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もし君を一途に愛していたならば… Ⅺ

11
夢を見た。
「好きだ」と勇也が言ってくれた日のこと。
すごく鮮やかでリアル。
私は毎日勇也のことを考えた。
別れるべきじゃなかった、そう毎日思っては自分を苦しめた。
大介は、悩んでる私に声を掛けないものの、色々と察してくれているようだった。

私は思い切って、彼の家に向かった。

インターホンの前に立つと、ものすごい緊張が背筋を走る。
夏なのに鳥肌が立つ。
2度深呼吸をしてから、インターホンをおした。

「…はい」

不機嫌そうな声。
カメラでこちらが見えているからだろう。
それでも出てくれたことに優しさを感じた。

「話があるの」

しばらくし、鍵が開く音ともに彼がドアの隙間から顔を出した。

「…入って」

家の中は、まるでゴミ屋敷。
どうやったらここまで汚くなるのか?そんなことを言いたくなったけど堪えた。

「何?話って」

「あのね。…私は、まだ勇也の事好きなんだよね。別れたこと、すっごく後悔してる」
「うん」
「だからね。よりを戻したいな、って思って。」
「悪いけど、無理だわ、俺。」

頭が真っ白になった。
寝ぼけてるのか、ふわふわした口調でドストレートなことを言ってくる。
それが余計に傷ついた。

「…そっか」
「なんだっけ。お前男居るだろ、仲いい」
「大介のこと?」
「あいつの方が気があるし長く続きそうじゃん」
「大介とはそんな関係じゃないから」
「あっそ、俺には関係ないわ」
「なんなの」
「それこっちのセリフ」
「…分かった、わざわざ言いに来た私がバカだったね」
「・・・」
「じゃあね、もう二度と会わないね、きっと」
「ああ。」

早く行け、というように彼は玄関に向かって歩く。
私も足早に歩いた。

最悪、最悪、最悪。

どうしてこんな気持ちにならなければいけないのか。
何で勇也がこれほど冷たい人間に変わってしまったのか。
私には何一つ理解できない。

家から出て、真っ先にあふれてきたのは怒りではなく涙だった。
こんなひどいことを言われても、まだ彼が好きな自分を憎んだ。

家を出た後、部屋の中からすすり泣く声と私を呼ぶ声がしたのは気のせいだろうか。

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