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四季報の有効な使い方(基本編)

たくさんの方に読まれている。
なぜこんなに反響があるのか。

大半は
”四季報って取材してないの?”

っていう意外感による反応じゃないかと思う。

四季報(東洋経済)に確認したわけではないが、取材先の企業に聞くと、
複数の企業から”取材は受けていない”という回答を頂きます。
(毎回聞いているわけではないし、カウントもしていない)
それらの結果から、
”全社は取材していない”
ようだ、というのが現在の私の認識です。

四季報(新春号 2024年1集)には

”会社四季報では業界担当記者が決算発表を受けて取材を行い、独自に今期及び来期の業績予想を見直しました”

と記述されています。
”全社”とは書かれていないですが、この記述からは”全社取材している”と読み取ってもおかしくないですね。

非難するつもりは全くありません。
あの小さな、スマホの大きさくらいのスペースに、
特色、事業内容、株主情報、財務内容、過去の業績推移、チャート・・・
投資判断に必要な情報が敷き詰められている。こんな情報源は他にはない。きわめてユニークな専門誌です。

ただ、投資家向け情報を提供するというとき
投資は自己責任である”
という考えにおいて、得られた情報のうち
何が事実で、何が事実でないか”
は極めて重要です。

四季報のコメント、独自2期予想は記者の考え、分析ですから、どんなコメントをしようが、どんな予想をしようが自由でしょう。
しかし、
”取材をしたうえで、企業の回答を基にコメント、業績予想したのか”
”取材をせずに、開示資料のみを参考にしてコメント、業績予想をしたのか”
では全く意味合いが異なります。

もちろん、同業他社を分析していればおおよその分析は可能です。
例えば、マンションデベロッパー5社の分析において、
4社を取材すれば残り1社は取材しなくても開示資料からおおよその業績予想は可能でしょう。コメントも説明会資料や決算短信から会社コメントを拾って作成も可能でしょう。
それでも、やはり、取材したのか、取材していないのか、の記述はあったほうがいい。

ということで、改めて活用方法


①全社取材していないであろうという前提で見る

個人投資家として、
”取材はできないから、取材をしている(であろう)四季報が頼りになる”
と思いたいですが、
前述のとおり、取材を受けていない、という回答は複数の企業から得ています。

参考になる記事がありました。

取材や執筆を担当する記者と記者を経験した編集者が約120人います。このほか、データ担当の部隊を合わせると延べ200人程度が制作に関わっています。ちなみに、東洋経済新報社で記者と呼ばれる社員は必ず会社四季報に携わります。

120人の内訳が曖昧ですが、取材する担当記者が半分として60人。
一人70社弱を担当するのです。セルサイドアナリストで一人20社程度。
50社をカバーするのは無理です。(どこまで深掘りするか次第ですが)

よって、
”全社取材していないであろう”
という大前提を置くことが重要だという事です。

②事実を確認する

①が否定的な内容に読めてしまうかもしれませんが、清原さんが著書で書かれている通り、四季報は有益は情報源であることは間違いないと思います。

記載内容は”非常”に充実しています。

――ページの内容ですが、企業の個別データが凝縮されています。
1ページに上下1社ずつの2社が掲載されています。一見すると複雑に見えますが、大まかに7つのブロックに分かれています。これをAからGに分類すると、次のようになります。
A…【会社概要】決算期、設立・上場年月のほか、事業の特色、連結事業、海外売上比率
B…【業績動向】記者の業績コメント、直近の事業展開や材料
C…【株主構成】大株主と保有株式、保有株式比率や外国人・投信の持株比率、役員、連結会社
D…【財務指標】総資産、有利子負債、設備投資、減価償却、キャッシュフロー、発行済株式数
E…【資本政策】直近の資本異動や株価の高安、配当性向、増減配回数、比較会社
F…【上場概要】本店所在地、従業員数、年収、幹事証券、主要取引先
G…【業績推移】過去数期分の業績と2期分の独自業績予想、配当推移と配当利回り

さらに、欄外には編集部による「前号比増額」「会社比強気」などの業績修正マークを記載しています。ちなみに、会社四季報予想と会社計画に差がある場合は、明暗の表情を持つニコちゃんマークが1つもしくは2つ付きます。このほか、ページ上段には約3年半分の株価月足チャートと予想PER(株価収益率)や実績PBR(株価純資産倍率)などの株価指標データが掲載されています。

https://www.sc.mufg.jp/learn/article/2301002003004.html

冒頭でも書きましたが、事業内容、株主、財務、資本移動などの”事実”を把握するために使うのには極めて有用な情報です。
つい、わかりやすい、コメントや業績数字に目をむけてしまいますが、事実を把握することに注力しましょう。

③コンセンサスだが信用はしない

コンセンサスとは、市場が見ているその企業の業績見通しのことです。
大企業は複数のセルサイドアナリストがカバー(調査、分析、予想)しており、例えば、5人のアナリストが予想を出していると、その5人の業績予想の平均が市場の見方=コンセンサスとなります。

企業から発表された業績がコンセンサスよりも低ければ、
”市場の予想よりも良くなかった”
と売られ、コンセンサスより高ければ
”市場の予想よりも良かった”
と買われる。

と言うように短期的にはコンセンサスを基に株価が動いてる面はあるでしょう。

大企業の場合、複数のセルサイドのアナリストが直接取材をして業績予想をするので、コンセンサスはある程度信頼してもよさそうです。(たまに外すこともありますが)

一方で中小型に属する企業はカバーしているアナリストが少なく(またはいない)企業が多く、アナリストによる業績予想がありません。
コンセンサスを作るのは、四季報のみとなります。
取材しているのであればよいですが、取材していない前提としたとき、その企業についての業績予想はいかに優秀な記者が作成したとしても、参考にするのはリスクが高いです。

活用方法としては
・四季報予想がコンセンサスだ
と理解したうえで
・信用はしない

というスタンスをお勧めします。
繰り返しますが、
四季報は信頼できないと言っているのではありません。
”投資は自己責任である”
という前提においては
事実を把握して、あとは自分で考える
ということが大事だという事です。

コンセンサスが自分の予想とギャップがあれば、改めて調べてみるというのもよいでしょう。より理解が深まると思います。

コンセンサスが強すぎる、間違ってる、とショート(空売り)で入る考えもあるかもしれませんが、大多数の投資家が参考にしている四季報予想に抗うのは無謀なのでお勧めしません。

むしろ、自分の方が詳しいと思う企業について、
”四季報のコンセンサスが見落としているのではないか”
という目線で企業の発表が自分の予想に近い業績を発表するのを待つ。
というのがおすすめです。

〇まとめ

四季報の活用方法として

・事実を網羅する情報源としては極めて有用である
・信用しすぎない
・新たに調べる視点を得る

ということかなと

〇個人投資家向け説明会やってます

社長に直接取材(質問)できる、貴重な機会です。
機関投資家だけでなく、個人投資家にも対応する姿勢を持つ企業が登壇します。

3/23(土)

3/31(日)

〇勉強会やってます

参加者が気になる企業についてコメントして情報共有します。

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