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ディズニー 利益10倍の正体

月1の勉強会やってます。15回目!

今回は少し一般向けを意識してわかりやすく書いてみます。

”ディズニーの最終利益が10倍になり、コロナ前の水準を上回った。”
東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、2022年4月からの1年間の連結決算を発表し、最終利益は、前の年の同じ時期と比べ、およそ10倍となる807億円で、コロナ前の2019年度も上回った。

オリエンタルランドの業績が複数のメディアで大きく取り上げられた。
アフターコロナ=コロナ禍での行動制限の終了の象徴的なメッセージとして取り上げたということだと思う。

コメントには
”いよいよコロナが明け、アフターコロナのフェイズに移った”
というような、まさにメディアの狙い通りのコメントが並んでいる。

〇メディアの報道の特徴

メディアの報道の特徴について考えてみる。
・テーマ性
・わかりやすさ
・インパクトの大きさ

・テーマ性

以前、こんな勉強会を開催した。
”広報とIRの相乗効果を得るための勉強会” 開催日2023年3月23日

説明されたのは
”メディアは旬な情報を欲している”
社会の事象や時には先取り情報など、お茶の間が好む話題がほしい。
今のテーマと言えば、
”アフターコロナ”
2023年2月10日新型コロナウィルス感染症対策本部において
「マスク着用の考え方について」が決定された。
また、来たる5月8日から感染症法上の位置づけが
「新型インフルエンザ等感染症(2類相当)」から「5類感染症」へ移行することが決定している。

ちょっと待ってほしい。
オリエンタルランドの決算は2023年3月期の決算。
2022年4月から2023年3月までの業績だ。
つまり、マスク着用の見直しの前の話でアフターコロナの象徴的なニュースではない。

本当のアフターコロナはこれからだ

ディズニーランドなど3月1日から入場者数上限 段階的引き上げへ NHK 2023/2/28

東京ディズニーランドなどを運営するオリエンタルランドは、これまでそれぞれ2万人としていた2つのテーマパークの入場者数の上限を、3月1日から収容人数の50%を超えない範囲で、段階的に引き上げると発表しました。
オリエンタルランドは、千葉県浦安市で運営している東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの入場者数について、まん延防止等重点措置の適用に伴って、1月21日から、1日2万人を上限としていました。
新たな上限は、収容人数の50%を超えない範囲としていて、具体的な人数は公表していません。

・わかりやすさ

2つ目のわかりやすさ
”ディズニーの最終利益”
運営会社のオリエンタルランドの決算だが、オリエンタルランドと書かず、ディズニーランドでもなく、ディズニーシーとも書かず
”ディズニー”
曖昧な言葉だけど、多くの方が
”あー、ディズニーランドとディズニーシーね”
と認識できる表現。多くの日本人が観光、外出先、遊びに行くところとして認識している。
ディズニーの利益回復=アフターコロナ
うん、わかりやすい。

・インパクトの大きさ

”利益10倍”
10倍 何かわからないけどすごい(思考停止)
インパクトは大きい つかみとしてはOKだろう
しかし、10倍が凄いかどうかは、元の数字がいくらか次第だ。
1が10になるのと
100が1000になるのはまったく意味が違う

”ディズニーの最終利益が10倍になり、コロナ前の水準を上回った。
というタイトルでコロナ前の水準と比較することでそのすごさを補足した形だ。

ただ、ついでに言えば
当期利益は10倍だが、営業利益は14倍だ。
さらに言えば、
テーマパーク事業だけを見れば営業利益は37倍だ。
全社の営業利益 77億円 → 1,111億円 14倍
テーマパーク事業の営業利益 25億円 → 933億円 37倍

インパクトだけなら14倍、37倍の方が明らかに大きい。
しかし、営業利益ではなく最終利益に注目したのは、”営業利益とは・・・”という説明をしないほうがわかりやすいからということ。


*注意
あなたが付き合っている相手から(または友達でもいい)
”ディズニーの最終利益が10倍で、コロナ前の水準を上回ったんだって”
と言われた時は、
素直に
”すごいね”
と言おう。
間違っても
”10倍? 元の数が小さいんじゃないの?”
とか、物知り顔で
”テーマパーク事業は営業利益37倍だって”
とか言わないように注意!
”めんどくさい奴!” と思って嫌われるかもw

〇利益10倍の正体

ここからは少し投資家寄りの内容で、題名の通り、
利益10倍の正体を解き明かしていこう。
(以降、本来は数値の記述を投資家向けで百万円単位で表記するが、ぱっと見のわかりやすさで億円単位で表記する)

利益10倍を生み出したのはディズニーではなく、株式会社オリエンタルランド。(以下、オリエンタルランド、または同社と記述)
東京ディズニーランド、東京ディズニーシーを中核とする東京ディズニーリゾートを運営する上場企業。

オリエンタルランドは3つの事業を行っている。概要は以下の通り

・利益10倍とは

利益10倍
正しくは下記のように当期純利益が前期と比べて10倍になった
2022年3月期 81億円
2023年3月期 807億円

投資家が注目する営業利益は14倍、当期利益よりも倍率が高い!
2022年3月期 77億円
2023年3月期 1112億円

・利益を生み出したのは?

