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連載4 第一集 7~9月編 『おかあさん 木が あかくなってきたよ』あきとまさきのおはなしのアルバム '87 


【写真・第1集の表紙】

7・8・9月
あき 2才8か月~10か月
まさき 11か月~1才1か月


#25 朝から晩まで「ナンデ?ナンデ?」


あき「まさき わらってる。かわいいね。なんで かわいいのかな?」
私「あきの弟だもの」
あき「まさき、あきの おなかから でて きたの?あきの おなかから、せまいヨォ せまいヨォって でて くれば どう?」
私「残念だけど、男の人のおなかからは赤ちゃん出てこないのよ」
あき「ナンデ?」
私「ちっちゃな卵を赤ちゃんまでに育てる不思議な袋が、女の人のおなかにだけあるの」
あき「ナンデ?」
私「なんでだろうねぇ…」
あき「ナンデ なんでだろうねなの?」
私「ウーン、いろいろ理由は言えても、よくよく考えてみると、なんでそうなっているのか、人間の知恵だけじゃ、わからないことっていっぱいあると思うの」
あき「ヘェ、ほんとー。ナンデ?」


#26 「ナンデ?」その2


保育園にて先生と子どもたち、ピアノに合わせて歌を歌っている。
🎵ひとりーで おフロに はいったら
おぼれーて しまう きが するーからー
だか だから ボック
ひとりーで オフローに はいーんない🎵
あき、大声で「ボクって だれの こと?おぼれるって なんの ことよ。ナーンデ おぼれるのー!?」


#27 「ナンデ?」その3


私「あきが小さい頃、あきのうちにも、うさぎさんがいたのよ。かわいそうにもう死んじゃったけどネ」
あき「ナンデ しんじゃったの?」
私「おばあさんになって死んじゃったの」
あき「おばあさんに なると しんじゃう?あきの おばあちゃんも しんじゃうの?」
 最後は泣きそうな声
私「ウワー、困っちゃったー、エート、エートネ」
夫「説明しようたって、あきにはまだわからないだろう。年をとっていけば、大きくなれて、強くなれて、いいことばっかりだろうって、こいつは思ってきてるんだから」
私「そうね。言葉で説明するのはとても難しいわ」
あき「それ なんの こと?おかあさん、おしえて。ネェ、おしえてよ」


#28 「ナンデ?」その4


あき、両親のアルバムを開いて「おとうさんと おかあさん、くっついてるネェ。しゅんかんの つよーい のりで くっついてるネェ。ナンデ?」


#29 蜂に刺された日


あき「ギャー!オカアサーン オカアサーン!」
私「アキ、どうしたの?!」
庭へ飛び出す
あき「ハチが さしたぁ!ウワーン!」
私「まぁ、さあ早くおうちへ入って。薬つけなきゃあ…」
それからしばらくして
あき「ハチさん、あきんとこ よぼうちゅうしゃしたね」
私「予防注射?ウフフ…ホント。あきのいたずらが治りますようにって、予防注射してくれたのかもしれないわよ。ウフフ…」
あき「おかあさん、おもしろい?ヨボウチュウシャ ヨボウチュウシャ。ウフフ…」
二人でひとしきり笑って
あき「ネェ、おかあさん、ハチさんに もう あきんとこ ささないでって おねがいしてよ」
私「ハイハイ」
私、玄関をあけて大声で
「蜂さーん、あきはもう蜂さんをいじめたりしませんからー、二度と、刺さないでやってくださーい!お願いしまーす!」
あき「オネガイシマース!」
二人「おねがいしまーす!!」


#30 みちづれ


あき「おかあさん、なにしてるの?」
私「お出かけするから、穴のあいたズボンは取りかえようかナって思ってるの」
あき「とりかえない ほうが いいヨ」
私「なんで?」
あき「あなも おさんぽしたいってサ」


#31 ゲジゲジ


私「さっきここに、こんな大きなゲジゲジがいたのよ」
あき「こーんな おおきな ゲジゲジ?」
体中で大きなゲジゲジを表現しているらしい
私「こーんな こーんな こーんな大きなゲジゲジ」
あき「こーんな こーんな こーんな おおきな ゲジゲジ?」
あきは、横に走りながら大きなゲジゲジを表現する
私「それでおかあさん、気がつかなくて踏んじゃってね。キャーって言ったら、おとうさんが助けに来てくれたの」
あきは、怒ったように「なーんで おとうさんなの?あきは?あきは?」
私「だってあきは、おじいちゃんや、まさきと一緒に夕涼みをしていて居なかったんだもン。今度大きなゲジゲジがいたら、あき、助けてくれる?」
あき「あき、たすけて くれるよ。やっつけて くれる。こーんな こーんな こーんな おおきーな ゲジゲジー」
あきは、部屋の中を走りまわる


