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”アイドルの推し活女子大生”の気持ちから、ジャニーズ問題の本質を考えよう

ニュースが流れるたびに多くの方が傷ついているだろうことは想像に難くありません。
被害にあった方はもちろんですが、現在活動するアイドル自身、その家族、ファン、アイドルを目指して頑張っている子たちの気持ちも考える視点を持って欲しいと感じています。
 
男性も女性も学生時代にはアイドルに夢中になる時期がある方が多いのではないでしょうか。私も昔はアイドルのライブやCD購入に小遣いの大半をつぎ込んだり、ポスターを部屋中に貼りまくったこともありました。今どきのアイドルの推し活、アイドルの活動はどんなものだろうと、”推し活女子大生”に聞いてみました。好きになったきっかけ、アイドルに対する考え方だけでなく、スーパーアイドルを目指す若者たちの地道な活動の実態の一部を聞くことが出来ました。 


<”推し活”女子大生に聞いてみました>

Ⅰ.私の推し遍歴

アイドルを好きになったきっかけ:
推しを探すというより、何かのきっかけで出会って気づいたらハマっていることがほとんどでした。そこで、私の推し遍歴を少し紹介します。
私がアイドルという存在に出会ったのは中学1年⽣の時です。三年程海外の⽇本⼈学校に通っていました。そこに嵐の櫻井翔くんが好きな⼦が転校してきたんです。彼⼥は転校した⽇から熱⼼に”布教活動”(*1)を始めました。私はまんまと彼⼥の勧誘に負け、気づいた時には櫻井くんを推していました。カラオケもない、プリクラも撮れない、テレビも⾒られない環境にいた分、彼⼥が⾒せてくれるコンサートDVDやドラマは全て新鮮で、その感想を彼⼥と共有することが楽しくて仕⽅がありませんでした。
次の出会いは⾼校⽣の時です。妹にチケットが余っているからきて欲しいと連れて⾏かれた公演で、ジャニーズJr.(*2)の推しを⾒つけました。学業と両立しながらアイドル活動を頑張る推しの姿から元気をもらっていました。また、ドームやアリーナ規模でライブを⾏うデビュー組(*3)より距離が近く、⾃分が育てているという感覚があるので推していて楽しかったです。
3度⽬の出会いは2022年の夏です。チグハグというデビュー曲をきっかけにTikTokでバズったTHE SUPER FRUIT(通称スパフル)は全国でリリースイベント(*4)を開催していました。そこで3人目の推しに出会いました。今までジャニーズしか知らなかった私にとって推しの横に⽴って推しと話せるという状況が信じられず、そのままハマってしまいました。
彼を最後の推しにしたいですが、こんな感じで次々といろんなものにハマってずっとオタクを続けてしまっています。
 
*1)布教活動:アイドルの魅⼒を他⼈にアピールし、宣伝すること。
*2)ジャニーズJr.:デビュー前の練習⽣。グループに所属していない⼦もいるが、いくつかのグループがありデビューを⽬標に活動している。先輩のバックがメインの仕事だった時代とは変わり、現在はオリジナル曲を持ち、アリーナクラスでの単独ライブを成功させている。
*3)デビュー組:CDデビューを果たしたジャニーズのこと。
*4)リリースイベント:通商、リリイベ。CDの宣伝をするため全国のショッピングモールなどで無料のミニライブをする。⼀般的に特典会がある。スパフルの場合、特典会はツーショットだが握⼿会やお話会などを⾏う事務所もある。

