいのほうが肉質と味が一番安定していて脂の融点も低いということに気づきます。そうすることでもも肉まで霜降りが入り、どこの部位を食べてもメイン料理になることができる肉となるため、一頭買いし食材として無駄なく活かすことでことができます。
尾崎牛の価値は「もも肉」にあるとも言われており、御花の出汁で味わう尾崎牛しゃぶしゃぶセットでは尾崎牛のももを使用しています。
自ら育てた牛を「毎日」食べる
現在の確立されたシステムの中で、自分で育てた牛を自分で販売しない限りは、自ら育てた牛を食べるということはあまりありません。
尾崎氏は、自分で育てた牛を「毎日」365日食べているそうです。だからこそ、作り手として味の質について常に追求することができます。ニューヨークで食べても、ドバイで食べても、全ての味は均一であることにこだわっています。自分が毎日食べても次の日もまた食べたくなるような味わいであることを信条にしています。
こだわりから生まれる「尾崎牛」の味わい
「肉の油が全く違う。」それは、尾崎牛のコースを楽しんだお客様たちから最もいただいた感想でした。前菜から締めまで尾崎牛尽くしのコースを食べたにも関わらず、「全くもたれない。」と多くのお客様が驚きを隠せないようでした。とろけるような肉質と、すっと溶けるあっさりとした脂の甘みが特徴と冒頭でお伝えしましたが、これこそが尾崎牛の魅力であり、尾崎氏がこだわる理由です。尾崎牛の香りは「アロマ」のように余韻を楽しむことができ、たくさん食べてもまたすぐ食べたくなる、そんな味わいです。
御花で尾崎牛の魅力を伝える理由
私たちは、尾崎牛の歩んできた歴史を知ることで世界に誇る日本の和牛の歴史にも触れることができました。
福岡県柳川市に位置する御花で、なぜ尾崎牛を使用したお料理を皆様に提供したいのか。それは大名家・伯爵家としての歴史を持つ立花家が運営する施設として、日本中、世界中からお越しいただくお客様に、この九州の土地で誕生した世界に誇る和牛「尾崎牛」があること、その歴史を知っていただき、明治時代に誕生した文化財の空間の中で味わってこそ価値があるのではないかと思うからです。文化財と同じく、日本の未来に繋いでいきたい和牛を楽しんでいただきたいと思っています。
そして柳川にはもう一つ、「豊作和牛」というブランド和牛があります。福岡県柳川市・有明海干潟のすぐ傍に牛舎を構える豊作ファームは、米農家でもあり、長年肥育と田んぼの循環型農業に取り組み、サスティナブルな農業を実践されてきた歴史を持つことから、まさに尾崎牛と同じく発酵飼料を使って牛育てています。こちらは、最近復刻した「クラブハウスサンド」のお肉にも使用しております。
まさに、大切な人に食べてほしい和牛を御花ではお客様にお届けしてまいりたいと思います。
「尾崎牛の夕宴」特別メニュー
最後に、今回の尾崎牛の夕宴でお出ししたお料理の数々も紹介できればと思います。
尾崎牛のたたきは、フランクの部位を使用。強火で炙り、たたきに仕上げたものに、出汁を効かせた加減酢ゼリーであしらいました。牛たんの旨煮は尾崎牛のたんの部分を柔らかくかつおだしで炊き、柳川でつくられた金山寺味噌を添えております。
尾崎牛のイチボの部位を低温でしゃぶしゃぶし、花に見立て上から雲丹とキャビアの餡かけ仕立てに。尾崎牛の味わいと食感が楽しめるようになっています。
肩ロースの部位を使用。すき焼きに合うよう、アクセントで焼きトマトを添えています。まさに、牛肉が日本で食べられるようになった時代から愛される食べ方です。
食感がたまらない、尾崎牛のハラミとサガリの部位の違いを楽しめるステーキに仕上げております。
うなぎの白焼きとごはんに、かつおだしと八女茶で炊いたテールスープをかけています。
【御花オリジナル】尾崎牛とうなぎのせいろ蒸し
「うなぎのせいろ蒸し」は、柳川の定番。あまいタレがたっぷりご飯にも染み込んだアツアツの一品です。柳川では鰻を焼いて、さらに蒸す「せいろ蒸し」という調理法が江戸時代より愛されてきました。「地元のあまい醤油」を使用し、ご飯にタレをまぶし、ふっくらアツアツに蒸し上げます。
そんなせいろ蒸しに「尾崎牛」が参戦。尾崎牛の唯一無二の肉の味を生かし、部位は希少部位のイチボを使っています。まさに柳川ながらではの一品です。
【東京/福岡へ催事出店中!】
土用の丑の日に尾崎牛とうなぎのせいろ蒸しを。
7月の下記期間は、東京/福岡市でも尾崎牛とうなぎのせいろ蒸しをお楽しみいただけます。限定数のみとなっておりますので、ご注意ください。
柳川の御花では、通常メニューとしてこの尾崎牛とうなぎのせいろ蒸しをご用意しております。
■松屋銀座
土用の丑の日&バラエティフェア
場所:地下1階フードステージ
販売日:7月17日(水)~7月24日(水)
営業時間:午前11時~午後8時(日曜日は午後7時30分まで。)
■伊勢丹新宿店
土用の暑気払い2024
場所:新宿伊勢丹地下1階フードセレクション
販売日:7月17日(水)~7月24日(水)
営業時間:午前10時~午後8時
■福岡三越
※「尾崎牛とうなぎのせいろ蒸し」はエムアイカードプラス会員さま限定の販売となります。
夏本番!!土用の丑の日フェア
場所:地下2階 食品催事場
販売日:7月19日(金)~7月24日(水)
営業時間:各日午前10時~午後8時
■立花家18代の弊社代表 立花千月香の店頭日
下記日程については、弊社代表の立花千月香も店頭に立つ予定です。
皆様とお話しできることを楽しみにしております。
伊勢丹新宿店:20日(土)21日午後
松屋銀座:19日(金)21日午前中