その利益を生み出したのは前述の通り、テーマパーク事業の営業利益は
2022年3月期 25億円
2023年3月期 933億円
前期比37倍となった。
つまり、テーマパーク事業が回復したことで利益10倍を達成した、ということが言える。

〇コロナ前の水準を上回った?

ところで、一つ気になった表現がある。
”コロナ前の水準を上回った”
これは、コロナからの回復という印象を与えようとしている。意図的に使ったのかもしれないが、誤解を招く表現だ。
文章中にあるように2019年度(2020年3月期)の当期純利益(622億円)を上回っているが、これはコロナ前ではない。すでに2020年3月期はコロナ禍の影響を受けている。

・入場者数比較

入場者数でみると
2020年3月期は2,900万人
前年度2019年3月期は3,256万人(過去最高の入場者数)
2020年3月期は2020年3月に1カ月間臨時休業をしている。


*入場者数(単位:千人) ファクトブックより 

 ファクトブック:テーマパークデータ

 ファクトブック全体


・臨時休園の実施

東京ディズニーランド® / 東京ディズニーシー® 臨時休園のお知らせ 2020年2月28日
2月29日~3月15日の2週間臨時休園することを発表

https://www.olc.co.jp/ja/news/news_olc/COPY-20200228_1/main/0/link/0228.pdf

2週間の予定だったがその後、再開することなく、期末を迎えた。

・業績への影響

たった1カ月だが、売上高は1カ月分減少、コストは人件費がほぼそのままかかる。最終利益への影響は大きい。
全くコロナ禍の影響を受けなかった2019年3月期は902億円の過去最高の利益を達成している。
コロナ前の最終利益をさかのぼって見ると
2017年3月期 823億円
2018年3月期 812億円

”コロナ前の水準を上回った”
ではなく
”ほぼコロナ禍の影響を受ける前の水準に戻った”
が正しい。

〇2024年3月期はどうなる?

利益10倍を達成した2023年3月期に対して、
今進行中の2024年3月期はどうなるだろうか。
また利益10倍の凄い決算がでるのだろうか。
(誰も思ってない)

・会社予想

売上高 5,440億円(前期比+12.6%)
営業利益 1,222億円(同+9.9%)
当期純利益 870億円(同+7.8%)
*利益10倍に対して、利益10%以下の利益の伸び、ニュースにはなりそうにないw

・内訳

内訳ではもっとも売上割合の大きなテーマパーク事業を見ると
テーマパーク事業:4,500億円(前期比+13.6%)
売上高は
顧客数×一人当たり売上高 で求められる
まず顧客数
 入場者数2,510万人(同+13.6%)

1日当たりの入園者数上限を引き下げ、変動価格制を導入し、体験価値を上げるという方針に寄り5類に移行したとしても過去最高の入場数3,600万人ということにはならなそうだ

次に一人当たり売上高
一人当たりの売上高の内容は
チケット代、お土産や飲食につかうダイキン

会社予想はチケット代=アトラクションショー収入の増加を主要因として
16,030円(前期比+1.3%)を予想している。


・注目は

注目は変動価格制を導入したチケット代金。
以下のような変更が行われている。
2023年度以降については、
”需給に応じ、より弾力性を持たせた変動価格制の運用”
とのこと、より一層、一人当たり売上高が上がる変更が行われるのではないかと予想される。

・サプライズは?

短期的にニュースになりそうなサプライズは四半期業績
四半期業績は以下のようになっている。

今期の会社計画は

第1四半期の業績は第2四半期までの予想を単純に半分にしたとして
売上高 1300億円
営業利益 275億円
当期純利益 193億円

前期比でみると
売上高 +33%
営業利益 +62%
当期純利益 +60%

少しだけニュースにはなりそうだ。
利益部分は費用の使い方とワンデーパスポートの価格の割合次第で変動するため、上振れがあるとみている。

〇ワンデーパスポートの価格

ちなみに、1デーパスポートが過去いくらだったか覚えているでしょうか

前述のファクトブックに推移が記述されています。

オープンした1984年は3,900円でした。翌年に4200円と4000円超え。
区切りの金額を超えたタイミングは以下の通り

5000円超え 1997年 5,100円
6000円超え 2012年 6,200円
7000円超え 2017年 7,400円
8000円超え 2021年 8,200円~8,700円(変動価格制を導入)

報道一つから真実を追求するといろいろ面白いことがわかりますね。

ということで、こんなことを考えている私が主催する勉強会を2週間後に開催します。

〇投資タイミング

いつ投資をすべきか
”コロナ感染症による行動制限はいずれ終息する”
というのは誰もが考えていたこと。
その前提で多くの投資家が、アフターコロナの対象企業を探っていた。

一番簡単なのは、
アフターコロナも変わらず存在し続ける企業。
価値を提供し続ける企業。
ディズニーランド、ディズニーシーを運営するオリエンタルランド
は多くの投資家が候補企業の筆頭に上げたと思う。

では、投資タイミングはいつだったのか

ここからは有料ですが、上記の勉強会参加の割引コードをプレゼントしますので参加していただければ損にはならないと思います。

内容はベテラン投資家の方ならきっと気付いているとても簡単なポイントなのでベテラン投資家の方は読む価値はないかもしれません。
オリエンタルランド買おうと思ってたけど、いつ買っていいかわからなかったというかたにはちょっと参考になるかも。

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