#32 セミもおじいちゃん子


私「蝉ジイジイ ジイジイ鳴いてるね」
あき「オジイチャン オジイチャン オジイチャン オジイチャンって いってるんだよ」
私「ホント。あきやまさきとそっくりネ」


#33 アジサイの葉を翼に


あき「あき、ハネ もって きたよ。あき、これ つけて とりに なるんだ。ヒョー バタバター クルルルル」


#34 由美子おばちゃん


あき「ミオちゃんちの おばちゃん、おまつりに いった?」
私「行ったわよ。おとうさんたちが、おばちゃんの車椅子を押していったからね。でも、車椅子の前にたくさん人が立ってしまって、おばちゃんには見えなかったんだって」
あき「おとうさん、タカウマして いって あげれば よかったのに」
私「エッ、タカウマ?あき、いい思いつきだわ」
あき「だって あき、おとうさんに タカウマして おまつり みぃ いったんだ。やたいにも のったんだ。ネェ、おかあさん、こんど おばちゃんとこ タカウマしてって あげようね」
※タカウマは肩車のこと


#35 初めての喧嘩


みゆきちゃん「おばちゃん、きてェ!ハヤク ハヤクー!」
私が行ってみると、えい君(4才)とあきが、とっくみあいの喧嘩をしている
えい君「かんだナ!ほんとに おこったゾ!」
あき「ウウウ…」
喧嘩はどんどんエスカレートし、今にもどちらかが泣き出すのではないかと、私は息をのんだ。その時…
あき「クワガタ みるかい?」
えい君「ウン」
子ども達は笑いながら駆け出し、私はあっけにとられて見送った。


#36 あきはお助けマン


私「アレッ、まさきちゃん、おさじどこ落しちゃったのかなぁ。あきー、ちょっと"目"を貸してちょうだい」
あき「ハイハイ。こーんな おっきな メ ふたっつも かして あげるヨ」


#37 ニュースを聞いて


あき「おかあさん、センソウって なぁに?」
私「戦争のことなら、おじいちゃんに聞いた方がいいわよ。おじいちゃん達が小さい頃には、本当に戦争があったんだから」
あき「おじいちゃん おじいちゃん、ちいさい ころ センソウ あった?」
おじいちゃん「ああ、あったよ。ご飯がなあんもねぇもんだから、芋に、ツブツブーの麦まぜて、それサ、ご飯の代わりにして食っただヨ。じい、まずかったっけナァ」
あき「せんべえ たべれば どう?」
おじいちゃん「それがなァ、せんべえもなかっただヨ。せんべえも、ゼリーも、葡萄も。あきの好きなようなうんめぇもんは、なあンもなかった。じいの小さい頃はなァ。じいは戦争は、きれぇだなァ」
あき「あきも ヤダ」


#38 夏、我が家の朝


あき「おかあさん おかあさん おかあさーん… あっ、いた いた。おかあさん、もう あさ?」
私「オハヨウ。でも、まだ暗いんじゃない?」
あき「あき、ちょっと みて くる。ヤヤヤーッ、ちょっと あさに なって きたぞー。おかあさん、タンボ いって いい?あき、いってきまーす」
あき、駆け出し、私は、着替えをかかえて追いかける
私「コラコラ、ズボン、ビショビショでしょうがー」
キュリー、シッポを振る。「パタパタパタパタ」
まさき「ウワーン ウワーン…」


#39 まさき一歳の誕生日


まさき「アトウタン アトウタン」
私「まさきちゃんたら他の人の事は、なかなか呼んでくれないのに、おとうさんだけはちゃんと言えるのよね」
夫「どうだ、羨ましいだろう。余分なこと言わなくたって、オトウサンとウマウマだけ言えりゃあ十分だよなァ、まさき。ヨシヨシ、もう一回呼んでみろ。トウタン、トウタン、トウタン、トウタン」
まさき「ウーマ ウマウマ ウーマ」
夫「ダメダァ、コリャ」


#40 ひつじ雲


私「あき、どこ?」
あき「まどんとこ」
私「まさきは?」
あき「まどんとこだよ」
私が行ってみると、あきがまさきの腰を抱いて落ちないように支えてくれている。
私「珍しく静かねぇ。二人して何しているの?」
あき「しろーい いい くもだねぇって みてるんだよ。ナッ、まさき」
まさき「ジュージュー ジュージュー」


