「趣味で腹いっぱい」

山崎ナオコーラさんの本を読んでみた。

これは1組の夫婦(小太郎と鞠子)の話なのだが、私は労働に対しては小太郎みたいなガチガチの価値観を持って生きてきたんだと改めて思った。院卒で専業主婦の鞠子が始めようとする趣味に対して、初めから目的や結果を求めようとする小太郎の姿はまさに、社会人なら多くがこんな風に考えてしまうんじゃないかなと思った。でも、鞠子のように周りの人と自分を比べさえしなければ、お金をかけずに趣味だって出来るし、アルバイトのままで好きな仕事を続けて楽しく暮らせるのかもしれない。

私はずっと「男女同じように正社員として働くのが自立」、「正社員のまま子育てもして自分で自由にお金を使えるのが自立」そんな風に思ってフルタイムで働く自分を鼓舞してきた。「こんなに嫌な思いたくさんしてヘトヘトになって働いてるんだからいつか報われる」と信じてきたし、そもそも結婚後は独身女性に比べて薄給なのにも関わらず自分は勝ち組だとずっと心の底で思っていたのが、今となっては痛々しい。(でも、だからあの時頑張ってこられたんだけど。)

ただ、果たしてそれが正しかったのかというと、今は違うなと思う。言い方に語弊があるが、「″ちゃんとした″正社員」と「そうでない人」という一括りに分類してきた時点で大幅に偏っている。ずっと同じ組織の、同じような人達としか接してこなかったから、どうもかなり私の価値観は凝り固まってしまったようだなと思った。

社会人だけが経済を回してるんじゃない、「消費」という経済活動をしている専業主婦やニートだって同じように経済を回しているんだっていう視点がいいなと思った。特に今の時代、終身雇用じゃないし同じ仕事が何年後ずっとあるとは限らないし、いつ自分がどういう立場になるかなんてわからない時代だから、労働に対しての価値観もアップデートしておかないとツラいかもしれない。そんなタイミングで出会えて良かった本でした。

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