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小説はごっこ遊び

ときどき小説を書いていると、なんだか的外れなことを言われることがあります。

「すごいですね、人生経験豊富なんですね」

小説の感想ではないし、どうしてこんなことを言われるんだろうと、不思議で仕方がありませんでした。一件どころじゃなく、何件もそんな感想をいただきました。
別になにかモデルがある訳じゃないよ、そんな体験があった訳じゃないよと、どんなに説明しても本気でわかってもらえないことがあります。

なんでだろうと、小説書いている身内と話していてわかったのは。

「読書が趣味じゃない人は「こんな話を読んでみたい」っていうのが出てこない、小説書いたことがない人は「こんな話を書いてみたい」という発想がそもそも出てこないんじゃ」
でした。

よく小さい頃に、ごっこ遊びをしていたかと思います。
私の世代でしたらセーラームーンごっこをしていましたし、今でも公園の前を通りかかったら、プリキュアごっこをしている女の子たちや、ヒーローごっこをしている男の子たちを見かけます。
その子たちが一度でもセーラームーンやプリキュアになって、悪者をやっつけたかというと、そんなことはありません。でも、アニメで何度もセーラームーンやプリキュアの活躍を見ていたら、真似をしようとするものだと思います。
出てくる事件だって、その場のアドリブで、アニメの再現なんてほとんどありません。なんとなくキャラの真似っこをして、なんとなくそれっぽいセリフを言って遊ぶんですから。

小説も同じです。
「こんなおいしいものを食べたことがあるけど、旬があるし高いからそうそう食べられるものでもないから、小説でこんなものを食べている話を書いてみよう」
「こんなすごい場所があるらしいけれど、予算も予定も立たないから行けない。ならそこに旅行に行く話を書いて旅行に行った気分になろう」

自分だと体験できないことを、代わりに体験するのが小説の醍醐味だと思いますし、小説を書く上でも楽しいことだと思います。
もっとごっこ遊びを強調させれば、もっと書けるものが増えていきます。

「こんな事件が起こったら楽しいだろうから書いてみよう。この事件を解決するには、主人公がどんなキャラだったら大丈夫だろう」
「こんな恋愛があったら面白いから書いてみよう。このキャラとこのキャラの問題をどうやったら解決できるかな」

ハリウッド映画みたいな事件や大恋愛なんて、そうそう自分のもとに落ちてくるものではありません。想像力を膨らませて、ごっこ遊びをするのです。
ごっこ遊びは必死です。自分だけが楽しいのではなく、読者さんに喜んでもらわないといけませんから。

「すごいですね、人生経験豊富なんですね」

(´・ω・`)
頑張ってごっこ遊びしてるのになあ。
今日もそんな顔をしながら、感想をいただきます。

いただいたお金はありがたく小説の取材に使わせていただきます。