#41 おなべになったクツ


あき「おかあさん、クツ はかないでね」
私「アラ、なんで?靴履かないと外へ出られないから返してね。ヨーイショ。アッ、イターイ!あき、何入れたの?」
あき「ドングリだよ。あき、ここへ おみずと おさとうとって いれて、にる ところだったんだ。『ぐりと ぐら』みたいにサ」
私「エーッ!?」


#42 眠っている女の子と目をあけているネコの絵


あき「なんで ネコちゃんだけ メ あけてるの?」
私「猫ちゃんはね、目がキラキラ光って暗い所でもよく目が見えるのよ」
あき「すばらしい メだねェ。フクロウさんも、くらい とこ みえるって、おばあちゃん いったよ。すばらしい メだねぇ」
私「そうね、それに比べて、おかあさんの目は明るくたって見えないんだから困った目よね」
あき「おかあさんの メ、キラキラ ひかってる。すばらしい メだよ」


#43 ユビキリゲンマン


あき「おかあさん、まさき たたかないで」
私「だけど、まさきったら何回教えてもぐらぐら煮えたお鍋に手を出すの。本当はちょっと触らせてあげるとわかるんだろうけど、見えないおかあさんが下手に触らせて火傷でもしたらかわいそうでしょ。だからほんのちょっとだけ…」
あき「それでも いたがるから やめてよ」
私「…ウン、ゴメンネ。おかあさん、もう叩かない。あきも、まさきを叩くのやめる?」
あき「やめるヨ」
私「じゃあ、二人で約束しよう」
二人「ユービキーリ ゲーンマン、ウーソ ツーイタラ ハーリ センボン ノーマス。ユビ キッタ」


#44 家族


あき「おかあさん、めいしゃさん いった こと ある?」
私「あるある。何度も何度も」
あき「また いく?」
私「もう行かない。お医者様が、おかあさんの目は治らないから、来なくていいって言ったもの」
あき「こまったネ」
私「でもね、おかあさんは、目の代わりに、神様から、おじいちゃんや、おばあちゃんや、おとうさんや、あきちゃんや、まさきちゃんや、キューちゃんや、ネッ、こんなにいっぱい優しい家族をもらったから大丈夫なの」
あき「おかあさん もらったの?もらった ものは かえさなくて いいの?」
私「そうよ」
あき「おかあさん、よかったね」


#45 ケモモの実


あき「おかあさーん、ケモモ また ひろったヨ」
私「籠にいっぱいになったね。お部屋の中、いい匂い。」
あき「あき、ぼうで とったんだよ。あき、いっしょうけんめい とったんだよ。あき、おかあさんが よろこぶと おもって」


#46 前庭でおきた事件


私「おかあさん、キューちゃんにおしっこさせて来るから、ちょっとの間、まさきちゃんを見ててネ」
あき「いいよ」
それからしばらくして
まさき「ギャー!」
あき「おかあさーん、キテー!まさき、おっこっちゃうよォ!おかあさーん、ウワーン!」
私「あきどこ?!アキー、マサキー!」
 「キュリー、フォローアキ、ハップアップ、ハップアップ(急いであきのところへ)」
私がたどりつくと、まさきがとんでもない所まで這っていって、崖下へ向かって身をのり出そうとジタバタしていた。あきは、そのまさきの足にしがみつき、自分も這いつくばって、全身でまさきを止めてくれていた。
私は、夢中で二人をかきいだいた。


#47 ラファエロの『聖母子像』を見て


あき「こども ふたり いるね」
私「ほんと?確かおとうさんは、この絵は、子どもはイエス様ひとりきりだゾって言っていたけれど…」
あき「ふたり いるよ。アカチャンは だっこで、あきは スカートの なかに かくれてるンだ」


#48 絵本①『めの まど あけろ』


あき「カカシ なんで わらわないの?」
私「雀が、せっかくできたお米を食べちゃうと困るから、メってにらんでるのよ」
あき「スズメ うしろに きちゃえば どう?」
私「アハハ…それはカカシも困るでしょうね。どうしようか」
あき「うしろンとこへ、また カカシ たてれば いいんだよ」


#49 絵本②『赤ずきんちゃん』


私「… 怖いオオカミは言いました。"おじょうさん、おばあさんのお見舞に行くのなら、この森に咲いている、きれいなお花をつんでいってあげてはどうですか?」
あき「ワァ、やさしい オオカミだねぇ。なんで コワイ オオカミなの?」


#50 絵本③『ビスケットのかけらがひとつ』


私「… おじいさんとおばあさんは、それぞれ自分の家に帰っていきました」
あき「なんで?いっしょに いたほうが いいのにねぇ」


#51 絵本④『三びきのやぎのがらがらどん』


あき「おかあさん、えほんの なかに おはがき はいってたよ」
私「後でおとうさんに見てもらうから、ちょっとそこへ挟んでおいてね」
あき「ダメ ダメ。こんな とこへ いれといたら、おはがき トロルに たべられちゃう。えーと、トロルの いない とこを さがさなくっちゃ… あった あった。ここなら だいじょうぶ」


