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海が割れるのよ

カムサハムニダ、と、

うちの子が呟く。

韓国語で「ありがとうございます」の意味なのは、よく知られていると思う。

最近覚えたらしい。


カムサハムニダと聞くと、

演歌歌手天童よしみさんの

「珍島物語」を思い出す。


♪海が割れるのよ〜

道ができるのよ〜

※以下うろ覚え※

カムサハムニダ〜♪


てな感じで、紅白歌合戦にも出て、

一世を風靡したものだ。

「珍島物語」自体の背景はあまり知らないのだけど、

海が割れて道ができるのは、

「モーゼの十戒」が真っ先に浮かぶ。

某キリスト教系新興宗教の

子ども向けなのにやたらとリアルな絵で書いてある旧約聖書の本を

祖母から見せられていた私は、

結構小さなときから、

モーゼという子どもからすればケッタイな名前のオジサンが

エジプトから逃げるとき、

神に祈ると

海が割れて道が出来るという話は

知っていた。(出エジプト記)

逃げた先で、

金の牛をみんなが神さまだと言い始めたのに怒って、(旧約聖書の神は偶像崇拝を禁じていた)

せっかく神さまがくれた、十戒が書いてある石板を怒ってバーンッと壊しちゃったのも、

知っていた。


モーゼは頑張ってるのに、

次から次へとみんなの為に忙しくて

大変だな、と

子ども心にも思っていた。


中学に入る頃に、テレビ朝日の日曜洋画劇場で、

チャールトン・ヘストン主演の「十戒」が放映され、

多分当時洋画が好きだった姉が録画してくれたんだと思う。

知ってる話だが、やはり実写化されると

迫力がある。

CGがない時代だったけど、

やたらと迫力がある。なんなんだろう。

チャールトン・ヘストンだけでなく、

ユル・ブリンナーも出ていて、見応え充分だった。

ユル・ブリンナーは

「十戒」ではラメセス2世という悪役ポジションだったが、

私はなんとなく好きだった。

(不思議なことに芸能人に関しては特に濃い顔が好きなのである。)

しかし映画の十戒にハマったのは姉でも私でもなく、

当時小学生だった妹だった。

ある時期は、

私が学校から帰宅すると、

小さな妹が見つめる先のテレビ画面の中で、

毎日海が割れて、道が出来ていた。

本当に好きだったらしい。

どこがツボかはちょっとわからなかったけど。



ゴールデンウィークのお笑い特番を夏休みまで繰り返しみていた我が家の上の子や、

やはりゴールデンウィークのこどもの日スペシャルの逃走中を毎日のように繰り返しみていた下の子が、

十戒を毎日繰り返し見ていた妹にダブる。


そういうお子さん、当時他にもいたのではないだろうか。

毎日十戒みていた小学生、手をあげて欲しい。



韓国とモーゼは多分関係ないけれど、

「カムサハムニダ」を聞くと、

天童よしみさんの歌声とともに、

海が割れて、道が出来て、神に感謝と歓喜の声を上げて進んでゆくユダヤの民が映し出される、

「十戒」を見ていた小さな妹の後ろ姿が

脳裏に浮かぶのである。


そういう独特の記憶のスイッチを、

私は持っている。








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