Ⅱ.アイドルという存在

辞書を引くとアイドルは偶像であり、崇拝の対象になる⼈と出てきます。アイドルは⾼嶺の花のような遠い別世界の⼈間だと考える⼈も多いはずです。簡単にいうとYOASOBIの「アイドル」の歌詞のようなイメージです。でも、それって全ての芸能⼈に当てはまるのではないでしょうか。私はアイドルを「未完成」なものと勝⼿に定義しました。アーティストやモデル、俳優と同じような仕事をしていながらそれらの何にでもない曖昧さや、応援したい、成⻑を⾒届けたいと思わせる発展途上感、アイドル誌のインタビューで明かされる⼈間味や個性など、いろいろなアイドル特有の性質は完璧に完成されていてはだめなんです。未完成でなければいけません。私はそれに魅⼒を感じています。だから、ダンスや歌のスキルが⾼く完成され過ぎているK-POPアイドルは私に響きません完成に向けて未完成なアイドルを応援してれば、いずれ彼らも完成に限りなく近づきます。その時、私の役割は終わった、彼らにはもう魅⼒がないとなってしまうんです。これが私の降りる(*1)時です。そして、また新たな未完成のアイドルに出会います。私のアイドルを応援する原動⼒は未完成→完成の成⻑を⾒守りたいという想いです。⾃分がその成⻑に貢献できていると実感出来るほど頑張れるので、必然的に距離が近いアイドルに降りてきました。
(*1)降りる:そのアイドルのファンを辞めること。

Ⅲ.⼈気を上げたい

スパフルのようなアイドルをふざけて友達とパラドルと呼んでいます。映画「パラサイト 半地下の住⼈」のタイトルとアイドルを掛け合わせた⾔葉です。パラサイトという⾔葉⾃体は寄⽣という意味で全く関係ないのでこのネーミングはあまりうまくないですが、タイトルの半地下を指してそう呼んでいます。地上アイドル(以下地上)のようにTV出演頻度は低いけど、BSで特集されたり歌番組に出たりもします。でも、地下アイドル(以下地下)のように特典会(*1)を毎週開催しており認知(*2)してもらえるくらいの規模感です。だから、スパフルは地上とも地下ともどっちつかずの半地下にいるアイドル、パラドルです。
パラドルの収益と新規(*3)獲得は特典会頼りです。これは地下と同じシステムですが、地下のように特典会でたくさんお⾦を使わせるような売り込み⽅はしていなく、どちらかといえば地上のように動員を増やすことに重きを置いています。まずは200⼈くらいのライブハウスからスタートして、2000~3000⼈収容の豊洲PITなどを⽬指していきます。最終的にはホールやアリーナ、武道館にいくという夢を持って活動しています。この夢を実現するには脱特典会が必要になるでしょう。1万⼈の会場でライブをして今まで通り特典会をするのは現実的ではありません。特典会をやめられない理由は2つあります。
1つ⽬は地上よりおいしいを実現するため。知名度やスキルなどを考えるとジャニーズなどの地上とまともに戦うことはできません。でも、推しと話せるならと⾔って地上から降りてくる⼈はたくさんいます。地上のファンをターゲットにするには特典会が⼀番⼿っ取り早い⼿段です。では、地下のファンを持って来れないのかと考えると思います。地下はもっと距離が近くてホスト化が進んでいます。アイドル側としても地下と差別化を図りたいので同じような対応はしたくないのかもしれません。
2つ⽬は収益を得るため。新規を獲得するために、無料でライブを開催しています。実際、無料だと友達を誘いやすく招待(*4)する⼈も増えます。しかし、場所を借りて⾳響や照明のためのスタッフを集めて毎週ライブ開催するには、どこからかお⾦を取ってくる必要があります。その資⾦源が特典会です。こういった現状から特典会を簡単に辞めることはできません。⼈気になる過程で特典会を利⽤したとしても、特典会⽬的でついたファンは特典会をやめれば降りてしまうでしょう。アイドルの実⼒や知名度を上げる以前に、このターゲット層やビジネスモデルを改める必要があると思います。⼈気になって欲しいので、頑張って全通(*5)し推しカメ(*6)をTikTokに載せて、SNSのいいねやリポスト、コメントなどをし、友達をたくさん招待していますがファンはなかなか増えません。これ以上増える⾒込みもなく限界なので、ファンを増やすためのいい⽅法を知りたいというのが切なる願いです。
 