#52 絵本⑤『いちごくまさん』


私「…くまさんたちは、甘いイチゴをひとつも残さず食べました」
あき、裏表紙を開いて「ここに まだ ひとつ のこってるヨ」


#53 絵本⑥『ねずみじょうど』


私「…ネズミたちは、良いおじいさんにすばらしい宝物をくれました」
あき「タカラモノって?」
私「みんなが欲しがるような、すてきな物のこと。あきはおじいさん、何もらったと思う?」
あき「えーと えーと… ドングリ… ミカン、それとー、スーイッチョンだあ」


#54 赤いミニカー


あき「あかい ミニカーだよ。おかあさん、あき ちいさく なったら、これに のれる?」
私「乗れる乗れる」
あき「じゃあ あき、うんてんする ところへ のるヨ。おかあさんは となりに のってね」
私「ハーイ、じゃあ まさきは後ろへ乗せていってあげようか」
あき「まさきは おかあさんが ダッコして。おっこちると こまるでしょ」
私「あっ、そうね。なら後ろに誰乗せようか」
あき「ちっちゃな つりばりとー ちっちゃな つりざおとーって のせるんだ」
私「なるほど。それじゃあ、ちっちゃな海へ行って、ちっちゃなお魚つるっていうのはどうかしら?」
あき「ちがうよ。あき、おっきな うみへ いって、おっきーな ワニって いう おさかな とるんだ」


#55 見えなかったから、なお心配で


あき「あそこに あかい はっぱが あるよ。おかあさんに とって きて あげる」
まさき「イーターン イーターン」
私「あき、畦にのぼったの?ほら、まさき、ついてっちゃうから、早く戻ってきて。早く」
あき「いいよ。エイッ」
あきは、畦から飛びおりてしまう。
まさき「エイッ、ギャア!!」
まさきも飛びおりて、私の足元に、頭から墜落する。私が見えていたら当然受けとめていたところだったろう。
私「マサキ!」
あき「アッ、モモイロノ チ デタ」
私「大変!急いで帰るから、あき、ついてきて。頼むわよ。キュリー、マイエ、ハップアップ!(前へ急げ)」
私は、まさきを小脇にかかえて走り出す。
あき「オカアサーン!オカアサーン!」
やっと家へ着いて
私「おかあさん、おかあさん、スミマセン、スミマセン、まさきにケガさせちゃって。見てやってもらえませんか」
おばあちゃん「どこだいや、あ、この頭の傷かい?もう血は止まってるね。たいした事はなかったようだよ」
私「あーあー 良かったー」


#56 おつかい


あき「おかあさん、どこ いくの?」
私「お店へ買いに行くのよ」
あき「オミセー カイニ イクノカァ。フーン」
しばらくしてお店へ着いて
店員「ハイ。何にいたしましょうか?」
あき「オバチャーン、オミセ ヒトツ クダサーイ」


#57 水いたずらの後で


まさき「アーアー アーアー」
私「あき、まさきは何を指さしているの?」
あき「ダイコンだよ」
私「まさき、あれは大根だって。ダイコン、ダイコンだよ」
まさき「オーオー オーオー」
私「まさき、今度は何指さしているのかなァ?」
あき「あきの チンチン。チンチン チンチンだよ」
まさき「オーオー オーオー」
私「そうそう あったあった。お兄ちゃんもまさきもオンナジ オンナジ。ふたりともハダカンボ」
あき「ダイコンも ハダカンボだァ」


#58 お日様がいっぱーい


あき「あき、おじいちゃんと カミヒコーキ のりたいナ」
私「いいわね。二人でどこ行くの?」
あき「オヒサマ とり いくんだよ」
私「スンゴーイ。でもお日様って、お昼にはお空の高い所へ上がっちゃうし、夕方には山に隠れちゃうし、すぐ逃げちゃうけど、あきに捕まるかナ」
あき「あき、やまンなかへ みつけー いくから いいんだよ。きっと いっぱーい おっこってるゾ」


#59 一人でも応援団


あきは、車庫の屋上に立って、祖父たちが働いている工事現場に向かって叫んでいる。
あき「オーイ、ジイチャーン、ガンバレーイ!ジー、ガーンバーレヨオー!ジィ、ジィ!」
私「どうしたの?」
あき「おじいちゃん、おもい もの もちあげてるんだよ」

(連載5に続く)

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