*1)特典会:ライブ後ファンと交流する場。ツーショットや握⼿会、ハイタッチ会、チェキ撮影など。スパフルはツーショットがメインで⼀枚あたり2500円。ハイパーは握⼿会で⼀枚あたり1000円。
*2)認知:アイドルにファンが覚えられていること。
*3)新規:新しくついたファンのこと。
*4)招待:推しているアイドルのライブに知り合いを呼ぶこと。
*5)全通:全部の現場に⾏くこと。現場とはライブや特典会、公開収録などアイドルが出演する全イベントのこと。
*6)推しカメ:ライブで推しのことを撮った動画。基本的にライブの撮影は禁⽌だが、⼀曲だけ撮影許可が下りる時がある。それを撮影してTikTok で拡散してもらうことを⽬的とする。 

Ⅳ.⾏動⼒

アイドルについてフォーカスしましたが、オタクについても書きたいと思います。オタクは経済を回していると⾔われ、どこからそのお⾦は出てくるの?というくらいお⾦を使います。経済⾯で注⽬されがちですが、私は⾏動⼒の⽅がすごいと思っています。1週間前だろうがなんだろうが現場が決まればどこでも⾶んでいきます。例えば、スパフルがレジャーランドライブと称して⼟⽇の⼆⽇間で東武動物公園とハワイアンズでライブをしたことがあります。早朝から特典券を買うため7時に家を出て東武動物公園へ⾏き、20時までライブと特典会をしました。⼀旦帰宅する時間はなかったので、そのまま3 時間かけて福島に行く途中の友⼈宅まで⾏き、次の⽇そこから2 時間かけてハワイアンズに向かったこともあります。その後、1週間平⽇は大学に⾏き、次の⼟⽇は愛知のリリイベへ往復やこば(*1)で⾏きました。もちろん私だけではなく、みんなこれくらいのことをこなしています。そのエネルギーと⾏動⼒は凄まじく、何か使えないのかななんていつも思います。
*1)やこば:夜⾏バスのこと。安いので交通⼿段としてよく使います。

Ⅴ.最後に

私はアイドルが本当に好きで周りにそれを隠していません。恥ずかしい、⾔いづらい趣味だなとどこかで思って、始めは隠していたんですが隠しきれませんでした。ごく⼀部のアイドルしかわからないのでかなり主観的なお話にはなってしまいましたが、こんなたかが趣味でも深く考えている熱意が伝わっていたら幸いです。

*面白かったら、ぜひ”いいね”していってください。
書いた本人も喜ぶと思います。

<グロース企業への投資と近い視点>

”無料で招待をして新規獲得する”
”物販(=特典会)で儲ける”
など、企業のビジネスモデルと共通する部分があったり、半地下アイドルのビジネスモデルの限界についての分析などとても面白い話を聞くことができました。

〇グロース企業への投資と類似

特に興味深かったのは彼女の”アイドル”に対する定義
”私はアイドルを「未完成」なものと勝⼿に定義しました”
というのはとても面白いですね。
ただ”好き”という気持ちで追いかけるだけではなく、”応援したい”、”応援によって彼(彼女)の夢を実現するための後押しをしたい”、”私たちが育てたと思いたい”
この気持ちは、グロース企業への投資にも通じるものがあるかもしれません。
大企業への投資:完成形に近い企業に投資をしても、利益の一部を受け入れるだけの受け身の投資。
中小型グロース企業への投資:不完全なこれから紆余曲折ありながらも、何かを成し遂げようとする成長企業を株主として応援し、後押しする投資。

自分にとっては”ネタ”でも誰かにとって大切なモノ

昼間にやっているワイドショー、最近のジャニーズ問題の記事、題名は目に入ってきますが、読みたいという気持ちにはなれません。
彼らにとっては”ネタ”でしかないかもしれないが、誰かにとって大切で、夢中になっている人、モノかもしれない。

そんな視点を持ってほしい。

皆さんの夢中になっていることは何ですか? 

推しの企業はどこですか?

ぜひ、勉強会で教えてください


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